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第1187話




 地竜………ユニゾンドラゴン。


 


 融合というスキルで他の地竜をくらう事で、より強く、丈夫に進化する極めて希少なドラゴン。

 そのため、集団で生活することが多い………らしい。



 以前見た時に、その強さはよく理解した。


 ランクで言えばSランク相当。

 そしてその速度は、他のSランクモンスターを軽々と凌駕する。



 俺の見立てでは、こいつは俺たち4人で切り札も全て使ってようやく倒せるかどうかというレベルだった。








 しかし、そんな強敵を、ミレアはたった1人で、そして本気を出すこともなく倒してしまった。





 「………これが、私の………………っ!?」


 「う、おぉ!?」





 地面が大きく揺れ始め、景色が変わり始めた。

 恐らく、地竜を倒したからだ。


 このエリアをクリアしたということだろう。


 



 「本来なら、あの雪だるまをモンスターから守るのが条件らしいのですが、地竜を倒して他のモンスターが逃げていったせいで、強制的にクリアになったみたいですね」


 「!」 




 わかったふうにミレアはそう言った。

 妙だ。


 このダンジョンについては、まだ誰も詳細が分かっていないというのに。




 「お前、なんでそんなことがわかるんだ?」


 「この地に触れましたから」


 「?」




 はっきり言わず、会話を切られた。

 ミレアは、そのまま地竜の死骸があった場所と向かい、落ちていた攻略印を拾った。




 「ああ、そいつを遺跡に持ってけば………」


 「ダンジョンが攻略できる、ですか?」


 「そう、だけど………」




 ………悪い癖だろうか。


 こうも、色々と知っていると、つい探る様に見てしまう。

 仲間相手にそんなことはしたくないが、やはりおかしい。



 何故、ここまで知っている?










 「………ん」





 いつの間にか、雪山は完全に消え、ダンジョンの全てが遺跡へ変わった。

 そういえば、ミレアがこうなったのは、さっきコウヤと遺跡に向かってからだ。



 しかしの端端に映る、薄気味悪い石像。


 このミレアの状況や、ダンジョンの内情のおかげで、妙に想像力を掻き立てられる。



 気がつけば、頭の中にあるもので、“意味” を組み立て始めていた。




 が、







 「これで終わりならさ、後はおっちゃん待って攻略だな」





 コウヤの言う通り、攻略は目の前。

 焦る必要もないだろう——————と、俺は考えていた。






 「もう、攻略は出来ませんよ」


 「………は?」


 「攻略印を失いましたから………………こんな風に」



 「「「!!」」」






 ミレアの手のひらに、ひどく弱々しい光が浮かんでいた。


 あれは………『裁定』の力だ。

 だが、あまりにも微弱過ぎる。





 「これで、罰の神の力は最後です」


 「何!?」




 あまりにも聞き捨てならない発言だった。


 それは、俺たちのこれまでの行動を、否定しかねないものであった。





 「最後って………元の肉体を取り戻すって話は!? 金ロールちゃん、お前自分が何を言ってんのかわかってんのか!?」


 「ええ、理解しています。ですから——————」


 「っ………!!」






 『裁定』の力に触れ、攻略印が砕け散った。

 その中から、夥しい量の力・が溢れかえった。


 あれは、恐らく………






 「ノーム達の………!!」





 力の塊を吸収し、より肉体が強化されていた。

 そして何より、神威が強まった。


 もはや、今のミレアは、以前のミレアよりも更に強い力を得ている。


 恐らく、あいつの師である三帝の魔導王・ファリスを超えている。


 


 これは、マズい。




 次に取る行動が、なんとなく読める。

 恐らくミレアは、




 「………これから先は、私1人で十分です」




 「「!?」」


 「………」





 やはり、単独での行動を選んだ。





 「いや、私にしか出来ない………この地に触れて全てを知った私にしか出来ない………………私がこの世界を………」


 「馬鹿な事はやめてください!!」


 「! 馬鹿な事………」




 小声そう呟くと、不満げな顔でキュッと口つぐんだ。

 しかし、それ見てなおリンフィアは続けた。




 「はい、馬鹿な事なんです。管理者は、絶対に1人じゃどうにもなりません!」


 「いいえ、私になら倒せます」


 「無理なんですよ!! ミレアちゃんも、管理者も、両方直々に見ましたから………」




 そう。

 ついさっき、俺たちは直接管理者と対面した。


 確かに、今のミレアの力はかなりのものだ。



 だが、管理者はそれを更に超えている。

 今のミレアが戦ったところで勝ち目はないだろう。




 しかし、今のミレアも決して馬鹿になったわけではない。

 恐らく、何か根拠がある。




 「リンフィアは知らないかもしれませんが、彼にはいろいろとこの世界における制限がかかっています。例えば彼は、プレイヤーに攻撃を仕掛けることが出来ないんです」


 「!」




 恐れ入った。

 まさか、それも知っているとは。


 全てを知った云々は、あながちデタラメでもないらしい。





 「そんなことは関係ない」


 「コウヤ………」




 強くミレアを睨みつけ、しかし優しい口調で諭し始めた。




 「力の問題じゃない。今抱え込んだから、きっとどこかで爆発する。仲間ってのは大事なモンなんだ。1人だったことがある俺がいうんだから、間違いない」


 「………」


 「戻ってこい」





 そっとミレアは目を伏せた。

 そして、決めていた様に、視線はまっすぐ俺へと向かった。




 「………」





 何と言えば正解なんだろうか。



 『お前が必要だ』?


