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第1185話




 「消えた、と」


 「悪い………」




 ようやく帰ってきたかと思えば、そこにミレアの姿はなかった。

 やはり気まずくなって寄り道をしていたらしいが、まさかいなくなるとは思わなかった。




 「俺が目を放したせいで………」


 「謝んなよ。あいつもガキじゃねーんだ。きっとなんか理由がある」




 いくら最近様子がおかしいと言っても、黙って消えるなどという暴挙には出ないだろう。


 だが、思い詰めていたことは確かだ。


 消えたわけじゃないにしても、色々と悪い妄想が頭をよぎってしまう。

 冷たい汗に、思ったより自分でも焦っていると気づかされる。


 


 「ケンくん。とにかく、遺跡に………………いっ………!?」




 足元が妙に冷える。

 周囲の冷気が、ゆっくりと集まってくる。

 この感覚には、覚えがあった。




 「っ………この冷気は………」




 管理者が言っていたことを思い出した。

 雪だるまを解放した、と。

 今まで出てこなかった原因がその足止めのあるのなら、これは当然の展開だ。




 「ちくしょう………こっち進めねぇとマズいか?」



 一旦全員を冷気のカーテンで包み、少し離れる。

 すると、以前見たものと全く同じ巨大雪だるまが飛び出してきた。




 「おォ。雪だるまじゃねェか。となると、ちィとばかし張り切らねェとだなァ」


 「………は?」




 『ノーム』の不穏なセリフを聞いて、リンフィアやコウヤと顔を見合わせた。

 もしやと思ったが、確かめるまでもなく、それはやってきた。




 「………………………………ったく、空気読めよ。クソトカゲ共………」




 しかし、幸運なことに、今の俺たちにはノームもついている。

 万一にも死ぬことはないだろう。


 三重トリプルのクインテットブーストは使えないが、自力が上がった今なら、それ以下でもなんとか勝てる。



 そう思っていた。






 「………ケン君。少々悪い知らせがあるのですが」


 「どうした?」


 「誰かがこちらに向かっている様です。それも、結構な数で。多分1人は、『ノーム』の彼に匹敵します」



 「!! バルバドの奴かッ!!」




 『ノーム』の目の色が変わった。


 すると、メイスを硬く握りしめ、鬼の形相で一直線に走って行った。

 どうやら、よっぽど因縁のある相手らしい。




 「バルバドって確か………………追った方が良さそうですね………」



 何か言いたげにこちらを見ながら、そう呟くルージュリア。

 心配せずとも、意図は察している。


 さっきの今じゃ、『ノーム』が油断するかも知れないという心配は拭いきれない。


 誰かがついておく必要がある。




 「頼む、ルージュリア」


 「ですが………」


 「元々『ノーム』がいるのはただのラッキーだし、お前は戦えねーモンだと思ってたから大丈夫だ。むしろ、引き付けてくれるだけありがたい。たから、向こうは頼む」




 「………お任せを」




 ルージュリアは頷くとすぐさまノーム達ののところへ向かう『ノーム』を追いかけて行った。


 

 さて、問題はこの地竜だ。

 行かせはしたが、余裕ではない。

 むしろ、1人足りないことでかなり危険な状況だ。



 しかし、こうなった以上下手に逃げることも出来ない。

 振り切るにせよ、倒すにせよ、ここはまずぶつかる必要がある。




 「よし、お前ら…………」


 「ケンくん、あれ!!」




 興奮気味でそう叫ぶリンフィアは、どこかを指差していた。

 すると、




 「金ロールちゃん!?」




 遺跡の方角から、ミレアが戻って来ていた。




 「ミレア、お前………!!」




 色々言いたいことはあるが、ひとまずホッとした。

 見た感じ、怪我も何もなさそうだ。


 戦った形跡がないので、おそらく消耗もない。

 これでとりあえず、予定通りにはなった。





 「おい! 早くこっち来いよ!お前が ずっと戦いたがってた地竜、が………………」


 「………」





 なんだ。

 なんの胸騒ぎだ。



 異様な緊迫感に、息苦しさを感じる。

 恐怖だろうかと己に問いかけるが、返事は否の一言に尽きる。

 強がりでもなんでもない。


 恐怖を感じる対象は、まだ出来上がっていないのだから。




 そして何より——————







 「………!!」




 その地竜すら、何かを感じ取って黙ってどこかを眺めていた

 まるで凪のように、ここは静かだ。


 そして波を止め、静寂をもたらしたのは、1人しか考えられなかった。




 「………………お前、何があった——————っ!?」




 いつの間にか、目の前まで来ていたルージュリア。

 地竜達も再び動き回り、時間が動き出した様に感じる。


 しかし、なにか地竜達の様子がおかしい。

 まるで、怯える様に慌てて急ぎながら、捕食を開始し始めた。




 「………ケン君。わかったんです」


 「っ………!!」




 今、声を聞いて確信した。

 恐れているのではない。


 俺は今、畏れているのだ。

 この何か、大きな存在となった俺の仲間に。




 「ダンジョンって、元々牢獄だったみたいなんです。悪を閉じ込め、“罰” を与える存在。その檻の中で悪は暴れながら目覚めの時を待ち、そして………檻を破ってその身を乗り出してしまいました」


 「檻………?」


 「私が持っていたのは、その檻………裁定し、罰を与える側の力………………ではありませんでした。今まで使っていたのは、本来の力を封じるために付属されていた、罰の神の力が持つ絞りかすなんです」


 「!!」




 それはつまり、ミレアが手に入れた勇者のレッドカーペットは、罰の神の力ではないということ。


 確かに、ミレアの能力は神の権能にしてはあまりにも小さすぎた。



 おそらく、今まで使っていた【裁定】などの罰の神の力は、使えたというよりは、使えてしまったという方が正しいだろう。

 その封印のために使われていた罰の神の力に触れたため、中途半端に力が使えたのだ。


 そして、内側にあるであろう封じられていた方の力は、そのまま封印のせいで使えなかったということ。




 「………………じゃあまさか、その封印ってやつは解けたのかよ?」


 「はい。力を得て、【裁定】の効果が強まったので、それを使って封印されていた力を本来の姿に戻しました」




 力を得た………?


 妙な言葉にひっかった。

 まるで、強くなったかの様な言い草。


 だが、何故か確信が持てる。

 これは決して、デタラメなどではない。




 「その、力ってのは——————」




 問いただそうと向けた眼が、真っ直ぐに合った。


 いつもと変わらない、澄んだ瞳。

 見慣れたはずのその眼を見る俺は、気がつけば神威を使ってその眼を眺めていた。



 そして、その奥に、確かに気配を感じた。


 夥しい数の、ノーム達の姿を。


 気づいたら、俺はそれを尋ねていた。






 「お前………取り込んだのか? ダンジョンに吸収された、ノーム達を」


 「「!?」」




 リンフィアもコウヤも、そして俺も、その詳細は理解していない。


 しかし、無言の肯定をしてみせたミレアを見て、その意味は理解していた。


 領主がやろうとしていた様に、ノーム達の命を自分の力として吸い取ったのだ、と。





 「彼らは望んで、私の力になってくれました。だから、今からそれをお見せします。私が得た、本当の力を」


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