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第153話


 「『我が肉体は限界を超え、強靭な鋼と化し敵を穿つ【トリオブースト】』」


 反動でクインテットブーストは使えない。

 とりあえずこれで行くしかない。


 「くっ………」


 「ハッハッハッハッハァーーーーーーッ!!!」


 ホルクスは素手でニールとやり合っている。

 他の4人がいるとはいえ、本来の実力では考えられない芸当だ。

 そして更に、


 「!? まだ上がるか!」


 トリオブーストを掛けたニールのスピードに追いつき始めた。


 手が徐々に変形する。

 ホルクスは岩のように硬質化した手でニールを突いた。


 ニールはそれを躱し、足を斬ろうとしたが、ホルクスは硬質化した足の指で一瞬剣を挟み、飛んで攻撃を回避した。


 他の魔族が背後からニールを攻撃するが、体勢を低くして足を回し、足を引っ掛けようとすると、魔族は飛んで躱したので、その隙間から脱出した。


 「見エル………見エルゾ!アノ“龍騎ニール”ト俺ガ対等ニ渡リ合ッテルゾオオオ!!」


 剣を手刀で防ぎながら高く飛び上がり頭の横を蹴った。

 ニールはギリギリのところで剣で防ぐが、もう3人の攻撃を少し食らってしまった。


 「ぐッ………! 強化魔法じゃないな。貴様、一体何をした? 主人の力とやらか?」


 「ソウダ! 俺ノ力ハ貴様ヲ超エタ!」


 他の魔族も飛躍的に身体能力が上がったが、ホルクスのそれは他とは比べ物にならない。


 「イヒヒヒヒヒヒーーーーッ!!!」


 今度はホルクス単体で飛び出して来た。

 片手には剣を握っている。

 あの魔族から借りたようだ。


 「ヒャアアア!!!」


 「ぐ、ぅ………」


 剣を交える。

 ニールが少し押されていた。


 「面倒だ………!」


 反動によるペナルティが消え、魔法具の使用が可能となった。


 パームカフに魔力を流し、強化一級魔法【クインテットブースト】を発動。

 

 「セアァッッ!」


 ニールはホルクスの背後に飛び、向こうが振り返ると同時に上空へ飛んだ。

 そして向こうが見失っている間に回転しつつ攻撃を仕掛ける。

 上空から落下し、その勢いでホルクスの肩を斬った。


 「グアッ!!」


 反射的に肩を背後にやると腹が横に向いた。

 ニールは空かさずそこを突く。

 ホルクスがガードしようとするが、間に合わず深傷を負った。


 「ゲ………ァ、ッ………!」


 体がくの字に曲がり、背中がガラ空きになった。

 

 「そのまま………寝てろッ!」


 その刹那、何かが全身を巡ったような感じがした。


 「ッッ!」


 思わず反射的に飛び退くニール。

 すると今度は背後からリューラが襲いかかってきた。


 「ウ、ァ………アアアアアアアア!!!」


 「!? 回復せずに動いているのか!? 止せ! 死ぬぞ!」


 リューラはボロボロの身体でニールに襲いかかってきた。

 こいつも強化されている。

 ホルクス並みの強さだ。

 しかし、


 「傷が………!」


 傷口からドンドン血が溢れる。

 このままだと保たない。

 一旦気絶させようと近寄ろうとしたら、今度はホルクスが加わり、2人がかりで襲いかかってきた。


 不自然なまでに動きがピッタリだ。

 完全に意思の疎通が出来ているようだった。

 と言うよりは、一人で戦っているようにも思える。

 とても2人の人間がバラバラの意思で動いているとは思えない。



 何かが妙だ。

 限界を超えてなお動き衰えることなく、一切の齟齬のないコンビネーション。

 不自然な気がする。


 そう考えたニールは、ある考えにたどり着いた。


 「操られているのか………?」


 ニールは頭が回る方でないが、これは正解だ。

 これは敵側の固有スキルである。


 スキル名は『死神』


 かつてヨルデを操っていた固有スキル。

 遠隔操作の代償に仮死状態とスキル封印を課せられるが、ステータスが著しく上昇する。

 完全な状態ですらダメージを負うスキルなのに、怪我人に使うとなるとそのダメージは計り知れない。


 「下衆が………!」


 ニールはホルクスとリューラに向かっていった。

 今度は他の魔族も加わり、1対5になった。


 「ハアアッッ!!」


 致命傷は確実に躱し、それ以外はいくつか喰らいながらこちらも攻撃を繰り出した。

 防ぐのを止め、躱すか攻撃をするかに動きを絞ったのだ。


 「フウウウウウ!!!」


 「………!」


 飛ぶ、そして攻撃を喰らいながら進み、攻撃を返す。

 向こうも喰らいながら攻撃をした。

 しかし、向こうは致命傷でも躱さない。

 傷を治すことなく襲いかかってくる。


 正直かなり厳しい。

 ホルクスとリューラだけでも相当厄介なのに更に手数を増やされたら負けもあり得る。


 「殺すしかないのか………?」


 容赦せずに戦えば勝てる。

 しかし、かつての同胞が相手ではどうしても躊躇してしまう。

 だが、もう彼らは同胞ではない。

 己が本当に守るべき主人の敵だ。

 

 「………今の私が最優先にすべきは………我が主人、リンフィア様をお護りすること」


 それでも、そう簡単には割り切れない。

 そしてニールは再び苦戦を強いられることになった。

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