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第1178話



 数分前、ミレアは冒険者と同等の力を持った敵を相手に、一切引けを取ることなく戦い続けていた。


 やはり、金属片を利用した戦い方はかなり有用だったらしい。


 王の力を使った怒涛の攻撃は、相手に反撃の隙を与えなかった。





 「クソッ、反則だろ………!?」




 地面を盛り上げ、身を隠しながら生成した石の礫で雷を相殺する。

 凄まじい数の魔法が、戦場に飛び交っていた。




 「だったら、こいつはどうだ!?」


 「!」




 妙な気配を感じ、ふと頭を上げるミレア。


 するとそこには、今の戦いで砕けた岩を集めてできた、小さな隕石が生成されていた。





 「潰れてしまえッッ!!」


 「………」





 指揮を取るように、両腕を上げるミレア。

 意識を集中させ、魔力を支配する。


 指揮………そう、指揮だ。


 頭の中に、具体的なイメージを浮かべる。

 指揮をするように魔力を動かし、構築し、並べ、そして注ぎ込む。





 「ッッッ!!!」





 数十本の雷の槍。


 目の前に展開したそれを一つ残らず隕石に向ける。


 取るに足らない小さな魔法。

 圧倒的な火力を前にすれば塵に等しい。



 しかしその塵は、王の力で山となる。




 「射出——————」




 圧倒的に質量の塊に、無数の槍が突き刺さる。

 そして、




 「炸裂ッッ!!」





 大量の魔力を含んだ槍は、隕石の中心で諸共四散した——————







 (——————馬鹿が。調子づきやがッ………)





 完璧な不意打ち。


 元いた場所に土人形を置き、ノームはミレアの背後に回っていた。

 勝ちを確信し、つい笑みをこぼす。


 が、





 「そこ、踏みましたね?」


 「は——————」




 ノームはハッと思い出した。



 それは、管理者から既に聞いていた話。


 ミレアは、王の力を持っている。

 つまり、感情を見る目を持っていると言う話。



 騙し打ちは、通じない。





 「くッ………!!」





 足元には、ミレアが散らばらせた金属片。

 属性は、雷。

 結末は目に見えている。

 回避の時間はない。


 故に、




 「!!」




 ノームは、全身に魔力を密集させ、全力で防御をした。

 すると、




 「くッ、ぉ………オ………………………………?」


 「………!! しまった………」




 想定よりもずっと低いダメージに、ノームが困惑している間、ミレアはすぐにその場から離れた。


 答えはすぐにわかった。





 「………………なるほど。お前、()()()()()?」


 「!!」





 図星を突かれ、つい険しい顔になるミレア。

 視線は、散らばった金属片の周辺に向かっていた。


 もう、魔力がない。



 本体のミレアではなく、その周囲の環境に存在する魔力が空になった。





 「………やっぱり、まだ私には………………!? っ、痛っ」




 眼球の奥が、ズキンと痛む。

 ほんの一瞬眉を顰め、後は億劫そうな顔をして、()()を待った。



 ………来た。


 




 ——————そうだ。足りていない。





 頭の中で声が響く。

 声が日に日に大きくなっていく。


 3ヶ月前、ずっと遠くに聴こえていたそれは、今となっては耳元で聞こえる。



 足りない、足りないと囁き続ける。





 「っ………!! ………うるさい、後にして………」






 ——————焦っているな? ふふふ………実に愚かしい。言っただろう、お前にはまだ早いと。たった3月で使えるほどその力は安易なモノじゃあない。






 「うるさい………うるさい………………!!」





 ——————何故受け入れない。わかっているだろう? 好き勝手動いた方が、お前は間違いなく………






 「うるさいッッッ!!!」




 「!!」




 声は、もう止んだ。





 「よォ、もう気は済んだか?」





 ニヤニヤと笑みを浮かべるノーム。

 ようやく落ち着きを取り戻したミレアは、すぐに構えて戦闘態勢に戻った。





 「ハァッ………ハァッ………………ええ、続きを………」




 しかし、忘れてはならないことがある。

 それは、今の今まで、ミレアは大きな隙を見せていたということ。


 戦闘は、続いていたということ。




 「生憎、続きを待つほど甘くねぇ」


 「っ、ぁ、は………!?」




 声に気を取られ、目を使う暇さえなかった。

 振り向いた先の真正面、岩の礫、それはもうすぐ目の前に。



 「…………ッッ!」





 目は、閉じなかった。


 闘争の日々は、間違いなくミレアを戦士に育て上げた。

 それは、この国に来てから始まった話ではない。


 ケン達と共に学院で過ごし、旅をして、ここでも共に過ごすうちに積み重ねたモノ。



 だがその成長は、ミレアの脳裏に、強い感情を植え付ける原因となってしまった。





 「ッァア!!!」




 黒い影が、岩を飲み込んで消えていく。


 よく知った魔力が、鼻先で弾けて、消えていく。





 ドクン





 心臓の音が跳ね上がる。

 見たくないと、心が叫ぶ。


 しかし、ミレアの目は開いてしまっていた。

 いくら叫ぼうが喚こうが、もうどうしようもない。



 既に、目に焼き付いている。


 『()()()()()()()()()』リンフィアが、己より優れた力を手に、目の前に立っているその姿を。






 「………魔法使い、ですか?」


 「グロッゾ………!? 一体何の冗談——————」






 ゾッ、と。


 突然現れたリンフィアから噴き出す殺気を浴び、ノームは完全に硬直した。





 「じゃあ、気は失えるかもしれませんね」


 「ぁ、………はッ…………ぁ」





 剥き出しの怒りに呼応するように、リンフィアの魔力が激しく蠢く。





 この形態………魔王形態の強みは、たった一つ。


 圧倒的な『強度』だ。

 フィジカルの異常な上昇と、魔力による肉体強化の効率が、数段上がることに強みがある。



 共に魔力・魔法を使うことに長けた種族である妖精と魔族。



 妖精が理を極めたのだとすれば、魔族が極めたのは力。


 さまざまな種族に変化する第一進化形態から一転、第二進化形態はその力のみに特化した進化。



 しかし、その尖り具合は、まさしく異質。



 ノームとの間にある力の差を、軽々と飛び越えていった。






 「眠っていてください」


 「!? リンフィア、待っ…………」



 「ぃ…………ひ………!!」




 恐怖で反応が完全に遅れたノーム。

 魔法を使う余裕さえなく、一瞬で吹き飛ばされ、意識は暗転した。







 そして場面は、現在に至る。


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