 『いてくれないと困る』?




 ………違う。


 多分、俺と似た様な悩み。



 でも、多分俺にはわからない悩みも混ざっている。




 正解がわからない。



 だから、取れる道は一つ。

 素直に、諦めることだ。





 「………ごめんな、ミレア」


 「………!」


 「俺は、お前のその悩みを除いてやることは出来ない。俺って、実はそんなに器用じゃねーんだ。だから、納得のいく答えは、テメェで探してこい」






 「ケンくん!?」


 「金髪、何を………!?」







 驚きを口にするリンフィアとコウヤ。

 しかし、一番驚いていたのは、ミレアだった。







 「その上で離れるってンなら。仕方ねぇ」



 「………」



 「そうなったら。俺はお前を力ずくで取り戻してみせる」



 「!!」







 今はまだ無理だ。


 だから、今できることは、何もない。






 「………………」






 踵を返し、背を向ける。

 思わず出そうになる手をグッと止める。


 不安だ。


 今のミレアは特に。


 だが、今はグッと我慢しよう。




 そしてミレアは、何も言わずに去って行った。













 その途端に、コウヤは俺に向かって飛び出してきた。




 「金髪お前!!!」



 だが、俺は掴みかかってくる手を思い切り跳ね除けた。



 「………ああ、最善じゃない。けど、これを乗り越えなきゃ、あいつは多分、二度と前に進めない」




 強さへの執着。


 その根源を見つめ直さなければ、あいつの視界は晴れはしない。

 たぶん、俺たちがいては邪魔だ。


 しかし、コウヤの怒りも理解できる。

 確かに、戻ってこない事もあるかもしれない。


 だから、




 「予定変更だコウヤ、リフィ」


 「「!」」


 「大筋はそのまんま。アクセサリーを探す。そんで、元の肉体を取り戻す。そのために、本当の罰の神の力を持ったあいつを………」





 一つ、やることを増やすことにした。









 「ラビを探そう。時期は大会後だ」












——————









 


  あらすじ 領主討伐後〜暴走ダンジョン






 ケン達は圧倒的な力を持った管理者を倒すために、ミレアが持っていた『裁定』の力を使って、元の肉体を取り戻そうとした。

 これは、この力が対象の状態を正しい状態へと返す力がある故。


 しかし、今のままでは力が足りないので、力の封印を解くアイテムとして、一行は各族長が持つ4つの装飾品を集めることになった。




 まず一つ目の装飾品を集めるために、ウンディーネ族長の配偶者になる必要があったため、ケンはルージュリアと偽装結婚をすることになった。

 しかし、そこでレイターとぶつかり、紆余曲折を経て結局結婚自体も取りやめになった。


 そのため、正直に訳を話して、管理者を倒す事を約束する代わりに装飾品がもらえないか頼むことに。

 その条件として、後日ストルムで行われる武道大会に優勝するという難題を突きつけられた。


 ここで、少しでも大会を有利にするための敵の調査を行うために、G・Rが離脱することになった。




 一行は、修行のために、ガイアナにミッションとモンスター討伐によって経験値を稼ぐことにした。

 しかし、向かったダンジョンは普通のダンジョンではなく、ミッションになんらかの異常が起きて出現した暴走ダンジョンであった。


 そしてなんと、ダンジョンには領主直属のスタッフであり犯罪組織である集団が居着いていた。

 ケン達は、この危険なダンジョンの脱出と修行のために、3ヶ月ほど神威の修行をすることに。



 修行後、ケン達はダンジョンに来ていた『ノーム』と再開した。


 そして『ノーム』から、管理者の組織が発足した理由が告げられた。


 それは、かつて妖精王が管理者に敗北し、『ノーム』とエルフの族長が名を奪われたことで絶望した『ノーム』の部下達が、敵側に寝返ったことから始まったのだという。


 その後、組織のノームと衝突し、撃退。



 ケンたちは、この街の住民が、ダンジョンの養分になったかもしれないという事実を知ることに。

 この時、別行動をとっていたミレアとコウヤのうち、ミレアは遺跡でそのノームの住民と出会うことになる。

 住人達は、ダンジョンの暴走に巻き込まれたことで、とっくに死んでいた。


 しかし、そこで様々な情報を得ていたノームたちから様々な事を聞かされ、最後はそのノームを自らに取り込み、肉体を強化した。


 そして、ミレアはそこで、自分がこれまで使っていた力はあくまでおまけであり、本当の力は罪の神.........自然を支配し、生み出す能力だと知る。

 これは、管理者と同じ能力であった。



 その後、ミレアは自らが得た力を使命と考え、管理者を1人で倒すべくケン達の前から姿を消した。




 ケンは、今後の指針を少し変更し、元の肉体を取り戻すための工程として、大会後にラビを探すことに決めた。

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