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第1401話


 妖精界の崩壊が始まった。

 外側から、中核であるユグドラシルに向かってゆっくりと世界が剥がれ落ちていく。


 しかし、中からも崩壊は起こっており、虫食いのように世界は本当の姿を見せ始めていた。


 本当の姿といえば、話によれば疫病となっていた者のうち、残っていたものは皆体が消えて魂が外界に向かっていた。

 肉体はその魂を止める事が出来ず、外とつながった事で本来の肉体に戻っているのだ。


 いい傾向と言えるだろう。




 いよいよ終わりも近い。


 このフェアリアも、もはや1日と保たないだろう。


 そうすれば、当然この中で生まれたものは皆消える。

 土地も、建物も、モンスターも。

 そして、仮初の肉体や、仮初の生命も。



 自由を得る者がいる傍で、失う者もいる。



 少なくとも、レギーナは外へ出れば力を失うし、コウヤの寿命は、この世界と共に消えるのを待つ運命であった。




 「させねぇよ………」





 しかし、俺はそれを黙って受け入れるつもりは毛頭ない。

 まだ、秘策が残っている。


 外界と繋がった事で、それを使う目処が立った。




 「ウルク。起きてるか?」


 「………ん、今戻ったよー。どうしたの?」


 「みんなを集めて、残った妖精達の避難させてやってくれねーか? カイト辺りは多分、まだゴチャついてる」


 「いいけど、ケンくんは?」


 「コウヤのところに向かうつもりだ。………エル!!」




 影の中から、ひょっこりと頭を出すエル。

 心配そうにこちらを見つめているので、とりあえず頭に乗せてやった。




 「でもケンくん、その怪我じゃ………」


 「や、問題ない。強がりとかじゃなくてマジで。だから、頼めるか?」


 「………………じゃあ、任せられるしかないよねー」




 困り顔でウルクはそう言った。




 「絶対助けてあげてよね。チビ神ちゃん、コウヤくんのこと気にしてるみたいだから」


 「おお、任せとけ」




 拳を合わせ、軽く魔力をぶつける。

 やっぱり、すぐに回復とはいかないらしい。

 だが、魔力を出してわかった。


 魔力の質が、変わりつつある。



 ウルクもどうやら、それに気がついたらしい。




 「これ、こっちが頑張らないとかもだねー」


 「んはは、そう思うなら急ぐこったな」


 「そうするよっ!!」




 そしてウルクは、駆け足でユグドラシルに向かった。

 おそらく、中央にいる【ノーム】達とまず合流する気だ。


 スムーズでよろしい。




 「こっちも出るか。お前もそろそろ起きろよ、ゲロさん。器探さねーとだ」


 「………その前に、話しておく事がある。行きがけにでもいいから、聞いてくれないかな」


 「?」



 「オイラと、記憶を失う前のコウヤの話だ。ここまで来たんだ。もう、全部を話す」











——————————————————————————————












 「………………むぅっ………ぅ………………? ここは………………わぁ!?」





 ボロボロと、地面が崩れようとしている。

 リンフィアは慌ててその場を離れ、上空へと避難した。


 まるでこの世の終わりのような光景を目にして一瞬で目を覚ますが、流石に状況はすぐには飲み込めない。



 これは何なのか。

 誰もいない場所で何故眠っていたのか。

 何でこんなに全身痛むのか。


 順を追って思い出していって、ようやくリンフィアも状況が掴め始めていた。




 「………………そうだ。ミレアちゃんは」




 飛び回り、周囲に感知を広げるが、当然周りにはいない。

 周囲の状況と、回復を初めていた肉体が、時間経過をリンフィアに告げていた。



 

 (多分、勝ったんだと思う。これは多分、外界に繋がってる。なら、もう飛び回っていいよね)




 翼を広げ、空を舞う。

 はるか上空から見るフェアリアには、既に崩壊の兆しがあった。


 しかし、そんな事は後回しだ。



 今はとにかく、ミレアを探さなければならない。

 そのためには、より広い探知が必要だ。


 今では足りない。

 いや、今までの最大でもきっと足りない。


 このフェアリアを覆えるくらいの探知がいる。

 進化が足りない。

 もっと、もっと成長しなければ。


 もっと、もっと、もっと—————————






 今世界に於いても、神威の絶対量は肉体依存の域を出ない。

 どれだけの熟練者でも、肉体が弱ければ総量は少ないし、屈強であれば、潜在的なものだとしてもそれは凄まじい量になる。


 才能もなにも関係ない。

 特に、このフェアリアであれば。




 しかし、コントロールは別だ。


 それは努力によって培われ、才能によってそれはさらに加速する。




 リンフィアに足りなかったのは、あくまでのコントロール能力。

 慣れない変身故の未熟さ。





 だが、その未熟さも飛び越えてしまう程の才能がそこにはあった。

 願うほどに進化はより先へ。

 望むほどに力はより強固に。


 おそらくは常人が数年かけて登るはずの階段を、今リンフィアは、一時の激情のみで軽々と飛び越えてしまった。





 「………………いた」





 リンフィアは知らない。

 今の自分の姿が、どれだけ父に近づいているのかを。










——————————————————————————————












 人口流出・70%超過。

 ゲームを元に制作したこの世界に深刻なイレギュラーが発生。

 複数の分野において継続が困難となったため、システムの崩壊を開始した。




 現状の確認





 ・ケン

 エル・ゲロさんと共にコウヤの元へ向かう。

 同地点にミレアも待機中。



 ・リンフィア

 単独でミレアの元へ向かう。



 ・ラビ

 戦闘継続中。

 敵方にルドルフも合流予定。



 ・ウルク

 流・ルージュリア・【G・R】改めヒスティ・【ノーム】改めてノームルの待機する地点に移動中。

 近くで【カーバンクル】改めルビィと待機しているゼロ・メルナの両名も輸送する予定。







 ネームレスについての解説。

 不要な方は読み飛ばして下さい。



 ネームレスを起こす《名前を奪う能力》は、コウヤが異世界人として得た独自のスキルであり、固有スキルに近い。

 というのも、ルナラージャの【迷子】と違い、迷い込む際に罪の神が干渉したため、少し強いスキルを得ることに成功した。



 現在そのスキルは、罪の神の神威とラビの母から奪った罰の神の力が組み合わさって出来た《独自の世界を生成する能力》(以下神威とする)に統合された。


 その後神威の効果でカラサワが一度屈服させた相手はNPCとして扱えるようになり、能力による支配(肉体の強制変換やお告げなど)を受けるようになる。

 ネームレスはその支配の一環であり、ルール違反をしたものに対して強制的に降りかかるように組み込まれた。


 ただし、屈させていないものに対しては、能力である世界自身が強制を相応しくないと判断するため、そう言った人物に対して能力を行使する場所、カラサワ本人にも思い制限を受けることになる。





 ※【ノーム】は、カラサワの《名前を奪う能力》が罪の神や罰の神の神威と組み合わさる前に名前を奪われていたため、生身でこの世界にいる。

 そのため、名前がまだ戻っていない



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