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第13話


 「……寝過ごした」


 俺は今城門にいる。

 警備兵の目をかいくぐって睡眠をとり、早めに起きて暗いうちに出発しようと思ったら寝過ごした。

 

 「メシ………あ、クソ、メシ無いんだった」


 俺は今食料を持って居ない。

 これから調達する予定なのだ。


 「さっさとこんなとこ出ねーとな。出来れば早い内に出たかったが、」


 今は10時。

 もうすっかり明るい。

 昨日の夜とは比べものにならないほど視界は開けている。


 「まあ無問題だ」


 共通スキルの一つ【索敵】を使用する。

 このスキルレベルを10まで持ってくると、周辺の人間の場所だけではなく、今どの様な体勢なのか、例えば突っ立ってるのか座ってるのかまでわかる。

 このスキルはレベルを上げる為にある条件がある。

 それは持続使用だ。

 長時間使っているとレベルは上がっていく。

 ただし、長時間使用は頭痛を伴い、Lv.3まで行くと大抵の人がレベル上げを諦める。

 だが俺は頭痛なしでLv.10を手に入れた。

 そもそもなぜ頭痛が起きるのかと言うと細かい情報に脳が追いつかないからだ。

 俺は【神の知恵】で脳が特殊な状態なので、かなりの負荷に耐えられる様になっているのだ。


 「……よし、周辺はいない。向こうは……こっち見てねーな」


 俺は人が居ないのを確認し、外に出た。

 周辺に人が居ない今のうちに俺は壁まで行くと、立ち止まった。


 「これは……」


 城門から城下町を覆っている薄い膜のようなものが見える。


 「なるほど、結界か」


 感知タイプに魔法結界が張られていた。侵入者が触れると警報が鳴る仕組みである。


 「流石にセキュリティは甘くないってか。それなら」


 【魔力干渉】を使い結界を書き換える。

 これはトラップなどに使われている魔法を書き換えるのに使用されるアビリティだ。

 魔法に使用されている命令を書き換え、解除するのが目的だ。

 今回は流石に解除したらばれるので、俺が通る一瞬だけ小さな穴を開ける。

 俺は結界に手を当て、魔力干渉を発動する。


 「ここを……次は……これが……それで……こうだ!」


 薄い膜が真ん中から剥がれて人1人潜れるくらいの穴になった。


 「訓練の賜物だな」


 結界を一時的に解除してそこから通り抜け、俺は城門から飛び降りた。






 「ふぅー、脱出完了。このスキルとっといて良かったー」


 どこまでも草原が広がる。

 修行場とは違い道がある。

 人もいる。

 俺は改めて異世界に来たんだと感じた。


 「解放されたって感じだなー。あいつらには悪りぃが俺は今から自由気ままに行かせてもらうぜ」


 ググッと背伸びをする。


 「やっと自由だ。これでゆっくり世界を見て回れる。そして、記念すべき第一の目的地は」


 ここを出る前に地図を見てきた。

 その時見た一番近い場所は、


 「北の街だ」


 

 ここからは完全にノープラン。

 いきなり転移させる神もいなければ、一緒に連むクラスメイトも友達もここにはいない。

 何のレールも敷かれてない。

 自由とはそういうものなのだ。


 「よーし、出発だ!」






———————————————————————————






 「おやおや、頑張ってるね、ケンくん」


 いつぞやの真っ白い空間。

 トモはそこからケンを見ていた。


 「あれま、あなたのところの坊や追い出されちゃってるじゃない」


 話しかけてきた女は命の神だ。

 この世界に存在する神の内の1“人”だ。

 神は1柱2柱と数えるらしいが、見た目は人なので普通は1人2人と数えられている。


 「あはは、彼嫌われてるからね。君のところの女の子は違うんだろう?」


 ふっふっふ、と得意げに笑うと、


 「ええ、すっごくいい子よ。あの世界から来た子の中じゃあ一番じゃないかしら。うふふ、久し振りに気に入ったわ」


 くねくねしながらそう言った。

 トモは多少呆れ顔になっている。


 「いい子ねぇ、君のいい子基準は良く分からないけどそこまで言うなら相当なんだろうね。今度僕もあってみたいよ」


 「あら奇遇ね。私もあなたのところの坊やに会ってみたいわ。あなたの知恵をあそこまで吸収したのは今まで見た中ではあの子くらいじゃない?」


 トモはニヤリと笑う。

 

