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第1188話




 「じょ、嬢ちゃん………オメェ………」





 『ノーム』は、唖然と立ち尽くしていた。


 謎の植物が現れ、バルバドの全身に巻きついて、全身の骨を砕いていったのだ。

 そして、何もできないままただ見ているところに、ミレアが現れた。



 ミレアは、バルバドの手足を植物でがんじがらめにし、首を絞めるように手を添えて立っていた。

 いつでも殺せるというメッセージを添え、死の恐怖を刻むために。





 「………」




 これを見た『ノーム』も、思うところがないわけではない。


 裏切ったとはいえ、かつての仲間。

 自分の力でどうにかしたいと、『ノーム』は強く考えていた。


 そして、是が非でも真実を聞き出したいと考えていた。


 しかし、その機会を奪われた怒りよりも、戸惑いが大きく勝っていた。




 「ご………ァ、ぇ………」


 「バルバド・イーグロック。聞いていますよ。組織に入り、高い地位を得た事で豪遊三昧。犯罪の許可があるのをいいことに何人もの女性に手を出し、挙句、殺しにまで手を出した」


 「ぁ………な、ぜ………それを………」


 「!?」





 あっさりと白状したところでため息をつくミレア。




 「このダンジョンには、かつてこの街で暮らしていたガイアナのノーム達の意思が残っていた………といっても、もう消えてしまいましたが」


 「な、何!? ンな事が………!?」


 「ええ。ですから、メッセージも受け取っています。ワグロン、ジャグナー、ガガル。一番最初の被害者からは、特に」


 「!?」




 その名前に心当たりがあったのか、一気に言葉を詰まらせる『ノーム』。

 これはもう、信じざるを得ない。


 そしてそれは同時に、自分にとって最悪な結末を受け止めなければならないという事であった。




 「バルバド。貴方は出来るだけ苦しんで殺して欲しいと言われています。ですから、それに相応しい痛みを与えます」


 「ま、待ってくれ!!」




 この期に及んで止めようとする『ノーム』。

 すると、煩わしそうにミレアはこう言い始めた。




 「ハァ………伝言はあなたにもあります」


 「お、俺に……………俺の民のか!!」



 「ええ。少しでも罪悪感を感じているのなら、組織と管理者を根絶やしにしてくれ、と」



 「——————!!」





 それを言って、ミレアは再びバルバドの方を向こうとする。

 しかし、まだ『ノーム』は、何か言いたげな顔をしていた。




 「………なんですか?」


 「一つだけ、教えてくれ………あいつらは………………どこに行ったんだ?」





 躊躇いはなかった。


 事実は決まっている。


 ミレアは、臆する事なくはっきりと、真実を『ノーム』に伝えた。





 「現地にいた組織の妖精が生き残っていたのは、なんでだと思いますか?」


 「………それは」


 「彼らは必要な駒でしたから。異常を察知した管理者が保護を図りました。そして住民は………………実験と、ただの好奇心のため、わざと巻き込ませたらしいです………………なんの救いもない、くだらない結末ですよ」




 そして、少し間を置いた後、立ち尽くすノームに向かって、ミレアはこう告げた。





 「つまり………………全員、死にました」





 「     」







 その途端、首を絞められたバルバドが、小さくうめき声を上げた。

 ミレアは、思い出したように振り返り、そしてゆっくりと、より苦しめるべく、じわじわと殺し始めたのだった。















——————————————————————————————
















 「ということがありました………」




 一人で戻ってきたルージュリアは、その時の話を俺たちにしてくれた。

 もっとも、ミレアと話した本人は、まだバルバドというやつの遺体から離れはしなかったらしいが。




 「まぁ、ゴミクズが死んだのはどうでもいいが、そんなに強かったのか、ミレア」


 「はい。恐らく、族長以上です」





 じゃあ、事実上この国では最強だ。


 ………管理者を除けば。


 しかし、むしろホッとした。

 少なくとも、あいつを脅かす存在はそういないだろう。


 管理者とデバッガーに注意していれば、まぁどうにかなるはずだ。





 「あの………この先どうなさるのですか?」


 「言ったろ? 装飾品集めに加えてラビを探す。一つ確かめたいんだけどさ、今集めてる例の装飾品ってのは、白紙化以前からあるもんなんだよな?」


 「はい。シナリオに組み込むつもりでこれだけは管理者が残した………と、父からは聞いていましたが………ミレアさんがいない今、あなたの言うラビさんと言う方に渡しても効果はないかと………」





 確か、装飾品はあくまでも、勇者のレッドカーペットとして残された罰の神の力にかかっているロックを解除するというもの。


 だが、




 「よく考えてみろよ。あれは罰の神の力じゃない。って事は、ロックを解くなんて効果は、最初からないって事にはならないか?」


 「!」




 そう。


 あくまで、解除するのは、罰の神の力のロックだったのだ。

 しかし、あの力の正体は、罪の神の力を封じていたものの残滓。

 と言う事は、今伝わっている話も何かが違っている可能性がある。




 「まぁ確かに、そもそも全部間違いなら、単なるガラクタって可能性がないわけじゃねーが、どの道俺たちが今後ミレアより先に行くには、元の身体がないと話にならねーよ。その準備として、できる事は全部しておきたい」





 俺は振り返って、少し不機嫌なコウヤに呼びかけた。





 「コウヤ」


 「………ん」


 「弱いままじゃ、無茶を止められねーって事は、お前も理解してンだろ。だから、力を貸しやがれ」





 拳を突き出し、返事を待つ。

 コウヤは少しため息をつき、億劫そうに頭をかきながらこう言った。




 「俺は、お前の無茶も許してないんだかんな。金髪」


 「だったら、どうするべきだ?」


 「はっ………………させないようになるだけだ。このバカタレ共が」





 ぶつけられた拳が、じーんと痛む。







 目標は決まった。

 覚悟も決まった。



 まずは、アクアレアの秘宝。

 水精のペンダントだ。

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