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第117話


 「ふぅー………」


 「………」


 ラビと黒ラビは互いに機会を伺っていた。

 動くきっかけを待っていたのだ。

 

 「………」


 「………」


 間合いは約2メートル。

 お互いに飛び込めばどちらかの攻撃は当たる。


 にらみ合いは長くは続かず、それは唐突にやってきた。


 「………!」


 ラビの頰から汗が滴り落ちて行く。

 ゆっくりと、頰から顎の先に伝っていき、重みに耐えきれなくなった雫が、



 ポタッ



 と、零れ落ちた。


 「「!!」」


 2人は同時に反応し、全身に込めた力を一気に解き放った。



 「やァアアアアア!!!!」


 「………………!」


 

 地面を蹴り、ただ相手に向かってまっすぐ飛んで行く。

 黒ラビの方がほんの僅かにタイミングが早かった。

 黒ラビは2歩目でしっかり踏ん張り、肩と腰をしっかり入れてまっすぐダガーを突く。

 だが、


 「!?」


 遅れたはずのラビの方が早く攻撃を繰りだしていた。

 

 「ああああああ!!!」

 


 黒ラビより少し早く地面に足をつけ、ダガーの間合いより少し遠目の位置からダガーを振るう。

 当たらない距離だ。

 本当なら。


 ダガーに魔力が集まり、光りは刃と化す。



 もらった。



 そう思った瞬間だった。


 「なっ………!」

 

 黒ラビはダガーで()を受け止め、ダガーはそれに沿ってラビへと向かった。


 「くっ………」


 ダガーはラビの腕を斬り裂いた。

 辛うじて致命傷を避けたが、決して浅くはない。

 ラビは距離を取るために剣を振って、黒ラビを向こうへ飛ばした。



 「はぁ、はぁ………」


 ラビは俺が渡した回復魔法具を使って傷を癒す。


 「でもなんで………あ!」


 そう、レベルだ。

 慣れたダガーとそうではない剣ではどちらが上か。

 そんな事はいうまでもない。


 「うかつだった………」


 今後は使うのを躊躇うだろう。

 それに、


 「いたかった………」


 ラビは微かに震えている。

 ラビにとってここまでの傷はこれが初めてだ。

 流石に恐怖感を覚えたらしい。


 だが、ラビはただの子供ではない。

 人ならざる人、生物迷宮だ。

 そう簡単に立ち止まることはない。


 「とりあえず、ゆっくりなれないとな」


 ラビは、相手にダガーを向けて、再び気合いを入れ直した。









———————————————————————————













 リンフィアサイド。

 こちらは割と早い段階でこの修行法の効果が出てきていた。



 「【アイススピア】!」


 「【アイススピア】」


 先の尖った2つの氷塊が飛び合う。


 しかし、形はどこか不完全で小さめのサイズだ。



 「くっ………」


 だが、徐々に出来始めている。

 詠唱の省略だ。


 「力が溢れる………私、どんどん強くなってる!」


 魔法の熟練度の上昇も高くなっている。

 連発すればするほど高くなって行く。


 「今度こそ………!」


 頭の中で魔法の理論を組み立てる。

 魔力を流し、詠唱による自動構築では無く、自力での魔法の構築。

 自転車や楽器の様に、慣れるまでまともに使えたもんじゃない。

 その上その難易度はそれらと比べ物にならない。

 だが、コツさえつかめば、



 「アイススピア!」



 魔力に命令が伝わり、氷塊を創生する。

 その形は先の鋭い巨大な氷塊だ。

 氷塊は黒リンフィアに向けて飛んで行く。


 一方、黒リンフィアのアイススピアはまだ未完成だ。

 あちらはまだ、リンフィアの成長を反映出来ていない。


 未完成のアイススピアはリンフィアのアイススピアに小さく傷をつけるだけで精一杯と言った感じだった。

 リンフィアのアイススピアはそのまま黒リンフィアへ向かい、衝突した。


 「やった!」


 ようやく初ダメージ。

 だが、これはまだ五級魔法。

 ダメージは決して大きくない。


 「………」


 黒リンフィアはむくりと起き上がると、胸元の回復魔法具に魔力を流し、傷を癒す。

 それが終わると、杖をこちらに向けた。


 「アイススピア」


 「!」


 通常サイズのアイススピア。

 こちらも成長が追い付いた様だ。


 リンフィアは咄嗟に同じのをぶつけて相殺する。

 すると、


 「………!」


 割れた氷の後ろから黒リンフィアが現れ、杖を振りかぶる。

 突然の攻撃にリンフィアは一瞬遅れを取る。

 一撃目、二撃目まで捌くと、バランスを崩し、そこに横薙ぎの攻撃が腹に入る。


 「ぐッ………ぁ」


 この連撃は俺が教えたものだ。

 リンフィアもそれに気がついていた。

 でも、対処出来なかった。

 それはやはりあのアイススピアだ。


 「ゲホッ………」


 リンフィアは横腹を押さえながら、回復をする。


 「っ………痛いなぁ………でも、通じるんだ。私に当たったってことは向こうも当たる………新しいことをして虚をつく。うん、これしかな——————ッッ!!」


 黒リンフィアが接近していた。

 リンフィアは片膝を立てて攻撃を受け、それを上に弾く。

 だが黒リンフィアは態勢を崩さずにすぐさま別の攻撃に入った。


 そして、リンフィアはふと閃いた。


 「ガスト!」


 黒リンフィアの背後で小さく風が捲き上る。

 これは失敗。

 だが、その瞬間、黒リンフィアの意識がそちらに向き、小さな隙が生まれる。

 ハッと気がついた黒リンフィアは、攻撃をやめ一度態勢を整えた。


 「少し集中を欠いたってことはやっぱり、弱点は一緒かぁ。よし、まだまだこれから!」


 そして再び魔法が飛び交った。

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