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第1491話


 端から崩壊の始まったこのフェアリアで、集まるのはそう難しい事ではなかった。


 ………いや、中央で戦っていた俺のところに、ミレア達が集まったというだけの話だ。



 俺はあれから、動けなかった。

 その遺骸を抱えて、嗚咽していた。



 集まって、全てを理解したミレアも、ラビも、レギーナも、老婆も、皆泣いていた。

 俺たちは勝利した。

 しかし、失ったものは決して小さくなかった。










——————————————————————————————











 墓は立てない事にした。

 どうせ崩れる世界だ。


 立てるなら、いつでも俺たちが話せる場所、そしていつかアイツは見るはずだった俺たちの居場所に、連れて行ってやろうと思った。




 「しかし、休まなくていいのか? ケン君」



 と、元妖精王のクルーディオ。

 今度の敵………魔界の戦力が未知数なのに、すぐに行って良いものかと慎重になっているのだろう。


 しかし、話によれば、ここと外界では時間の流れが違うらしい。

 元々外よりも早く時間が流れ、ここで多く時間が流れていても、外では時間が経過していないはずだった。



 だが、崩壊により自由が歪み、今ではそれが逆転している。

 今だから冷静に計測できるが、外では数倍の速度で時間が進んでいた。

 これでも遅くなった方だろうが、それでも泣いているだけで時間を大きく無駄にしてしまった。

 もう、余計な時間を割くわけにはいかない。



 「ああ。これ以上は時間が惜しい。泣き続けてたら、アイツに怒られちまう………でも、ミレアとラビは同行するなよ」


 「ええ、わかっています。役目がありますから。私こそ、それを投げ出してまできたら、リンフィアに叱られますしね」




 ミレアは、正式に王になる事を決めた。

 とりあえず、人間界で居場所に困っておるであろう妖精たちを取りまとめる必要があるだろう。




 「でも、纏ったらすぐに助けに向かいますから」


 「わかってるよ。ラビも一旦帰って母ちゃんに色々報告してやれ。婆さんも連れてな」


 「うん。わかった。ワタシもそうしたいところだ」




 あとは、レギーナだ。

 先ほど、肉体については現実のものと結合し、定着させたところだ。

 これでもう、病弱とはおさらばだろう。




 「お前は同行だな?」


 「ああ。そなたはミラトニアの様子を見にいくのだろう? ならばついていく。久しぶりに、国を見ておかねば」


 「そか。フィリアに会えると良いな」


 「フィリア………っふ、そうだな………………それにしても、変わった手袋をしているな?」




 と、そう言われ特に違和感を持っていなかった俺は自分の手を見た。

 そして、少しだけおかしくなる。


 確かに、変だ。


 少し大きさの違う、白と黒の手袋なんて。




 「いいだろ? 大した値打ちのあるもんでもねぇけど、多分この先、俺にとって一番大事な宝モンの一つだ」





 まだ悲しい。

 いや、これが消えることはきっとないだろう。


 正直無理はしている。

 これまだで一番、俺の足はからめ取られている。



 それでも、俺は進む。


 お前が、命を張ってまで、俺の間違いを正してくれたことを、決して無駄にしないため。

 もう2度と、あんな思いをしないため。


 もっと強く、もっと求める未来へ。




 この手袋に誓って。





 だからコウヤ。

 見守ってくれよ。


 お前の相棒が、スゲェんだってところを。










——————————————————————————————













 これにて幕切れ。

 ゲームの勝者—————————なし。


 偽りのゲームは崩壊した。

 しかし、妖精たちは解放され、故郷を、王を、そして自由を取り戻した。


 多くの命、とある少年の未来を犠牲に。

 しかし少年の意思は受け継がれ、これからも歩みを進める。



 物語は、次の幕へ。








 —————————だがその幕は、とうの昔に上がっていた。



 時間は、これより過去へ。

 この物語の中心、かつて魔族の王だった者が、外界へ帰還した時、物語は動き始めていた。









——————————————————————————————












 「!!」




 目を覚ました、と言う感覚ではなかった。

 フェアリアと地続きになっている記憶と意識は、スムーズに現状を把握した。


 自分は、妖精王の肉体に敵を封じるために戦い、結果成功してフェアリアを脱した。

 そして今に至る、と。




 「ふぅ………うん?」



 「数日ぶりだな、リンフィア」




 そこには、見覚えのある妖精が待っていた。




 「イーボさん!?」



 かつて、コウヤと組んで冒険をしていたエルフのイーボがそこにいた。



 「どうしてここに」


 「脱出した者は、大体この周辺に現れるんだ。だから最後の1人が出るまでは見張りを………いや、そんな事はどうでもいい。見張っていたらお前への伝言を頼まれた」


 「伝言、ですか?」


 「ゼロという魔族の男からだ」


 「!」




 魔族と聞いて、リンフィアの目つきが変わった。

 いよいよ戻る日が近づいてこようとしているのだ。


 故郷、エヴィリアル帝国に。

どうも、桐亜です!

妖精編、これにて閉幕です!


投稿頻度変更のお知らせです。

この度作者が就職いたしましたので、しばらくの間4日に1話投稿にさせていただきたいと思っています。

何度も変更を入れてしまって申し訳ありません。


この物語も残り数章となりました。

ブックマークもいつの間にか1万を超えて色んな人が読んでくださって本当にありがたいです。

何度も言ってますが改めて、ラストまでは絶対に続けるので、どうかよろしくお願いします!


新作も投稿予定なので、いつかそちらもよろしければ

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