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第1169話





 「三級魔法の同時使用………成長を感じるな」


 「誰目線だよ」


 「俺目線だ」





 このコウヤのツッコミも慣れたものだ。




 「けど、強くなったってのは間違いないよな」


 「ああ」




 息一つ切らさないミレアの姿を見て、しみじみと頷いた。


 余計な大技は使わず、最速で、最効率で敵を仕留める。

 3ヵ月ちょっと前まで集団で戦っていたB級を相手にこれができるのなら、もはや言う事はない。



 修行は大成功だ。




 「外から連中の邪魔も結局は入んなかったし、これやって成功だったなー」


 「ああ、そういや組織の連中結局襲ってこなかったな。なんでだろ?」




 はてと首を傾げるコウヤ。

 そういえば、この作戦に及んだわけが効率以外にもあると言うことは話していなかった。




 「きっと、お告げの内容が組織の連中にも適応されたんだろうぜ。この修行はそれも考えてやったんだ。もしかしたら、あいつらモンスター襲えないかもだったし」


 「うっへぇ、そこまで考えてたのかよ。変態の域だな………そうだ、お主に変態参謀の称号を与えよう!」


 「テメェマジ引き摺り回すぞ」




 と、言ったものの、久々の解放で妙なテンションになるのはわかる。

 この3ヶ月を思い返せば、休んでいた記憶があまりないとあたらめて重い。




 「まぁ今日は多めに見てやろう。記念すべき久々の娑婆への………」


 「うぉー!! モンスターがいない!! ついにやっと終われるぜクソボケが!!」


 「落ち着けよ」




 我先にと外へ向かっていくコウヤ。

 すると、




 「うぉお、お、おお!?」


 「!? なんだ!?」




 岩山の様子がおかしい。

 何か、視界がぶれていく。


 点滅するように、岩山と別の景色が交互に視界に映り始め、気がつくと、




 「おぉ!? 雪山になった!? ………けどどうでもいいか」




 岩山だった場所は、雪山に変わってしまった。

 コウヤの反応は薄い。




 「森の時と同じですね」




 淡々とそう呟くリンフィア。


 こちらもさほど反応を見せない。

 ()()()()なせいか、みんな驚きは小さいようだ。




 「だな。さっきのヘルハウンドを倒すか、ここいらのモンスターを全部狩るか………知らねーうちに条件を満たしたってことか。あ、攻略印は?」


 「ここです」




 ヘルハウンドのいた場所から、ミレアが攻略印を拾い上げていた。

 条件がどうあれ、あれを倒したのが引き金になったと言うことは確からしい。


 儲けもんだ。




 「そんじゃポーチに入れといてくれ」


 「はい」



 修行をしている間に、ポーチはミレアに持たせることにした。

 一応、重要なものがそこそこ入っているので、後方で戦うミレアに持たせるのがベストだと思ってのことだ。




 「いやー、棚ぼた棚ぼた。これで攻略しなきゃなんねー箇所が減ってくれたぜ」


 「残りは雪山、砂漠、遺跡………でしたか。どこから周りますか?」


 「そうだな………雪山はアイツがいるから後回しにするとして………………」




 「「「………」」」





 ミレア達に目配せをすると、皆わかってると言う様子で頷いてきた。


 どうやら、皆気づいているらしい。

 当然、会話をしているルージュリアも、自然な様子ながら気づいている。



 ここから南東、少し離れた位置からこちらを伺っている奴がいる。


 数は一人。





 「あちゃー、侮ってんね。誰が行く?」


 「もう行ってますよ」




 グローブを見せつけるように振りながら、リンフィアはそう言った。

 その直後、




 「!!」




 その方角から、大きな爆発音が聞こえた。


 微かに神威を感じる。

 どうやら、リンフィアが魔力の代わりに神威を弾にして放ったようだ。


 リンフィア達の影は、とっくにない。





 「はっや」


 「行かないのですか?」


 「うわお前、わかってるくせに聞くんじゃねーよ。それ傷つくぞ」




 その場に止まっている俺にニヤニヤしながらそう言ってくるルージュリア。


 そう、俺の経験値集めはまだ終わっていない。

 それ故に、俺だけ3ヵ月前から、一切強さが変わっていないのだ。




 「簡易魔法具使ったサポートも、スピード勝負じゃ役に立たねー。しばらくは完全にお荷物だな、俺」


 「そうですね」














——————————————————————————————














 「なんだ………今なんの魔力も………」


 「ああ、やっぱり感知出来なかったんですね」


 「!?」





 爆発から間一髪逃れた黒衣の男の背後に、一瞬にして回り込むリンフィア。

 男はギョッと目をも開きながらも、瞬時に反応して攻撃を仕掛けた。


 しかし、





 「ッ………何!?」





 横薙ぎの一撃が切ったリンフィアの肉体は、一瞬にして液状になっていった。




 「スライムの擬態能力です。咄嗟だと案外わからないでしょう?」


 「クソッ、折角背後を………」




 爆風の中を今度こそ突っ切ってきたリンフィア。

 無理な体制のまま、男はリンフィアの首を狙って剣を振るうが、リンフィアは翼を生やし、空中で止まりながら軽がると剣を躱した。





 「翼………ァあ………ッッ!? っ、ぐ、ぉ………!?」





 突然の衝撃に、男は目を白黒させていた。

 ごげた臭いと衝撃音、男が爆発に気づいたのは、少し後のことだった。




 「翼もこれも知らないなんて………リサーチ不足ですよ、お兄さん」




 スライムの影に隠していたもう一発の神威弾を炸裂させたリンフィア。

 男は思わず剣を地面に落としていた。




 「頭上、注意してください」




 浮遊しながら後方に逃れるリンフィア。


 頭上には、抜刀の構えを取るコウヤの姿が。


 一方、男には回避手段はない。

 目には、諦めが映っていた。





 「………馬鹿な。三月ほど前はここまで………」


 「トドメ、もらうよ」





 男は斬撃の波に飲まれていった。

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