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第135話


 「やっぱし人が多いな。これ全員参加者なんだな」


 「あ、見てください! ダグラスさんがいます!」


 「お、マジで? あれがおっさんのパーティメンバーか。やっぱ他の連中よりはずっと強ぇな」


 大狩猟祭。

 年に一度のモンスター狩り。

 今回は、例年よりも規模が大きく、参加者も多い。

 特に例年との違いが大きいのはその面子だ。

 SS以上の冒険者が多数出場している今回は恐らく大混戦になるだろう。

 会場に貼ってある防壁もかなりの強度にしてあった。


 『さァーッ! 今年もこの季節がやって来た! フェルナンキア大狩猟祭! 今年は例年よりも大規模な大会となっているぞォォォ!』


 こういう時に好まれるスキル、【拡声】によって拡げられた声があたりに広まる。


 聞き覚えのある声だと思って注意深く聞いていると、この前の腕相撲のところにいた男と同じ声であった。

 人気の司会だったりするのだろうか。


 『それではッ、今回注目選手を紹介していこう! まずは………我らがギルドマスター、ダグラス・オーバーン!!!』

 

 歓声が上がった。

 

 向こうで雄叫びをあげているダグラスがいた。

 大人気だなおっさん。


 『続いては、フェルナンキアに颯爽と現れた謎の美女! 全身を黒き竜の装備で身を包む美しき女王! ニィィィィルッッ!!!』


 やはり注目選手の中に入っていたニール。

 当然だ。

 こいつはSSランクの中でも屈指の強さを持っている。

 ニールを見るとものすごいドヤ顔をしていた。

 リンフィアがすごいすごいと言うほどドヤ顔は凄まじくなっていく。


 『そして! あの伝説の三帝! その可憐な姿から生まれる凄まじき剣技の数々を誰が想像できようかッ! 剣のみに己を捧げた最強の剣士! ラクレーッッ!!!!』


 今日1番の歓声が聞こえた。

 こうしていると、三帝のスゴさを実感する。



 その後も色々紹介されたが、全然知らない奴ばかりだったので聞き流した。


 『これほどの顔ぶれ、今年の大会は荒れるぞォォ!! この大会、一体どうなってしまうのかッ!!』


 物凄い歓声だ。

 会場の熱気は凄まじいものになっている。

 


 「わぁ、すごいですねっ! お祭り! 昨日のも凄かったですけど、今日はまた一段と盛り上がってますよ!」


 「年に一度の大会らしいからな。こうじゃねーとつまんねーよ。こりゃ気合い入れていかねーとな」


 「優勝したいですもんね」


 「だな」


 全員腕に覚えのある実力者、とは限らないが、実力は確かに多い。

 出来るだけこいつらの力で勝ってほしいが、まぁ難しいだろう。

 少しは俺も加勢する。



 ——————大会が無事に行われるなら、な。



 「よーし、お前ら。装備は整ってるか? 特に2人」


 「ばっちりだ」


 「完璧です」


 リンフィアもラビももう大分扱いに慣れたようだ。

 特にリンフィアは複雑なので苦労しただろう。


 「後10分。魔力動かしてスムーズに魔法が使えるようにしとけよ」


 「はい!」


 「がってん!」


 ニールは言われるまでもなく、準備を終わらせている。

 流石だ。

 っと、忘れるところだった。



 「ニール。例の件だが、これは多分俺の予想通りになると思うぜ………何度も言うが、頼んだぞ」


 「任せておけ」


 俺は返事をする代わりに頷いた。




 「………さて、ちょっと魔力を流しとくか」


 急に強い魔法を使うような事になった時のために、ウォーミングアップが必要だ。


 「………」


 俺は目を閉じて全身の魔力をゆっくりと動かす。

 全身を隈なく循環させる。

 初めはゆっくり、そしてどんどんスピードをあげていく。

 ある程度スピードが早くなり、全身を回りきったら、一気に弾く。




 バチチッッ!




 「………………ッッ!」


 弾けた魔力は視覚化され、電撃のように俺を包んだ。


 体内で起きる打ち付けるような衝撃。

 これが結構効く。


 「ぅ………お、何だ今の………」


 「あれ、ガーディアンじゃねーか」


 「マジか。本気で参加するんだな」


 「あれ魔力か? やばくねぇか?」



 警戒されてしまう俺。


 「ふぃー、うっし。いい感じだ」


 「ケンくん、それ目立つからやめた方がいいですよ」


 「えー、いいじゃねーか。見ろあれを」


 俺は向こうで動き回ってウォーミングアップしているやつを指差した。


 「あんな風に場所とって動くよかマシだろ」


 「はぁ………」


 まぁ、確かに目立つかもな。

 金髪金髪言ってる声がちらほら聞こえる。


 「でもこれが1番魔力を慣らすのに丁度いいんだよ。ちょっと痛ぇけど」


 例えるならビリビリペン食らったような感じだ。

 びっくりする感じ。


 「お前らは終わったか?」


 「はい、もういつでもいけます」


 「ワタシも」


 「じゃあ後は開始まで待つだけだな」







 そして10分後。

 ついにその時が来た。


 『試合開始まで残り30秒を切った! 戦士達よ、心の準備は出来ているかァァァ!!』


 「「ウォォォォォォ!!!!」」



 開始直前。

 選手達の熱気はピークに達していた。


 『開始まで残り10秒! 9! 8! 7! 6!』


 「5! 4! 3! 2! 1!」


 そして始まった。



 「大狩猟祭ッ! 開——————」






 ブツッ!




 音声が途中で途切れた。

 流石に皆動揺を隠せず、ざわついている。


 「何だ?」


 「故障か?」


 「せっかく盛り上がってたのによぉ」


 「ん? 何だあれ?」


 誰かがそれに向かって指をさした。


 黒い渦。

 正体不明の謎の物体。

 気味の悪い音とともに現れたそれから、今度はヒトの声が聞こえて来た。


 



 「では、大狩猟祭に代わり————————————」




 奥に空間の歪みが発生する。

 あれは、バブルではない。

 しかし、違いがわかりにくく、これをモンスターバブルだと思う冒険者が多数いた。


 「なっ、何だあれ!」


 「モンスターバブルだ!」


 「何だ、普通に開催されんじゃん」


 「あれ、誰か乗ってるぞ?」


 迫り来るモンスターの上に人影が見える。

 そして、近づいてくるにつれ、そのシルエットの正体が明らかになっていった。


 「おい、あれ………………まっ、魔族だ!!」


 「嘘だろ………」


 「何の冗談だよ!」


 すると同時に、別の騒ぎが起こる。


 「きゃあああああ!!」


 「うわあああああ!!」


 悲鳴が聞こえる。

 聞こえて来た場所を見ると、謎の光が発生していた。


 「人が消えてるぞ!!!」


 「ファレスさん!」


 「ああっ! リーダー!」


 光とともに人が消えていってるのだ。


 「ダグラス!」


 「おいおいマジか——————!」


 ダグラスは光に包まれて消えていった。

 そう、消えていってるのは、あのリストに載っていた人間達だ。


 「ニール」


 「わかってる」


 俺のポケットを中心に光が発生する。

 

 「!! ケンくん!」


 リンフィアは俺に手を伸ばした。

 だが、無駄だ。

 これは対象以外には効果がない。

 俺は心配させないようにニッと笑ってこう言った。


 「行ってくるぜ」


 そして俺は、光に包まれて消えた。







 「————————————蹂躙を開始する」

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