第125話
ついに、祭り当日だ。
あいつらも成長した。
俺もなるべく強化なしで参加するつもりだ。
まあ、ソロ、デュオくらいならいいよな!
「では! 只今より大狩猟祭開催すっぞオラアアアアアアアア!!!」
ダグラスの雄叫びで祭りが始まった。
「さぁ! 待ちに待った祭りだ! 野郎ども! 準備はいいか?! 今日と明日はなんもかんも忘れて騒ぎまくれェェェェェ!!!」
「「うおおおおおおおお!!!!!」」
今回は規模が大きいと聞いたが、この賑わいかたは凄い。
街に住んでる連中はほぼ全員、さらに周辺からも人が集まっている。
「大狩猟祭出場者は集まれ。出場者用アイテムを配布すっから」
何やらアイテムを配っているらしい。
薄い板だ。
「マイ、これは?」
「得点の集計をする魔法具です」
「ふーん………」
渡されたのはポイントをカウントするアイテムだった。
倒したモンスターのポイントを記録する魔法具だ。
「明日の本番は絶対これを忘れんなよ。今日はどんどん騒いで暴れろ!! 以上解散ッッ!!」
同時に歓声が湧いた。
大量の人が同時に動くので移動が大変だ。
参加者以外にも人はたくさんいた。
そしてよく見ると、かなりの兵が警戒にあたっている。
魔族対策だろうが、おそらく無駄になるだろう。
俺の推測が正しければ奴らが動くのは明日。
今からできる事は限られているし、今は放置だ。
さて、俺も遊ぼうかな………っとその前に。
「ちょっとお前ら、一旦帰るぞ」
「えー、あそびたい!」
「なら急げ」
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「ニール」
「む」
俺は部屋に戻ると、リンフィア達に気づかれないように、ニールを呼んだ。
「何だ」
「これ、何か仕掛けが施されてるっぽいぞ」
「何!?」
“これ”とは、マイから貰った得点の集計機だ。
全員に配ったのでもしやと思い調べたら魔法以外の何かを感じた。
鑑定では見えない。
恐らくこれは、固有スキルによるものだ。
「今からこの仕掛けを取り除く。そして取り除いてどうするかを説明する。いいかこれは——————」
俺はニールにこの魔法具についての説明と大会中の魔族の行動への対策を考えた。
「頼めるか?」
「お前は大丈夫なのか?」
「ああ、問題ねーよ。じゃあ任せた」
「ケンくん? もういいですか?」
「ああ。そんじゃ行こうか。 それと、今日くらいは楽しもうぜ」
「フッ、いい加減なやつだ」
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「ケンくん、いつになくわかりやすく浮かれてますね」
「うはは、やっぱそう見えるか。祭りは好きなんだよ」
向こうにいた頃はよく祭り行ってたなぁ。
シレッと酒飲めるし、食いもんもいっぱいあるし、射的で荒稼ぎ出来るし、テキ屋の詐欺暴いて脅してゲーム機貰ったり………
「なんか思い出してますね」
「そうですね」
あ! 忘れてた。
そう言えば今日のためになんとなく作ってしまったアレがある。
「お、そうだ。今日は出店回ろうぜ。狩猟祭は明日からだろ? いいモン作ったから」
「いいもん?」
実は俺、結構多趣味である。
別に今更ではない。
ゲーム、プラモ、料理、裁縫、その他諸々。
そしてこの世界の魔法に加え、神の知恵を得たことで、趣味の範疇を超えてしまった。
俺はある日、この街の服屋に行った。
そしてそこで思ったのは、結構ワンパターンだなぁと思った。
装備は色々ある世界ではあるが、服は基本的に凝ったものはない。
よくよく考えたら外の連中もみんな似た格好をしている。
そこで思った。
作ろう、と。
「いや、何故そうなった、俺」
「おい、着てみたぞ」
部屋の奥から声が聞こえた。
ニールの声だ。
「ん、わかった………おお」
そう、俺は浴衣を作ったのだ。
生活魔法に裁縫をする魔法がある。
魔法プラス自分の手を使い全力で作った。
こういうのはハマったらやめられないのが怖いんだよなぁ。
「なんて言うんだ? この服」
「浴衣だ」
「ユカタ? ああ、聞いたことあるな。そうか、これがそうか」
恐らく、召喚された日本人が広めたのだろう。
しかし、そこまで広まってはいないようだ。
「結構いいなこれ。たまには鎧以外も着てみるものだ」
「おう、似合ってるぞ」
「にあっ………! そ、そんな事を軽々しく口にするな!」
相変わらず照れ屋だな。
「ししょー、きたぞ」
「おう………ってお前全然出来てねーじゃねーか! ニール直してやってくれ」
ぐっちゃぐちゃで帯も絡まりまくっている。
いや、イミテーションだからそうはならねー筈なんだが………
「これは凄いな………行くぞラビ」
「これむずかしいんだよー」
ブーブー言いながら再び着替えるラビ。
まだまだ子供だなぁ
「ケンくん、終わりました」
「お、やっとか。なんかやたら時間が——————」
「結構時間がかかっちゃいました」
「………」
やばいな。
思わず見惚れてしまった。
薄めの桃色で桜の模様が入った浴衣で、帯は白
髪型はサイドアップでいつもと印象が違って見える。
「えへへ、どうですかこれ? あれ、ケンくん?」
「ぃ………」
「?」
「いいな。うん、スゲー似合ってる」
リンフィアは少し顔を赤くして喜んだ。
「えへへ、嬉しいです」
う、おおおお!!!
何言ってんだ俺!?
流石にキモいぞ!
「ケンくんは着替えないんですか?」
「え? あ、着替える」
俺は急いで着替えに行った。
俺のは青い浴衣だ。
シンプルにしている。
「へぇ、ケンくんも似合ってますね」
「そうか? あんまり言われた事ないな」
金髪で浴衣を着ていたらどうしても違和感があると言われる。
リンフィアそう言うのは、こちらでは珍しい色でもないからだろう。
まあいいか。
「よーし、じゃあ遊ぶか!」
 




