第120話
「………ん」
リンフィアは目を開け、戻って来た事を確認した。
「お、戻って来たか」
「リンフィア様!」
俺たちはリンフィアの側まで行った。
魔力の量が違う。
強くなったことが何となく感じ取れる。
成功だな。
「お疲れさん。どうだった? 自分は」
「正直もうダメかとおもいました」
リンフィアに詳しい戦闘の様子を聞いた。
「そうか。結構追い詰められてたのか。まあ、万一致命的なダメージを食らった場合は無効化して無理やり意識が戻るようにしてたが、必要なくてよかったぜ」
「はい」
そう言うリンフィアの顔はどこかスッキリしていない顔だった。
「何かあったみたいだな」
「え!? 何で………」
「ったく、わかりやすいなお前らは。いいや、話してみ」
俺がそう言うと一瞬躊躇った様だが、話してくれた。
「実は………」
なるほど。
魔力の記憶か………
子孫に力を残すためにそう言う方法をとる場合があるが、こいつの場合は封印だ。
ペナルティーをわざわざ残してるってことは、
「リフィ、とりあえずその能力使うな」
「何でですか?」
「仮にお前の親、魔王が意図的に残した封印なら慎重になるべきだぜ? 自分でもわかってんだろ」
「………はい」
そもそもおかしいと思っていた。
初めて鑑定した時のステータス、魔王の娘があんなに弱い訳がないとのだ。
少なくとも、MPは生まれた時にもっと無ければおかしい。
それが封印のせいとなると合点がいく。
「封印か………」
一応鑑定してみるか
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リンフィア・ベル・イヴィリア
半魔族
HP:5500
MP:7000
攻撃力:4300
守備力:4000
機動力:3200
運:10
スキル:索敵Lv.2/棒術Lv.4/格闘Lv.2/隠密Lv.3
アビリティ:魔法【強化魔法・四級/炎魔法・三級/水魔法・三級/風魔法・三級/雷魔法・三級/土魔法・三級/闇魔法・四級/光魔法・五級/回復魔法/四級/防御魔法・四級】
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やはり封印は表示されていない。
この鑑定はかなり深くまで見れるが、それでもって事は、よほど強い封印をされている様だ。
それに、いつの間三級なんて覚えたんだ?
「なぁ」
「はい?」
「お前、三級魔法使えるだろ」
「え? そんな訳………あれ、何で、これは………」
覚えのない知識が頭の中にあり混乱している。
「やっぱその封印危険だな。いいか、絶対使うなよ」
「わかりました」
俺も俺で調べておく必要がありそうだ。
「帽子貸せ。直しておく」
「お願いします」
俺は帽子をアイテムボックスに入れた。
「さて、残るはラビだが………」
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「ヤッ、セァッ!」
「………」
ダガーでの激しい剣戟。
スピード、パワー、テクニック、全てが格段に進化していた。
こちらも着実に成長している。
「いまだ!」
ダガーが伸びて直剣になる。
魔力刃はもう完璧にマスターしている。
すると、向こうも合わせて剣に変えた。
こちらも同様にマスターしていた。
「ぐっ………まだまだぁ!」
ラビは刃を引っ込めダガーに戻すと、そのまま一直線に突き刺した。
だが、それも読まれていた様で、黒ラビも短剣に戻して応戦した。
「うう………マネすんな!」
「………」
黒ラビは無表情のまま黙々と戦っていた。
妙な感じがする。
黒くてもラビだ。
うるさくないと違和感がすごい。
「おいワタシ! おまえもワタシならもっとあかるくたたかえ!」
と、キレてみるが、黒ラビは無視している。
「もういい………いまかんせいしたとっておきをおみまいしてやる」
ザワッ
「!」
生物迷宮は特殊なスキルを持っている。
迷宮化やモンスター召喚。
今まで使っていたのはそれだ。
しかし、今回の修行でさらにいくつかのスキルを獲得した。
とっておきとはそのうちの一つのことだ。
「たぶん、このいちげきでたおさないとおまえにまねされる。そうなったらワタシのまけだ」
完成したのは本当にたった今だ。
もう少しすれば向こうもそれが使える様になってしまう。
「だから、ここにぜんぶかける!」
ラビはありったけの魔力を使うことにした。
干からびる寸前まで使うつもりだ。
「——————【憑依召喚】!」
ラビの全身から魔力が放出される。
魔力はうねうねと形を変えていく。
その姿は、
「すらざえもん!」
スラ左衛門だった。
しかし、これはスラ左衛門ではない。
スラ左衛門の力である。
それはパンッ! と弾けて塵と化し、広がりきった後ラビの元に再び集まった。
「………!!」
その姿は正に人型のスライムだった。
「いくぞ、ワタシ」
 




