第150話
「っ………! 今の魔力は………」
「どうされた? リンフィア殿」
「知り合いの魔力を感じました。向こうです!」
「魔力………」
ルドルフは目を瞑って、よーく魔力を探った。
そして、リンフィアの指した方角から巨大な魔力を感じた。
「凄まじい魔力だ………これがリンフィア殿のお知り合いのものとは………どうする?」
「合流したいです。彼女が加わればほぼ確実に生存可能です。それにルドルフさんのお連れの方もこの魔力に反応して近寄って来るかもしれないです」
「なるほど、確かに。ならば早速向かった方が良さそうだ」
「それならいいのがあるぞー」
ラビがぴょんぴょん跳ねながらそう言った。
「何をするんだ?」
「しょうかん」
あの修行以来、召喚可能なモンスターのレパートリーがだいぶ増えた。
そして、今までのモンスターも強化され、上位のモンスターに昇格していた。
「あの3人を喚ぶの?」
俺たちは、ラビの喚ぶモンスターを1人、2人と数えている。
自我があり、意思の疎通ができるモンスターなので匹とか体で数えるのが嫌だというリンフィアの考えだ。
「うん。それともう一人」
ラビは魔力を練り、召喚するモンスターをイメージした。
「むむむ………」
地面に魔法陣が浮かび上がる。
魔力が高まり、放電のような現象が起きた。
可視化された魔力が魔法陣の上で弾ける。
「こいッ!」
掛け声の直後、轟音とともに召喚された。
まずはスラ左衛門、ヘビ右衛門、ゴレ蔵。
全員以前とは容貌が違う。
スラ左衛門は、スライム種の上位種【スライム・ヒューマン】になっていた。
人型のスライムの初期形態で、容姿は人間の幼児をベースとしてある。
こんな名前だがスラ左衛門はメスのモンスターだ。
見た目はちゃんと女の子になっている。
ヘビ右衛門は、サーペント種の上位種【リトルパイソン】になっていた。
体がずっと大きくなっている。
人間くらい簡単に飲み込めそうな大蛇だ。
ゴレ蔵は、【ゴーレムホース】になっていた。
ゴーレムの中でも特に機動力に優れている。
馬というよりケンタウロスに近い。
「わぁ、皆さん見違えました!」
「リンフィア殿、お久しゅうございまする」
「リンフィア殿ー、久しぶりだな」
「リンフィア殿、オカ変ワリナイ様デ」
「みんなしんかしてるんだ。きどうりょくはモンスターたちのほうがたかいからのっけてもらおう」
「な………」
いきなりの召喚でルドルフは口を大きく開けて驚いていた。
生物迷宮の技はあらゆる文献にも残されていない失われた技術。
ルドルフが知らないで驚くのも無理はない。
「今のは一体………モンスターの使役はテイム以外聞いたことないぞ………」
「む、しえきじゃないぞ。こいつらはワタシのトモダチなんだぞ!」
ラビがバタバタ動き回りながら抗議した。
「おお………それは失礼した」
ぺこりと頭を下げるルドルフ。
真面目であるが故に、そういうところはしっかりしている。
「じゃあワタシがすらざえもんにのるから、リンフィアねぇはへびえもんで、おじさんはごれぞうにのって」
ラビはスラ左衛門に乗った。
すると、スラ左衛門は下半身を馬のように変形させた。
「よろしくお願いします」
「おうよ!」
ヘビ右衛門は背中を少し変形させ、乗りやすくなった。
「………」
「………」
ゴレ蔵とルドルフは無言のままお互いを見続けていた。
「おじさん、はやくのって」
「む………」
まぁ抵抗はあるだろう。
こいつらは魔族はモンスターなれしているだろうが、人間はそうもいかない。
ルドルフは恐る恐るゴレ蔵に尋ねた。
「の、乗ってもいいか?」
「ドウゾ」
ルドルフはゴレ蔵の上に乗っかった。
「それじゃあ、まずはきょうかまほう」
ラビはモンスター全員に強化魔法をかけた。
「よし、しゅっぱつ!」
モンスター達は同時に駆け出した。
すると、
「わっ!」
「これは………!」
思わず二人の口から声が漏れた。
速い。
この3人の全力のダッシュよりずっと速かった。
「よし、もういったい」
ラビはもう一人のモンスターを召喚した。
「こいッ! はぴえ!」
宙に魔法陣が浮かび上がる。
そこから一人のモンスターが飛び出した。
「今度はハーピーか!」
ハーピー
半人半鳥のモンスター。
鳥人の亜人とは違い、 顔と体の半分は完全に人間で手足や体毛や羽は鳥になっている。
ラビが喚んだのは緑色の髪の少女だった。
ちなみに名前はハピ江で、またもや和風な感じである。
ちなみに鳥人は顔が鳥で羽が生えており、体毛はあるが、手足は人間寄りだ。
「主人! やっと呼んでくれた! ミーはもう喚ばれないと思ってたよ。そんで何の用だい? ミーに依頼があるんだろう?」
「さっそくでわるいけど、このさきのまりょくのはっせいげんを、さきまわりしてみてきてほしい」
「わかった!」
ハピ江は強化魔法を掛けてもらい、一気に飛んで行った。
「何人くらい喚べるようになったの?」
「10にん。一つのダンジョンとしてきのうするんならもうちょっとほしい」
「そっかぁ」
ルドルフは会話をぼーっと聴きながらラビの召喚について考えていた。
モンスターを召喚するという未知の技能。
どうしても関心がいってしまう。
「それはスキルなのか?」
「うん。たぶんワタシしかつかえるやつがいない」
「ほう?」
ルドルフは勇者達の固有スキルを思い浮かべた。
しかし、すぐに違うと判断した。
勇者達とは顔立ちが違うし、翻訳石もつけていない。
それでこちらの世界の人間だろうと判断した。
しかし、よりわからなくなった。
そんなふうに考えていると、
「しられてねらわれるのはいやだから、できるだけだれにもいわないでほしい」
と、ラビが言った。
いつになく真剣な表情だ。
ラビの気持ちを察したルドルフは同じように真剣に答えた。
「了解した。言いふらす趣味は私もない。約束する」
「だったらいいや。じゃあいそごう。ニールねぇがまってる」
リンフィア一行は魔力の発生源へ急いだ。




