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第1179話




 「ミレアちゃん、私は………」






 リンフィアはただ助けたい一心だった。


 手柄を奪いたいわけでも、ミレアを見下しているわけでもない。

 目の前で危ない目に遭っているミレアを放っておけなかったのだ。


 そんなことは、リンフィアを知っている者なら誰でもわかる。

 迷うまでもない。




 だが、今のミレアには、そういったものは一切映っていなかった。

 今のミレアには、ただリンフィアが獲物を掻っ攫っていったという結果しか見えていない。






 「私は一人でも勝てました!! そんなに信用ないですか!?」


 「け、けど………!」


 「私だって、この3ヶ月で強くなったんです!! 私は、私は………!!」





 プツ、と。


 突然、糸が切れたように怒鳴り声が止み、怒りがおさまっていく。

 紅潮していた顔が、みるみる青ざめていく。






 「ぁ………わた、し………また………………」


 「ミレアちゃん………」





 そっと手を差し出そうとするリンフィア。



 しかし、手が前に出なかった。

 言葉も、喉の奥でつっかえた。



 果たして、自分がそれを言ったところで慰めになるのかという不安が、リンフィアにまとわりついていた。





 「っ………とりあえず、まだ2人とも戦っています。加勢しに行きましょう」


 「………ええ」





 リンフィアは、すぐにケンのいる場所へ飛んで行った。


 ミレアは後を追うつもりだったが、ふと足を止め、コウヤのところへ向かった。













——————————————————————————————














 「ぐおぉ………いや普通に強ェ………」







 コウヤは、普通に苦戦を強いられていた。


 素人とはいえ、敵の技術は経験値によってAランク相当まで引き上げられている。

 高いステータスも相まって、隙が出来ていても力技でカバーされてしまうのだ。




 「くそッ………このチンピラが………!!」


 「ハッ、好きにほざいてろ!! お前のその軽い剣、俺がへし折ってやるよォ!!」




 一撃一撃を受け止めるたびに、歯を食いしばってその衝撃に耐える。

 受け流す技術面に、まだ少し肉体が足りていない。




 「はーあー、何つーか………普通修行したらもっとすんなり勝って実力を実感するモンなんだけどなぁ」


 「ごちゃごちゃ、うるせぇ!!」




 僅かに溜めた一撃を、ノームはコウヤの脳天目掛けて振り下ろした。




 「ぃい!?」




 大剣同士がぶつかり、鈍い金属音があたりに響く。

 その直後、




 「ぅぉお!?」





 地面がせり上がり、コウヤは上空へ吹き飛ばされた。





 「おわぁ!? って、やば………」




 わかり易い敵の笑顔と、上空からでもわかる地面の蠢き。

 地面が、槍のように変形して——————







 「ッッ………!!」





 


 瞳の色が、淡い黄金へと変わる。


 やや残っていた余裕を押さえつけ、真剣に向かってくる土の槍の位置を確認。


 剣を握り、神威を纏わせる。




 一呼吸。




 それは、瞬きの間のみに許させる絶技。









 「百乱ッッ!!」










 「なァ、ッ!?」




 向かっていた土塊に向かい、百の斬撃を射出。

 一つ残さず斬り刻み、木っ端微塵に粉砕した。





 「うぉー、危ねぇな」


 「まだそんな隠し球持ってるたァ………油断できねェガキだ」


 「はは、俺って色々できちゃうからさ、アンタもう降参しない? どう?」





 おちゃらけた様子のコウヤを見てキッと睨みつけるノーム。

 しかし、どうやら怒っている様子ではない。





 「降参だと? 冗談じゃねぇ。俺はな、お前みたいな生意気なガキをぐっちゃぐちゃにするのが生き甲斐なんだよ」


 「………俺みたいな………ガキ?」





 反応を見せるコウヤを見て、ノームは楽しげに語り始めた。




 「そうさ、俺たちは管理者様の元で合法的に犯罪が許されてる。だから、邪魔なガキを始末するときはそりゃァもうたまんねぇ………………ぁ?」




 目の前にいる敵の異変を感じとり、即座に話を止めるノーム。

 圧迫感こそ感じ取ってはいたが、ノームはその異変に気づくことはなかった。


 それは、彼とっては持たざるが故。



 しかし、より濃い黄金へと変わるコウヤの瞳だけは、目には見えていた。





 「………来い」




 コウヤは、手元に本を呼び寄せた。


 そこにあるのは、小さな羽ではなく、大きな翼を携えた空を飛ぶ本であった。




 「最近さ、この本浮くようになったんだよ」


 「は?」




 コウヤは穏やかに、緩やかに話し始めた。




 「金髪曰く、もともと物質じゃなくて力の塊だからみたいな? 使ってる間は誰かに持ってもらわないとだし、結構便利なんだ、これが」


 「わけのわかんねぇ話してんじゃねぇよ」


 「いや、ほんとに便利だわ………こんだけキレてるところ、あんま見られたくねぇから——————さ」





 圧迫感は一転、恐怖へと変わる。


 神威により、何も感じ取っていなかったノームは、受け取った殺意の重さでようやく気がついた。


 目の前にいる、獰猛な獣の姿に。




 「くっ………来るんじゃねぇッッ!!」




 魔法、能力、その全てを使い、全身を守る防壁を作り出した。

 もともとは素人。

 恐怖に怯えてしまえば、借り物、なけなしの戦略すら消え失せ、本能が示す目的への直線的に向かっていく。



 そして、本能のままに作り出したその『壁』は、他の一切の意味が、利が消え、しかし強固なものとなる。



 だが、そんなものに、意味はなかった。





 「千斬」





 斬撃の群れが、静かに壁を通り過ぎていった。



 百を超え、千の斬撃が放たれる。

 その密集した斬撃の塊は、切り傷というより、まるで千切れた様な跡を残していった。



 岩の壁は引き裂かれ、中から無数の切り傷を刻み込まれたノームが現れる。


 息はある。

 しかし、もう既に意識はなかった。






 「………あー、やっちまった………っとと………やっぱこれ消耗が激し——————」





 踵を返し、ケン達の元へ帰ろうとしたコウヤは、思わず絶句した。

 マズい、と。



 翼の使用による疲弊、それと戦闘への集中のせいで、完全に見落としていた。

 誰かが来ているなんて単純な考えが、浮かんでいなかった。





 「………コウヤ君、それは………」




 ミレアの視線は、思い切り浮いている本の背にある翼に向けられていた。

 ダラダラと汗を流すコウヤ。



 よりによって、ミレアに見られてしまった。

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