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第123話


 「殿下、よろしいのですか? 今回の任務先では魔族がいるらしいです。危険なのでは?」


 いざとなれば置いて行くことを国王に進言することは出来る。

 だが、当のフィリア自身はそれを望んでいない。


 「王命ならば従わなくてはいけませんわ。それに、私は戦えますもの。あなた方も勇者といえどまだ召喚されてあまり日が経っていませんわ。私ほどの魔法の使い手はまだあなた方の中にはいらっしゃられないでしょう?」


 「いえ、琴葉ちゃんならおそらく殿下よりも魔法の実力が上かと………あ」


 馬鹿正直な蓮はつい言ってしまった。


 「コトハ? もう一人のSSSが私と同等だと?」


 フィリアは琴葉をライバル視している節がある。

 今までこの城で1番注目を浴びていた女性はフィリアだった。

 第一から第三王女や第五以降の王女も容姿はフィリアには敵わなかった。


 しかし、突如現れた美少女琴葉は、その注目の半分を掻っ攫った。

 いや、人当たりがよく、話しやすい分琴葉の方が人気は高い。

 王女はそれが気にくわないらしい。

 

 向こうは仲良くしたいと思っているようだが、こちらがツンツンしてるため、あまりうまくいってないようだ。


 「ナナミネ・コトハ………ぐぬぬぬ………」


 頰をリスのように膨らませてむくれるフィリア。


 「殿下、せっかくの可愛らしいお顔が台無しですよ」


 「かっ、可愛いらしい!?」


 パッと表情を明るくするフィリア。

 蓮はこういう事を無自覚に言うからモテるのだろう。


 「行きたいと望んでらっしゃるのなら止めません。俺がちゃんと守ります」


 「嬉しいですわー!」


 フィリアは蓮に抱きついた。

 ちなみにこれは計算してやっている。

 蓮は顔を見ていないのでわかっていないがだらしない顔をしている。


 ガチャ


 と扉を開ける音がした。


 「レン、明日の演習だが………あ」


 ルドルフは抱きついているフィリアととぼけた顔をした蓮を目撃した。

 蓮の表情からフィリアが勝手にやっていると推測できた。

 ルドルフはまたかとため息をつく。


 「はぁ………侍女達が探し回っていたのは王女殿下だったか。殿下、そろそろ戻られてください。夜更かしは美容の敵ですよ」


 「ルドルフ! 余計なお世話ですわ! 美容なんてレンと一緒にいる時間と比べて………はっ」


 ルドルフが目を細めてフィリアを見ている。

 蓮の目の前で美容がどうでもいい発言をしていいのかと言いたいのだ。


 「オホン。確かに夜更かしは良くありませんわね。レン、また明日………ルドルフめぇ………」


 最後の一言は気にしないことにした。


 「教官、助かりました」


 「お前も大変だな。殿下以外にも大臣の娘にも言い寄られていたじゃないか」


 「慣れてますので。撒くのは意外と簡単ですよ」


 勘違いしてはいけないので言っておくが、蓮は自分がモテていると言う自覚はある。

 いわゆる鈍感キャラではないのだ。

 幼い頃からモテまくったせいで回避はだいぶ上手くなっている。


 「すごいこと言うな、お前」


 「ただ………」


 蓮は小さくため息をつく。


 「王女殿下は未だに撒けませんね。あそこまでグイグイ来る人は向こうでもなかなかいませんでした」


 「向こう………異世界か」


 「はい、俺たちにとってはこちらが異世界ですけど」


 「向こうはこちらより平和だと聞いた。平和か………」


 「ここに来てすぐの平和ボケした俺たちの顔を見たらよくわかるでしょう?」


 「ふっ、確かにな」


 ルドルフは懐かしげに思い出していた。


 「いや、その時からお前は平和ボケした表情ではなかったぞ。それと………」


 「ケン、ですか?」


 「ああ、あの少年は凄まじかったな。明らかに死線をくぐっている顔だった。それに、喪失を知っている顔だった。平和な世界でも失うことはあるのだな」


 「………はい」


 この事情を詳しく知っているのは、ケン本人以外では蓮と琴葉だけだ。

 向こうで起きたとある事件。

 今のケンがあるのも、ある意味そのせいかもしれない。

 

 「そういえば、教官は何か用事があるんじゃないんですか?」


 「おお、そうだった。明日の演習だが、急遽任務が入って中止になった」


 「聞いています。フェルナンキアへ出向くんでしょう?」


 「む、もう知っていたか。ならばもう行く人間は決まっているのか? 精々10人ほどにしておけよ」


 「教官を入れて9人の予定です」


 「そうか。なら、もう良いな。明日の明朝に出発だ。連絡をしておけよ。じゃあな」


 「はい」


 ルドルフが退出したあと、任務のメンバーに連絡を入れた。

 










———————————————————————————












 「と言うわけで君達3人とも任務に参加してもらうことになったからよろしくね」


 ここは女子の部屋がある階の談話室だった。

 この時間になると大半の女子が集まるので一気に連絡できた。


 「すずっちー、聞いたかね? 任務だってさ! ワクワクだねぇ。いいんちょは?」


 「任務ねぇ………獅子島くん、なぜ私なの? 私の能力SSランクじゃないわよ?」


 綾瀬 優。

 このクラスのクラス委員長だ。

 秀才である。


 「綾瀬さんの超鑑定は今回の任務で必要になってくると思う。美咲ちゃんの能力と合わせて使うとすごく強力なはずだ」


 「なるほどね。わかったわ。で、谷原さんは大丈夫なの?」


 「………ん」


 涼子は聞いているか聞いてないか微妙な返事を返した。


 「この感じは聞いてるねっ」


 「俺もそう思うよ」


 「さっぱりわからないわね………」


 「今のうちに理解して置いた方がいいぜ〜、いいんちょ。イケレン君がいなくなったら我ら三馬鹿の面倒を見きれるのは君しかいないのだっ」


 七海はぽんっと綾瀬の肩に手を置いた。


 「えぇ!? 嫌よ! 私じゃ絶対手に負えないじゃない!」


 しばらく綾瀬が絶叫していた。

 蓮はさっさと春の部屋に行って連絡をすることにした。



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