第144話
「次だッ!!」
フレイムウルフを一掃した蓮に立ちふさがったのは、オーク1体とトロール4体だった。
「1対5か。向こうのモンスターの全てにステータス面では完全に俺が負けているかな。でも、」
蓮は一斉に向かってくるモンスター達の攻撃を全て往なして、少しずつダメージを与えた。
そして、ニッと口角を上げ、こう言った。
「技術面では俺の方がはるかに上だ」
蓮はトロールに向かって飛んだ。
空中にいるタイミングを狙ったトロールは手に持った棍棒を横に振った。
蓮は棍棒に手を添え、そこを軸にさらに上空へ飛び、そのまま剣を振り下ろした。
「喰らえ!」
トロールの首を刎ねようとした瞬間、下から槍が現れ、剣を止めた。
別のトロールが攻撃をしてきそうだったので、一旦攻撃をやめ、退いた蓮。
「あのオーク………いや」
あれは、通常のオークとは異なる。
あれは、オークの上位種のオークジェネラルというモンスターだ。
「グフフフフフ!!!」
「将軍って付くだけあって、腕はそこそこあるね。こういう相手はステータスのハンデがかなりきつい………」
蓮は、ある程度ステータスで負けていても、その目覚ましいほどの剣技で敵を圧倒できる。
しかし、ある程度技術を持ったモンスターでステータス差も大きい場合は、かなり苦労する。
「だからといって、ここで引き下がれないんだよ。俺にも」
蓮は剣を構える。
「うおおおおおおお!!!!!」
蓮はオークに向かって突っ込む。
すると、トロールが立ちふさがった。
「お前らは後だ!」
トロールを蹴って頭の上を飛び越え、一気に奥のオークのところまで行った。
「ハァッ!!」
蓮の一撃をギリギリで躱すオーク。
反撃し、槍での連続攻撃を繰り出した。
「くっ………」
近い距離からの突きは完璧に避けることは難しい。
なので蓮は致命傷になりそうな攻撃を完全に防ぎ、危ない攻撃は避け、当たっても支障のない攻撃は受けるつもりだった。
そうこうしている内に、周りのトロールは視界から消えていた。
蓮はそれに気がつき、周囲を見渡した。
すると、
「しまった………!」
トロールとオークジェネラルが蓮の四方に立っていた。
完全に包囲され、逃げ場のない状況。
すると、一体のトロールが、巨大な鉈を振りかざした。
「グオオオオオオオ!!!!!」
巨体で機動力はそこそこにあるが、知能は低いため複雑な動きはしない。
しかし、オークジェネラルは別だ。
戦い方を心得ている。
蓮は小さく体を捌いて鉈を避けると、横のオークジェネラルの槍を剣で受け流した。
蓮はその状態で一気にオークジェネラルとの距離を詰めようとするが、巨体のトロールが突進してきたので、それを横に避け、再びオークジェネラルに向かって行く。
しかし、その瞬間を狙ってオークジェネラルが攻撃を繰り出した。
「くっ、まともに攻撃ができない………オークジェネラルを倒さないと………」
オークジェネラルは攻撃の要だ。
こいつを倒せれば何とかなる。
だがその分倒すのは困難だ。
味方が何人かいれば良かったのだが、1人はかなりきつい。
「ぐッ………」
トロールの攻撃を防ぎ、耐える蓮。
技術があっても、ステータス面ではかなりの差がある。
押しつぶされそうだった。
「やっっ、ばい………ね、これは………」
そして、動けない蓮に向かってオークが槍を構えて、攻撃した。
「それでも、俺は………!」
フィリアの言葉を思い出し、己を奮い立たせる。
蓮は凄まじいスピードで繰り出された槍を剣で逸らし、槍に沿ってオークジェネラルに向かった。
「死ぬわけにはいかないんだッ!!」
オークジェネラルの腕を切り落とした。
「グオオオオオオオ!!!?」
オークジェネラルは叫び声を上げた。
蓮は少しでも苦痛を与えないように首を一思いに刎ねた。
「これで………後はこのデカイのだけだね」
ここで一気に勝負をつけよう。
そう思った瞬間の出来事だった。
ゾクッ!
「っ………………!!!」
心臓が止まりそうなほどの殺気をぶつけられた。
蓮はトロールから距離を取ると、その方向を向いた。
そこには、首のない騎士が馬に跨っていた。
「あれは………デュラハン!?」
デュラハン
Sランクモンスター。
何人もの冒険者の命を奪ってきた首のない騎士。
剣の実力もさる事ながら、恐ろしいのはその生命力。
ある冒険者は、デュラハンとの戦闘中偶然に出来たチャンスを狙い攻撃をし、かなりの傷を負わせることに成功した。
だが、そこからいくら経っても死ぬことはなく、冒険者の仲間の魔法で隙を作り、全身を真っ二つにしてようやく戦うのをやめたという。
しかも、半分になってしばらくは地面を這いずっていたという。
「ハァ………本っ、当にツイてないね」
デュラハンは蓮に向かって行った。
すると、トロールがデュラハンに襲いかかった。
デュラハンはトロール達の攻撃を躱すと、空中で剣を抜き、回転しながら確実に急所を斬った。
速い! 何て身体能力だ!
デュラハンは着地すると、すぐに標的を蓮に切り替えた。
蓮は少しだけ震えていた自分の手を叩き、己を鼓舞した。
「やるしか無いな………!」




