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第148話


 「で、どうすんの? 山本案でいくのはいいとして、あまりうろちょろしてっと狙われるのは間違いないぞ。それはめちゃくちゃメンドクセーだろ」


 「いいじゃん。そん時はまたダッシュ君のスーパーダッシュがあるし」


 「そこは完全に俺頼みか」


 七海は簡単に言うが、これはかなり体力を使う。

 陸上部で走り慣れているとはいえ、人を抱えて更に息を止めて走るとなるとかなりきつい。


 「あれはあくまでも緊急措置だ。何回も使えるほど俺には体力はないよ」


 「ヘタレだなぁ」


 「テメーその舌引っこ抜くぞ」


 「えー、ダッシュ君ウチより弱いじゃんか」


 一言目二言も多い七海である。


 「でもどうしよう? このままだと動けないで見つかっちゃうよね。かといって高橋君の固有スキル頼みになる訳にもいかないし………」


 「つーか、それこそ谷原の能力を使えばいいじゃねーか」


 「「!」」


 七海と琴葉は雷に打たれたような衝撃が走った、みたいな顔をした。


 「そこまで大袈裟な反応をされてもな」


 「そっか! すずっちのアレ凄いもんね!」


 「ん………」


 少し照れているようだ。

 わかる奴はわかる。

 

 「つかなんで最初から使わなかったんだ?」


 「細かいことはいいじゃないかね、ダッシュ君。これでみんな安全だ」


 「へいへい。それじゃあ早速進むか」


 「おー!」


 









———————————————————————————










 「いたよ、モンスター」


 今度はトロールの亜種だった。

 かなりの巨体で、ちゃんとした武器を持っている。

 あれはキングトロールだ。

 暴れ回るバーサクなモンスターではなく、知性があり、巨体を生かした戦闘と、魔法を使った戦闘法がかなり厄介だ。

 何より、従えているトロール達が特に面倒で、こいつが指揮をとることで、知能の低いトロールでもちゃんと戦えているのだ。


 「うへぇ………トロールだ。ウチあれダメだわー………」


 「ぷはは、お前そういやこの前の戦闘訓練でトロールの鼻水浴びて、ごッほァ!!」


 ボディブローを食らう高橋。

 自業自得だ。


 「あの真ん中のトロール、なんか強そうだね」


 「うわー、ありゃヤバイわ。ウチらが束になってもワンパンされて南無阿弥陀だよ」


 キングトロールは先程こいつらを追いかけたモンスターよりずっと強かった。


 「………」


 「おお! すずっちやる気だねぇ」


 涼子は無造作に立ち上がった。

 完全にトロールの視界に入っている。

 しかし、トロールは何もしてこない。

 する筈がないのだ。


 「わっ、もうやってんの?」


 何故なら()()()()()から。


 涼子の固有スキル


 『透過』


 物体を透過する能力と()()を透過する能力と、2種類の能力を有している。


 物体の透過はそのままの意味だ。

 2秒間、指定したもの以外は何も自分に触れなくなる。

 そして、触っているものや人も同じ力を共有できる。

 例えば、能力使用時、服が切られても服を通り抜けるのだ。

 ただし、自分が触れられるようにしているので脱げることはない。


 そして、認識の透過。

 それは自身の存在が認識できなくなる。

 今現在彼女を視認できている者はいない。

 これは視認できないのではなく、視認していないと言った方が正しい。

 見ようとすること自体が出来なくなるのだ。

 ついでに声も匂いも消える。

 だから今、琴葉達も涼子の姿を視認していない。


 「っと! こればっかは慣れんわ。いきなり現れる様なもんだからな」


 これも、物体の透過と同じで、触れている間は能力を共有でき、一緒に消えることができる。


 「お、ダッシュ君も消えた。そろそろかな」


 高橋は七海の手を掴んだ。


 「ななみんも消えた。じゃあ私も」


 今度は七海が琴葉の手を掴んだ。


 「そうだ。この能力の注意点はみんな知ってるよな?」


 「もち」


 「うん」


 この認識の透過の方の能力は、ある条件さえ踏まなければ永久に使える。

 その条件とは、


 「それじゃあ、とりあえず頭空っぽにして走れ!」



 敵意だ。


 攻撃の意思、殺害の意思を明確に向けた瞬間、能力が解けてしまう。

 戦闘では使えない能力なのだ。



 「よし、めんどくさいからもう絶対に余計な事を考えるなよ。目の前の森でもなんでもいいから頭に埋めておいて」


 「もりもりもりもりもり………」


 「うおおおおお、森いいいいい!!」


 「………ん!」



 三馬鹿はそこまで器用ではないので、こうしないと余計なことが頭に入ってしまう。



 「………さすが三馬鹿」


 











———————————————————————————












 「よし、谷原。もういいと思うぞ」


 「………ほぅ」


 涼子はゆっくり能力を解いた。


 「ご苦労さん。サンキュー谷原」


 「ん」


 涼子はそこはかとなくドヤ顔(?)で親指を立てた。


 「これでモンスターから逃げきれるね!」


 「いや、いきなり逃げる場合はこっちの意識がモンスターに向いちまうから無理だ」


 「そっかぁ………」


 「むぅ、難しいっすなぁ」


 「ま、生存率は格段に上がったし、いいんじゃねーの? この調子で進んでいこ——————!? うッそだろ………! なっ、七峰避けろーッ!」


 「え?」


 「死ね」






 突然の事だった。

 木の陰から誰かが飛び出してきた。

 高橋は狙われていた琴葉の名前を叫んだが、琴葉は急に呼ばれて反応が一歩遅れてしまった。



 飛び出してきたのは、魔族。



 一部始終を見て、能力が危険だと判断した魔族が近くにいた琴葉を狙ったのだ。

 剣を振り上げ、振り下ろす。

 琴葉はそれを避けられなかった。

 そして琴葉は——————


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