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第1517話


 「ふざけるなァッッ!!」




 聞いたことのない様な怒号に、皆の顔色が一瞬で変わった。


 ここはボルゾドにある、地下施設の一室。

 皆がちょうど集まっているこのタイミングで、フィリアがいないと気づいた蓮がランフィールに問い詰めた結果、今に至る。


 何を聞いてこうなったのかは、もはや言うまでもないだろう。




 「フィリア様を1人でそんなところに行かせただと………? 一体何考えてるんだ………彼女は戦えないんだぞ!!」


 「魔界統一に際して、我々には余裕はありませぬ。時間も、資源も。そこで現状何もできない彼女に役割を与えた余に、何か落ち度があると?」


 「このッ………っ!?」




 掴み掛かろうとした蓮の手を止めたのは、ラクレーだった。




 「相変わらず、あの子のことになると冷静さを欠く。悪い癖だよ」


 「師匠………!!」




 しかし、ラクレーはあっさりとその手を離した。

 意外だと、拍子抜けしていると、次第に蓮も冷静さを取り戻していった。


 ただし、その視線は以前鋭くランフィールに突き刺さっていた。



 しかし、その目はどこかへとすり抜けていた。

 まるで意にも介さないほどに、ランフィールは蓮に興味を向けていなかった。

 それはどうでもいい。


 だが、何も聞き入れないその態度が、また同じことを繰り返す宣言にもとれて、蓮には我慢できなかった。




 「ッ………っ」



 手は出せなかった。


 目が、リンフィアと目が合ってしまった。

 たまたま部屋に入ってきたリンフィア。

 その目は戸惑っていた。




 「えっ、ぁ………と、その………」


 「………何も言わなくていいよ。リンフィアちゃん」




 本心に蓋をする様に笑顔を貼り付け、蓮はそう言った。




 「ごめん………流石に冷静になった。大丈夫、どっちの味方につく行動もしなくていい」


 「レンくん………」


 「ちょうどいい機会だから、鍛えてくる。しばらくは籠るよ」




 闇雲には、どちらにも怒れない。

 蓮への申し訳の後ろめたさだけがリンフィアの中に残った。




 「そっとしておいて。フィリアが1人で何かを探しに行ったからレンも不安になってる」


 「!」




 ラクレーにそう言われた瞬間、一瞬ランフィールの方を見たリンフィアは、すぐに目を逸らした。

 違う、これはお門違いだ、と。


 誰もが今余裕がない。

 不安なのだ。


 今この集団には支えがない。



 繋ぎ止められる中心が。



 強さじゃないのだ。

 リンフィアにとってケンと言う存在には、いてくれるだけでなんとかなるという安心感があった

 妖精界で力を失ってもそうであったが故に、リンフィアはそれを強く感じていた。


 リーダーの不在。

 些細だが、重大な問題。

 特に、1人に頼ってきていたリンフィア達にとって、その支柱の不在は重い意味を持っていた。


 だから、似ても似つかないランフィールに、リンフィアもフィリアも、ケンの影を見たのだ。




 「リンフィア」



 ハッと目を向けるリンフィア。

 ラクレーも、その不安は理解していた。

 そもそも、同じものを抱えていた。

 その上で、こう言った。



 「あ、は、はい………」


 「言っておくけど、その弟にケンの代わりは無理」


 「!!」



 図星を突かれ、言葉を失った。

 だが、ラクレーも妙な顔をしていた。


 少し、残念がっているような—————————と。



 それを見てリンフィアも理解した。

 ラクレーもまた、同じ様に頼りにしていたのだと。




 「強くならなきゃ………」




 そして、ラクレーもこの部屋を去っていった。


 誰もいないを、強く感じる。

 1人だったことはこれまでいくらでもあった。


 なのに、今リンフィアは心細さを強く感じていた。

 ここにはランフィールもいる。

 しかし、




 「………バラバラ、ですね」



 この寂寥は、心が離れていくことに感じているものなのだ。



 「わがままな者たちですね」


 「ランフィール………」


 「大義のため、個人的な感情など排するべきです。そこに心など介入する余地はない。出来るとすれば強者のみ。強者の余裕だけですよ」



 ランフィールは、淡々とそう述べていた。

 そうかもしれない。


 きっと今、自分たちは間違っているのだと、リンフィアも理解していた。


 それでも、こんな時にでも心が望むものを追いかけて、手にしていた者を知っているから、追いたくなってしまうのだ。


 それに、こう言っているランフィールも、どこか嘘をついている様な後ろ暗さを見せていた。

 そう思った時にはもう、リンフィアは口を開いていた。

 


 「多分、ちょっと違うよ」


 「はい?」


 「大義のために戦うとしても、それはきっとその人の望みで、そこにはきっと心があるの。それが原動力である以上、それを捨てたら戦えない。だから、思いのままに進むことは大切なんだよ」




 だから、今リンフィアが望むのは—————————




 「ちょっと探し物をしてくるね」










——————————————————————————










 リンフィアは走った。

 今必要なのは、頼れるリーダー。

 いや、ヒジリケンだ。


 でも、彼は今いない。

 

 だったら、どうするべきか知らないといけない。

 リンフィアにはそれが思いつけない。


 ケンの不在など、今までなかったからだ。




 ならば、と思った時に、今手を借りるのに一番いい人物が、身近にいた。


 その人物は、今目の前に、




 「コト、ハ………ちゃん?」




 今目の前に、大勢の魔族の山の上で、キョトンとした顔で座っていた。




 「およ?」

 

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