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第1495話


 「今回の目標は、洗脳………正確には、夢を見せて自我を封じる固有スキル、《悪夢》を使う転移者【ナイトメア】だ」



 魔法によって投影された映像には、紫色の髪の女が映っていた。

 画面を見ていた者は男女問わずその美貌に少なからず見入っていた。


 その美貌は、リリスという夢魔になった彼女の一つの特性と言っていいだろう。

 これが地球にいた頃からあるものか、ここで得たものか、とにかく今の彼女は夢魔であり、そんな彼女の固有スキルは悪夢。

 肉体ごと悪夢に閉じ込めるか、悪夢を見せて肉体の主導権を奪うかというわかりやすく強力なスキルだ。


 

 「うお!スンゲー美人!」


 「鼻の下伸びてるよ高橋さん」


 「ひどく距離を感じる呼び方ヤメテ」



 ゴミを見るような目で美咲から睨まれた颯太は、すぐに身を縮こませた。



 「でもホントに美人だねぇ」


 「ウチの直感的に、ああいう女王様タイプは能力すごいけど本体めっちゃ弱いとみた」


 「おぉ!! ナナミン探偵っぽいねそれ!」


 「おおともさ!」



 2人で盛り上がる琴葉と七海だが、それを見て泳がせるように放置をしながら蓮は話を進めた。



 「続きだね………あと」



 現在映像開始から数秒。

 再び続きを流そうとした次の瞬間、目が動いた。


 画面越しからもわかる冷たい眼差し。

 それに気づいた頃には、



 「あ」



 何かが飛んできた瞬間に、映像は消されていた。




 「透過をほんの一瞬だけ解除した瞬間に見破られた。あの人、かなりヤバい」


 「涼子ちゃんの言う通り、連中幹部クラスは漏れなく化け物だから油断しないようにね」


 「「………」」



 2人は黙らされた。


 いや、2人だけではない。

 ここにいる全員、どれだけ能天気だろうとも、もう一端の戦士、そして歴戦の覇者達だ。

 あの映像からでも、敵の手強さは否応なく読み取っていた。


 そしてそれは、皆から言葉を奪っていた。


 ………数名を除いて



 「彼女を攫えばいいんですか?」


 「やれそう? リンフィアちゃん」


 「つい先日、無茶やってた身としては、これくらいどうってことないです。手段を選ばないのなら、なおさら—————————」




 その静かな怒りのもつ圧は、つい先ほど皆が覚えた敵への恐怖を、その上から押し潰した。

 故郷を奪った憎き敵。


 戦いな嫌いな彼女でも、その敵意に鋭さを持つには十分すぎる相手だった。




 「女王の話じゃないけど、どちらかといえば後方支援の彼女ですらこれだ。他は正直かなりきついだろう。だから今回は、誘拐実行役の人数を絞ることにする」


 「具体的にはあたしと他は?」




 当たり前のように自分をまずカウントするラクレーだが、否定する気もない蓮はそのまま説明を続けた。

 慣れたものであると皆スルーしていた。



 「師匠、俺、琴葉ちゃん、そしてリンフィアちゃんだ。レイさん達2人は別働隊で、あとは後方支援になる」


 「やっぱ俺たちは戦力外かぁ。ま、しゃーないわな。正直、あんだけ美人だってはしゃいでたのに、あの目を見ただけでゾッとしちまった………けど」


 「うん。なんだかいけそうな気がする」




 美咲のセリフとともに視線が集まる先は、ここにいる精鋭4人。

 その全員が、他にはない特別な才を持ちながら、努力を惜しまなかった選ばれし戦士—————————




 「確かに、皆さんお強そうだ」




 「「「!?」」」





 その戦士達ですら、今突然現れたこの男の気配に、まるで気づくことが出来なかった。

 皆が警戒心を高める中、男は平然と挨拶を続けた。



 「初めましてみなさま。私、エヴィリアルより派遣されました、ロロロと申します」


 「獣人!? でも、獣人は確か………」




 ここにはいないはずだと、みなまで言わずとも、その考えは皆リンフィアと同様だった。

 代理戦争に敗北した国の民である獣人は、敗北と共に消滅したはず。


 では、何故ここに獣人がいるのか。

 それは、




 「アンタ、改宗者かい?」


 「そうですとも。私、この度精神の神信仰させていただくことになりました。どうぞお見知りおきを」


 「流と同じだよ、みんな。信仰する神を特別に決めれば、その神の擁する国が敗北しない限り、その人は消滅はしない。エヴィリアルは戦争を仕掛けた国で仕えそうな人物を改宗させていると聞いてはいたけど………」


 「やべぇ気配だ………こんな獣人、少なくとも俺はしらねぇぞ………」




 颯太のセリフを聞き、ロロロはわざとらしい営業スマイルで自分の正体を口にした。




 「その通り、こう見えて私、獣人の国では十二支徒と呼ばれる祖国最強部隊の隊長を勤めておりました。平たくいえば、そちらの【三帝】と同じような存在、といえばわかりやすいでしょうか?」


 「「「………!!」」」



 驚きはある。

 しかし、今更緊張感は増しはしない。


 何故なら、すでにこの男から放たれる尋常ではない気配に、皆その肩書き通りの相手であると、既に対応をしているからだ。



 「で………要件は」


 「ほう、早速ですか。助かります。では単刀直入に言いますね」





 もう言葉はいらない。

 隠す気もなくなった殺気から、続きの言葉を誰もが悟った。




 「死んでください」

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