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第1162話




 あれから4時間、休憩を挟みつつ、一応通常の修行で羽の発現を試みるも、まるで手応えを得られなかったため、今日はここで打ち切りとなった。




 「上手くいかないもんだな」


 「さっきも言ったけどそう焦んなよ。俺の知ってる限り、1日で発現出来たのは白紙化以前の俺とリフィくらいだし」


 「えーマジか銀髪ちゃん。まさかの天才型かよ」


 「えへへ。みたいですね」





 まるで皮肉のない笑顔と共に肯定するリンフィア。

 コウヤもこれ以上何も言えないほどに屈託のない笑顔だった。


 まぁ、そもそも神威を使える人口が少ないのでこの数字もあまり当てにはならないのだが。




 「リフィ。ミレアの進捗はどうだ?」


 「うーん、神威の操作性はびっくりするくらい上達が早いので、そろそろ留められると思います」


 「へぇ、そいつは優秀だな」




 妖精王の羽から得たイレギュラーな神威だったので、少し心配していたが、問題なさそうだ。




 「つか、そのミレアは?」


 「まだもう少しやるみたいです。付き合おうと思ったんですが、拒否されちゃって………」




 やはり、完全に吹っ切れたとはいかないらしい。


 ああいう類いの焦りは、それなりに満足する結果が出ない限り解消される事はないだろう。


 自信というのは、自身の変化というよりは、積み重なった実績から実感するもの。

 ここで大物を倒すくらいの力をつけさせて、実際にそれをやってのければいいのだろうが、ここの大物となると相当の強さだ。


 一朝一夕とはいくまい。




 「まぁ、飯前にはやめさせるか………」















——————————————————————————————












 「ハァ………ハァ………」





 体力消費の激しい神威の修行。

 楽とは言うが、当然多少は苦しいものだ。


 しかし、ミレアはこれを全く苦としていなかった。

 それどころか、むしろ悦びを感じていた。




 「ハッ………ふふ………もう少し………っ」




 汗だくになりながら、少しよろけて膝をつく。

 流石にやり過ぎたと思ったのか、そのまま座って軽く休憩をし始めた。




 「………流石に、少し休憩しないと」




 全身が疲弊を主張するように、それは震えとなり、頭痛となり、発汗となり、ミレアに訴えかけていた。

 いい加減、ミレアも自分の限界は理解している。


 今まさに、そこに近い場所にいた。



 これ以上は効率を考えても無駄。

 疲労を残しすぎると、翌日の修行に支障をきたす。



 ほどほどがいい。

 それはわかっていた。


 しかし、


 


 (………いや、まだ——————)





 ——————足りない。もっと………もっと………!!





 「っ………!!」






 (ああ、まただ)



 何かが、ミレアの内で叫んでいた。

 己を蝕むように、日に日に増していくナニカの声。


 その声は、無視をするにはあまりにも大きい。


 自分の内にあるが故に耳も塞げず、叫び声はまるで止むことはなかった。




 ふと考える。


 以前は間違いなくこうではなかった。

 確かに、ケン達への劣等感は少なからずあったが、それでもここまで自分を追い詰めるほど余裕がなかったわけではなかったのだ。



 今の自分は、何かがおかしい。



 それは、ミレア自身も気がついていた。




 何故こうなったのか。


 いつからこうなったのか。


 この声は、一体どれほど大きくなっていくのか。




 漠然とした恐怖を抱きながら、ミレアが無自覚のうちに立ち上がっていた。




 それは一体、誰の意思だろうか。











——————————————————————————————












 その晩、皆が寝静まった頃に、俺とコウヤは修行を再開し始めたのだった。




 「男女で部屋分けといてよかったな。これで確実にバレることはない」




 魔法で土壁を作り、崖下を勝手に改装した。

 なかなか快適だ。


 まぁおかげで魔力がすっからかんなのだが。




 「………金髪。なんかいかがわし」


 「殺すぞ」




 きもち悪りぃ。


 まぁ、ふざける余裕があるだけ良しとしよう。




 「とりあえず、お前も理解しただろ。この修行、生半可な覚悟でやったら確実に気が狂う」


 「だな。だから今度は前もって覚悟して向かわなきゃだ」




 よし、と何度も口に出している。

 自己暗示のようなものだろう。


 やはり、不安がないわけではないらしい。



 だが、前回と違って今回はちゃんとヒントを与えるつもりだ。

 前回は耐えられるかどうかを測るという目的だったが、今回は違う。


 あくまでも目的は成功であり、恐怖に耐性を付けるというものではない。

 だから、早く出られるようなヒントを与える。




 「コウヤ。今度やるときは神威を意識しろ。あそこで動かせるものも、感じ取れるモノも、かなり限られてる。そこを忘れるな。目的と自分を見失わなけりゃ、成功するのは難しくないぜ」


 「ああ………一応善処しとく」


 「善処じゃなくて、絶対だ。俺としても長引かせたくはないからな」


 「絶対………んーじゃ、まぁ頑張るわ」




 適当な返事のわりに、しっかりとした面持ち。

 釘を刺さなくてもよかったようだ。




 「ふーっ………」




 深く息を吐き、意識を集中させる。


 自己暗示、鼓舞、そう言った類いの何かで、少しでも己を奮い立たせている。


 不安は拭いきれていないが、大事なのは成功すること。

 多少無茶でもいい。



 ここを抜ければ、全てうまくいく。




 「もう何個かアドバイスだ。いいか、羽を生成する場所は、ほんの少し違和感がある。ただこいつはマジでわかりにくい。根気よく探れる」


 「違和感ね………わかった」




 俺に出来るのはここまで。

 後は全て、コウヤ自身が解決しなければならない。




 「じゃあ、始めるぞ」


 「了解………!!」




 こうして、コウヤの意識は再び暗闇の中へ沈んでいった。

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