第165話
岩が砕けた衝撃で土埃がたった。
デスウェポンの顔が見えなくなる。
「ダメージは………」
煙が晴れて現れたのは、
「ギュリリリリリリリ」
ほぼダメージを受けていないデスウェポンだった。
多少は入っているが決定打には程遠い。
「ほとんどないかぁ〜。うーん………あ!」
「山本さん!」
下から綾瀬が呼びかけた。
「グッドタイミングいいんちょ。弱点は?」
綾瀬の超鑑定では、1分間サーチすることで、弱点属性や急所の位置、有効な魔法などが表示される様になるのだ。
「弱点は雷よ! 急所は背中の中央にある模様の部分!」
「おっけーいいんちょ! 愛してるぜ!」
「注意して! ダメージをある程度与えると熱を放出するから!」
「了解!」
七海は飛んで頭に飛び乗る。
近くに蓮達がいた。
攻撃を開始しているようだ。
「イケレンくん聞こえたー?」
「聞こえたよ。七海ちゃん雷魔法まだ強いの使えないよね。俺が行くからこっちを手伝ってもらえるかい?」
「合点!」
蓮は七海と交代してデスウェポンの背中の中央を目指した。
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「ッ!」
手持ちの魔法弾を全て使い切る勢いで弾を連射するリンフィア。
スピードと威力がウリの銃も鋼鉄の蜘蛛には苦戦する。
やっぱり弾かれますね。
どこか柔らかい場所は………
「山本さん!」
「あれは………確かケンくんのお友達さん?」
そこでさっきの綾瀬の言葉を聞いた。
弱点は背中。
リンフィアは上を見上げた。
「高いですね………でももし背中に乗って弱点まで辿り着いたら、」
リンフィアはバレットベルトの雷の銃弾を見た。
まだ雷はそこそこ残っている。
補充すれば連射可能。
「リンフィア様」
「ニール! そうだ、私をここから飛ばすことって出来ますか?」
「一気には難しいですね。途中で足に張り付く必要があります」
「だったら手伝うよ」
そう言ったのは琴葉だった。
「琴葉ちゃん!」
「私のスキルを使えば1番上までいけるよ」
「本当ですか!? お願いします」
「オッケー!」
そして、 リンフィアとニールは琴葉の指示の通りに動いた。
まず、ニールがリンフィアの足を持って、そこでリンフィアが立つ。
琴葉はニールの手の下に手を置き、同時に投げるという内容だ。
「いつでもいいです」
「ではリンフィア様、ご武運を」
「いくよ。せー………………のッッ!」
ニールが全身をバネの様に曲げ、勢いをつける。
琴葉はそこに手をやって投げたと同時に、
「はっ!」
“再現”を発動。
リンフィアは最高到達点まで飛翔した段階で、
フワッ!
「これは!?」
再び飛ばす。
足に力が加わるような感覚がリンフィアにあった。
“再現”の効果で再び放られるリンフィア。
「これなら!」
リンフィアは無事に着地した。
振り返ってニール達にお辞儀をしたらそのまま中央へ向かっていった。
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「無事に行けた様だ。礼を言う」
「どういたしまして」
「今のは一体何が起きたんだ?」
「これ、私のスキルなんだ。あ、タメ口だけどいいかな?」
「問題ない」
「特殊なスキルで勇者には1人ずつ今みたいなスキルを持ってるの。それを使ってリンフィアちゃんを上に飛ばしたんだ」
「なるほどな」
勇者のと聞いて、ニールはケンを思い浮かべたが、そういう力を使っていた記憶が無かったので、隠しているのだろうかと思った。
しかし、その疑問はすぐに晴れた。
「でもケンちゃんにだけそれが出なかったの。だから王様がケンちゃんを追い出しちゃったんだ。元々嫌われてたケンちゃんはそのせいでさらにハブられたり、無能って言われたり散々だったんだよ」
ニールはピクッと眉を動かした。
「無能? はっ、愚かな連中だ。あいつの本質はあの戦闘能力だろう」
琴葉は一瞬目を丸くすると、嬉しそうに笑った。
「ししし! わかってくれてる人がいて安心したよ」
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懸念があった。
リンフィアは、特殊モンスターの知識に関しては相当なものである。
だから、デスウェポンの情報も頭にあった。
「中央まで行ったら一気に倒さないと………第2形態まで持っていかれたらマズイことになりますね」
モンスターの中にはいくつかの戦闘形態をもつものが存在する。
そのうちの1つがこのデスウェポンだ。
現在の状態は基本形態であり、非戦闘形態である。
攻撃はサブであり、主となる役割は人やモンスターの輸送だ。
つまり、戦闘形態に移行した場合さらに強くなってしまうという事。
しかし、主人がいないので、デスウェポン自体が危険だと判断しない限り戦闘形態にはならない。
だからリンフィアは一気に倒そうとしているのだ。
「そろそろですね………」
では何故、リンフィアは一気に倒さなければならない場所に大人数で来なかったのか。
理由は、今リンフィアが見つめている空洞。
数十メートル先にあるこれが弱点だ。
すると、空洞の中が薄く光り出した。
「………来た」
これは、弱点を守るための防衛システムだ。
「やっと着いた」
リンフィアは声が聞こえた方を見ると、蓮が立っていた。
「あれ、君もここに来たのかい?」
「レンさんもですか? だったら丁度良かったです。弱点はあの危ない空洞の奥です」
この場所は動き回れるのが2人分くらいの空間しか無いからだ。
だからリンフィアはここに1人で乗り込んだのである。
「じゃあ、よろしくね」
「はい!」
2人は弱点へ急いだ。
 




