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第1423話

どうも!

再び投稿頻度を上げようと思います!

度々落ちるかもしれませんが、出来るだけ頑張るので、よろしくお願いします!


 自身すらも巻き込んだ、広範囲に及ぶ大破壊。

 暴風、落雷、火災、他にも複数の自然災害を自らの手で巻き起こし、ただひたすらに破壊を撒き散らす。


 自然が、ここ小世界の全てを壊した。


 当然、代償がないわけではなかった。

 この方法でこれまで攻撃してこなかったのは、この技で失う力があまりにも大きすぎるためだ。


 この技だけでも、空間のリソースの大部分が消える。


 しかし、その諸刃の剣には確かに手応えがあった。

 何か企んでいるのは見えていたが、罪の神は勝利を確信していた。



 だが、




 「………………もう驚きはしないよ。しかし、苛立ちは抑えかねるねぇ。君らは一体、どこまでしぶといんだ?」




 跡形もなく消えていてもおかしくない破壊の中、3人は生き残った。

 無論無事ではないが、しかし繊維を喪失するには至らない。

 依然意志の宿るその眼は、あくまでも勝利を目指していた。




 「なるほど、騎士のレッドカーペットでさっきの彼の命を身代わりに、君が2人を庇ったわけカナ?」


 「ぐっ………ぅ…………ぃ」




 部下の命を代償に、レギーナはラビたちを何とか守った。

 しかし、当然無事ではない。

 これまでの人生で、感じたことのない激痛に、涙を耐えることはできなかった。


 それでも嗚咽を堪え、何とか立ち向かおうとしたが、既にレギーナは限界を迎えていた。

 ルドルフがラビたちを庇わせるために残したグリフォンが消えると共に、レギーナは糸が切れたように倒れた。



 「れ、レギーナ!!」



 傷に触れないよう、そっと支えるラビだったが、触れるだけで走る激痛に、レギーナは悲鳴をもらしていた。




 「失敗だったなァ。管理者の支配を直に受けるレッドカーペットの所持者なら、制限を受けると思ったけど、支配権を失ったか、独立したこの空間が支配を遮断したのか………まぁ、どの道身代わりはもうない。事実上残るは2名。そして、その君らも満身創痍だ」


 「おい、しっかりしろ!! レギーナ!!」




 ラビの耳にはもはや罪の神の声は届いていなかった。

 今はただひたすら、傷ついた仲間の安否だけが気がかりだった。




 「い………痛い………痛いんだ………ラビ………」


 「ああ、わかってる。だから大人しく………」


 「でも、これでよかった………………」



 涙を流しながら、レギーナは苦しそうにしながらも、笑ってそういった。



 「わ、私は………裏切った償いをしたかったんだ………きっと、ルドルフも………………でも私は、それと同じくらい………そなたらと対等になりたかった………」


 「下も上もないだろ!! ワタシらは元から対等だ!!」


 「ふ、ふ………そうか………でも、私は結局庇われてばかりだった………この力で、私は部下の命を犠牲に強くなった………………それじゃ、ダメなんだ。それじゃ、私は外で、1人で歩けないままなんだ………!!」


 「!」




 レギーナの願い。

 それは、自由になること。


 王女でもなければ、混血でもない、ただレギーナとして生きたかった。

 しかし、血がそれを許さなかった。


 人間界では、その血故に檻に閉じ込められ、そしてこの世界ではその血故に守られて。

 何より彼女が嫌だったのは、コウヤを守るという言い訳で、勝てる方につこうとしてしまった事だった。


 無論コウヤを守りたいという意思に嘘はない。

 しかし、自由を得るために管理者に縋ってしまったこともまた事実。



 彼女は結局のところ、自分で何かを成し遂げることはかなわなかった。

 と、彼女が、彼女だけが言う。




 「お前はもう、自分で歩けてるだろ!」



 ラビはそれを否だと叫んだ。



 「………!!」


 「お前は、お前自身を、自分のしたい事に使ったんだ。だからワタシたちを庇ったんだろ!? そうやってお前が選んだんだろ!? だったら誇れよ! 傷も対価も独り占めにしたお前は、とっくに自由なんだ!! 」



 「—————————」




 自由だと、レギーナは言われた。


 それは、描いたものは違っていた。

 それはとても痛かった。

 辛かった。

 苦しかった。


 けど、満ち足りていた。



 味わって、ようやく理解した。



 楽しい事が自由ではない。

 しがらみがなく、自分の進んだ先で得たもの全て、良いも悪いも全てが自由なのだと、レギーナは今ようやく理解した。




 「だから、今は休んでろ」


 「ええ、後は任せて下さい」




 万全ではない。

 勝機も薄い。


 だが、見慣れた状況。


 臆するには足りないと、2人は揃って前に出た。




 「生物迷宮と妖精………本来(おれ)の元にいるべき種族の王となるものが、立ちはだかっている。何の因果だ?」


 「ここで完全にあなたとは訣別させて頂きます。そうすべきだと、散々この国を旅してわかりました」


 「だな」




 この妖精界に神はいなかった。

 それでも、かつては平和を保っていた。

 しかしそれは、カラサワの出現によって全てが崩壊した。


 機械としての、機能としての上位存在ではない。

 意思を持った上位者のせいで、彼らの日常は壊れた。


 それを、2人は思い知った。




 「今度こそお前は倒す」


 「ええ、この妖精界に、神は不要です」

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