 「あんな有象無象と比べてもらっちゃあ困るよ。だって彼———」


 ほんの一瞬のことだった。


 オォォン


 物凄い圧がこの周辺を覆った。


 「おーい、漏れてるわよー」


 「神象魔法を覚えたんだよ」


 命の神は驚愕の表情を見せた。


 「え!? あのイカレ魔法覚えちゃったの!? うわー、それは大したものね。あなたが気にいるわけだ」


 トモは期待しているのだ。

 歴代最高の異世界人がこの世界をどう生きるのかを。

 今のはそのワクワクから思わず漏れた圧である。


 「俄然会ってみたくなったわね。今度下界にお邪魔しちゃおうかしら」


 「えー、やめなよ。いつかみたいに君の力が影響して生態系が崩れちゃったらどうするんだよ」


 「冗談よ、行くわけないじゃない。ホホホ」


 トモは命の神をほったらかして再びケンを観察し始めた。


 「楽しみだなぁ。ケンくん 」







———————————————————————————







 「ま、まずい。腹が……」


 一方俺はと言うと、神たちに期待されてるとはつゆ知らず、空腹で大変なことになっていた。


 「モンスターでも何でもいいから……いや、モンスターはやっぱ無理……」


 俺もやはり人の子だ。

 とんでもステータスのバケモンになっても空腹は辛い。

 実は一昨日の夜以降飲まず食わずだ。

 我慢すれば後1ヶ月持つがその前に頭がおかしくなる。


 「人……ニンゲン……」


 動物は諦めて食べ物を恵んでくれる人を探し始めた。

 人間が食べたいわけではない。


 俺は索敵を発動。

 今回は精度を下げ、範囲を広げた。

 この2つは反比例していて、片方をあげたらもう片方が下がると言う仕組みだ。

 周囲に人がいるか探した。


 「……! いたァ!」


 ここからおよそ数キロ先に

 街に向かっている集団がいた。

 恐らく冒険者だ。

 何やら数が多いが気にしない。


 「行くぞ!オラアアアア!」


 全身、完全強化。

 目的地踏み出した一歩。

 土煙と爆音を残し、その身を遥か先へ。

 異様なまでの身軽さは、その数キロを、ほんのわずかな時間で通り過ぎた。

 そして、


 


 「ついた!」



 目的地へ到着。



 「!?」


 いきなり現れた俺に驚く冒険者達。

 しかし、そんな事は俺にはどうでも良く、思わずはしゃいだ声を出した。


 「おお! やっぱ人だ!」


 ついに見つけた人に感動を覚えていると、後ろから巨大な牛のモンスターが突っ込もうとしていた。


 「君後ろー!」


 「ブモオオオオオ!!!」


 冒険者のリーダーらしき人物は俺に注意を促すが、腹が減っている俺は全く聞いてなかった。


 「なあアンタ、メシ持ってねーか? 俺今ものすげェ腹減ってんだよ」


 「やる! メシなら後でやるから今は避けろ!」


 「ブモオオオオオ!!!」


 牛はどんどん迫る。

 後数秒もすれば追いつかれるだろう。


 「マジで! いやーワリィな、助かる!」


 「ブモオオオ、ブグッ!?」


 俺のフル強化状態の後ろ回し蹴りが直撃。

 顔面に思いっきりヒットした瞬間、牛の頭は遥か彼方まですっ飛んで行く。

 それでも体の方は勢いが止まらないので、


 「今腹減ってんだよ………邪魔だゴラアアアア!」


 かかと落とし。

 以前石田に喰らわせたものとはわけが違う。

 衝撃が地面まで伝わる。

 大きな音をたてながら地面に亀裂が走り、小さなクレーターが出来た。

 

 「……うそ」


 冒険者達は口をパクパクさせながら唖然としていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 音速の4倍って盛りすぎ 蹴った対象に音速の4倍を出させる蹴り足のスピードは足と対象の牛の重量差を考えると更に早い事となり音速の4倍なら拳銃弾はもちろんほとんどのライフル銃のスピード以上となる…
[気になる点] 神の知恵があるのに地図は必要なのか...(困惑) やはり神の知恵を人間の知恵で描くことなど不可能なのか?
[気になる点] まだ序盤なのでなんともですが、クラス全員転移で全員が家族、友達、恋人など関わってがなくなっているのに帰りたいと言い出さないのに非常に違和感を感じる。
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