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第151話


 「………!!」


 蓮はバッと後ろを振り向いた。

 微かだが、遠くから魔力を感じたのだ。


 「獅子島くん、何かあった?」


 「綾瀬さん、ちょっと向こうの魔力を感知してみて」


 「魔力?」


 綾瀬は魔力を感知した。

 しかし、周辺にはそれらしい魔力反応はない。

 蓮がそれでも向こうを見ているので、限界ギリギリまで遠くの魔力を探った。

 すると、


 「っ………! 獅子島くん、よくこれに気がついたわね。確かに遠くから魔力を感じる。この距離から私でも感じるってことは馬鹿みたいに大きな魔力を放ってるわ」


 「魔族だろうか?」


 「なんとも言えないわね。私は質の判別はまだ出来ないわ。獅子島くんは?」


 「流石に種族まではわからないよ。うーん………そうだ! 美咲ちゃん!」


 「はい? どうしたの?」


 「向こうから魔力を感じるでしょ?」


 美咲も綾瀬と同じように感知に手こずっていたが、なんとか魔力を感じられた。


 「すごく遠い………これは?」


 「たぶん誰かが戦ってる。だから千里眼で様子を見てくれないかな?」


 「うん、やってみる」


 美咲はぐっと目を瞑って能力を発動させた。







 上空から地図を見るような映像が脳に流れてくる。

 

 もっと………


 高さは低くなり、?試合?祭り?会場がすっぽり視界に収まりきるくらいになった。


 魔力の発生源は………ここかな


 会場の半分まで視界が絞られた。

 その中心あたりから魔力を感じる。


 ここだ!


 一気に拡大していくとそこには、モンスターと戦うニールがいた。

 物凄い戦いだ。

 いや、戦いというよりは一方的な掃討だ。

 ニールがモンスター達を一掃しているように見える。


 凄い………この人が魔力の発生源かな?


 美咲はニールがここで有名な冒険者であることを知らない。

 もちろん、半魔族であることも。

 とりあえず見た目の印象と様子を記憶して『千里眼』を解除した。






 「どうだった?」


 「女の人だと思う」


 「女の人?」


 「物凄く強い女の人がモンスターと戦ってる。でも何で魔力をあんなに垂れ流しながら戦ってるんだろう………………あっ! 消えた!」


 魔力がブツッと消え、感知できなくなった。

 蓮達は魔力を垂れ流している理由を考えた。

 すると、フィリアが推測を述べた。


 「おそらく、自分の場所を誰かに知らせる為ですわ。もしくは、モンスターをおびき寄せる為でしょうか? ミサキ」


 「あっ、はいっ!」


 「どんな感じで戦っていましたの? もしかして、体力を温存するような戦い方ではなくって?」


 「………はい、言われてみれば、確かにどこか手を抜いているような印象でした」

 

 「では前者ですわね。どうしますの? レン、決めてくださいな」


 蓮は、今後の展開を予想した。

 そして、


 「………うん、行ってみよう。もしかしたらそこに人が集まってくる可能性もあるしね」


 










———————————————————————————













 「次から次へと………」


 倒しても倒しても現れるモンスター。

 流石に魔力を放ちすぎただろうか?

 だが、この波を乗り切ったらしばらくは攻撃は止むだろう。

 “モンスターの攻撃は”、だが。


 「先の事もあるだろうから………仕方ない、一掃する」


 

 小出しにしてはまとめて片付けられない。

 だから、ほんの一瞬。

 ほんの一瞬だけ、あの力を。



 「………自我が飛ばないのは1秒以内………よし」


 ニールは魔力ポーションを使い、魔力を回復させる。

 パームカフに魔力を注ぎ、身体強化。

 そして、



 「うあああああああああああ!!!」



 大剣を抜いた。

 バルムンク。

 竜殺しの名を冠する、黒竜ヴァルヴィディアの大剣。

 

 ニールは封じられている竜の力を一瞬だけ解放した。

 ツノが生え、瞳は青く輝き逆五芒星を刻んでいる。

 半身が黒く染まり、背中から漆黒の翼が飛び出した。



 「ズァアアアアアア!!!!」

 














 一面が焼け野原と化していた。

 周辺のモンスター達がどんどん消えていく。

 反動で強化魔法が解け、ステータスが少し低下した。


 「ハァ、ハァ………危なかった。何とか自我が保たれた………」


 危ないところだった。

 だがこれでモンスターは一掃できた。

 湧いてくる気配もない。


 ちなみにニールはわざわざこんな事をしなくても倒そうと思えば倒せた。

 にもかかわらずこんな事をしたのには理由があった。


 「モンスターを相手にしながら貴様らの相手をするのは面倒だからな」


 ニールは草むらに向かってそう言った。

 

 「出てこい。奇襲をかけようとしているのなら残念ながら無駄だ」


 「なるほど、さすがは龍騎ニールと言ったところか」


 ニールを囲むように6人ほどの魔族が姿を現した。

 その中には以前ニールと対峙したリューラの姿もあった。

 モンスターを急いで倒したのは魔族を相手にしながら戦うことが困難だと判断した為である。


 「何故リスト入りしている貴様がここにいるかは知らんが、我々としては好都合だ。裏切りものニールを叩き潰す機会が得られたのだからな」


 「呼び捨てとは貴様も出世したな。ホルスク」


 「ふん、いつまで上司面するつもりだ?」


 ホルスクはリューラと同じく、ニールの部下だった。

 その実力は本物で、Sランク冒険者と同等である。


 「よもや無事で帰れると思っていないよな?」


 「吐かせ、裏切り者が。ここの6人をまとめて相手をして勝てると思っているのか?」


 「さァな」


 「言っておくが加減は出来ないぞ。我々も計画が潰されて頭にきているのだ。貴様を潰したらその元凶である金髪の人間を八裂きにしなければならない」


 「金髪?………ぷっ、はははは!!! そうか! ケンのやつやったのか!」


 ニールは金髪と聞いてケンを思い浮かべた。

 Sランクを閉じ込め一掃する作戦を俺が自力で壊し、下級冒険者をザコモンスターで殺す作戦をニールとラクレー、それに数人の強力な冒険者に頼んでそれを壊させた。

 向こうにとっては死ぬほど憎いだろう。


 「くくく………なら私も負けていられないな。いいだろう、相手をしてやる」


 「忌々しいその首、私が貰い受けるッ!」


 そしてニールはかつての部下と刃を交えた。

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