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第1478話



 「んお………もどったか………」



 若返った声を聞き、意識が戻ったことをなんとなく自覚するラビ。

 全身に残る激痛になんとか耐えながら、ゆっくりと身を起こした。




 「意識が戻ったか。まったく、ヒヤヒヤしたぞ」


 「わるいな。ところで、ミレアねえはどこいった?」


 「ヒジリケンを探しに行った。エルとやらがいうには、この地にいる生物迷宮のダンジョンで戦っているらしい」


 「そっか。じゃ、みつけてもはいれそうにないな」




 と、ラビはどこか核心を持ったようにそう断言した。




 「何故だ?」


 「まきこまないためなのもあるけど、なによりあいてがコウヤだからな。じぶんでどうにかしないときがすまないんだろう」




 納得してはいない。

 口を曲げてどこか不満そうにラビはそう言った。


 しかし、納得せざるを得ない状況でもある。

 回復魔法の使用上限はとうに過ぎ、これ以上の戦闘は望めそうもないからだ。




 「ボロボロだな、ワタシたち」


 「ああ、よく勝てたと思う」


 「なんでも、ここにくるまえにようせいおうのおっちゃんがまえもってかいふくまほうをつかいきったり、まりょくをけずったりしてくれていたらしい」


 「魔力に関してはまぁ、あまり使われる事はなかったが、回復魔法に関しては救われたな。あれともう一回戦うなど、考えたくもない」




 神。

 不確かな上位者は、ようやく輪郭を持ちつつある。


 それどころか、彼女はその一角と戦い、勝利もした。

 だが、だからこそ完全な神がどれほど遠いのか、その遠さも理解した。




 「神か。遠いところにいるのだな、ヒジリケンも、そなたたちも」


 「ひとごとじゃないだろ? おうぞくのけんいはどうしたんだよ」


 「こうも話が大きくなると、もはや国に収まる話ではない気がしてな。私は人の範疇で強くなればいい。少ないとも、王国にいる勇者たちより強いくらいが理想だろうか」


 「だったらあんしんしろ。いちぶをのぞいてまとめてたおせるくらいつよいぞ、おまえ」




 自信持てと、ラビはレギーナの肩に手を置いた。




 「むしろ、ししょうのことはかんがえなくていいとおもうしな」


 「何故だ?」


 「わからん。わからんけど、このたたかいがおわったあと、もうししょうはくにがどうするっていちいちかんがえるようなきぼのそんざいじゃなくなってしまうきがする」




 そう話すラビの様子は、どことなく不安げで、寂しそうであった。

 そしてまた、神という言葉が頭をよぎる。


 それは果たして、いいものなのか、悪いものなのか、国の長たる王族の血を引くものとして、また一人間として、その動向はいやでも気になっていた。


 果たして、“何が帰ってくるのか”。








—————————————————————————————————









 「やっぱり、入れそうにないのです」


 「そうですか………」




 エルの案内に従い、入口を見つけたものの、ミレアは通行止めを喰らっていた。

 予想通り、ケンは侵入を締め切っている。

 理由もラビが考えているものと同様であるとミレアも考えていた。




 「本当に、後はここだけですね。他の方々は皆退場されたようですし」


 「お外出ちゃったのです?」


 「ええ。もうこのフェアリアには私たちだけしか残っていないようです」




 サラッと流すように言っているが、エルはその力の凄まじさをひしひしと感じていた。

 少数部族の一国だが、決して狭くはない。


 その全土に意識を張り巡らせて、ミレアは気配を言い当てたのだ。




 が、驚きは本人にもあった。


 少し前から、妙に力の冴えがあるのを感じている。

 内側から溢れ出るように、力を感じていた。


 傷さえなければ何もかも変えられそうなほどの高揚感を、ミレアはなんとか抑えていた。




 「ともかく、今は待ちましょう。彼ならきっと、全てを勝ち取ってきてくれる筈ですから」


 「はいなのです!」











——————————————————————————————————











 数刻前。





—————————




 俺は元の肉体とフェアリアの肉体を融合させ、より進化した姿を手に入れていた。


 親父の幻影から得た、神の知恵の真の力の一端、神威の熟練度、肉体の持つ膨大なエネルギー、それらは全てフェアリアで新たに得たもの。

 


 この旅は決して無駄ではなかった。

 それ俺は、こいつ(コウヤ)に教えてやりたい。




 「………よし、目標地点までだいぶ近づいたな」


 「はは、欲張りだな。それだけ強くなって、まだ足りないのかい? せめて今は喜ぶくらいの可愛げを見せてもいいじゃないかな?」


 「悪ィがこっちも時間がなくてよ。さっさと抜け出さなきゃなんねぇんだ」




 カラサワにとっては、預かり知らぬ話だ。

 しかし、興味はあるのだろう。


 同じ力を得た者が、何を目指すのか。

 この先を空想するのは、きっと物語を描く作家としての性というやつだ。




 「ちなみに、何を?」


 「人間の壁だ。つーわけで、まず手始めに、このチンケな世界で神様気取ってるお前から倒すぞ」


 「はは、やれるかい?」


 「ハッ、やってやるよ。ゲームなんだろ? 中ボスくらい捻り潰せなくてどうする」




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