第1160話
「ふっ………ぅ、ぐぬ………ぬ………」
はっきりとわかるコウヤの苦戦模様。
ついつい笑ってしまうほど、明らかに力んでしまっていた。
「姿勢が崩れるほど力んでもしかたねーぞ。もっと背筋伸ばせ」
「しっ、仕方ないだろ!! これむずいんだよ! どんだけ難しいかわかるか!?」
「知らねーなぁ。ほれ」
息をするように、自然体で気を抜いたまま、しれっと羽を出して見せた。
「あぁ!! 俺ヤダこいつ!! めっちゃぶっ殺したい!!」
「一回二人掛で殺せなかった奴が何を言ったところで、それは所詮戯言なんだよバーカ! うはははは!!」
「お前ほんとぶっ殺すぞ!!」
と、苦戦しているが、ミレアの方はどうなっているのだろうか。
一応、基本をを理解しているリンフィアに指導を任せているが、今思えば指導なんかした事が無かった気がする。
「………ちょっと不安だな」
向こうを見にいった方がいいだろうか。
「おい、っ………どうだ!? 」
「ダメ。もっと柔らかくしろ、一点に集中させ過ぎ」
「クソこいつ………!! アドバイスが的確なだけに言い返せない………!!」
この距離からでも聞き耳は立てられる。
どんなことをやっているのか、少し聞いてみる事にした。
「………………」
あ、ダメだ。
後悔しそう。
「どうしたよ金髪。盗み聞きか?」
「やめとけ」
「会話してくれよ」
男子諸君、女子しかいない場の会話を聞かないほうがいい。
どのジャンルに転んでも大体後悔するぞ。
と、どこかの誰かに言いたい俺であった。
まぁ、概ね指導は出来てたので、こっちに集中して良さそうだ。
「ちょっと休憩っと」
近くのちょうどいい大きさの小岩に座り込むコウヤ。
汗の量がかなり多い。
もうかれこれ1時間経つが、まるで進捗はなかった。
このままでは体力が減るばかりだろう。
少し、教え方を変えるべきだろうか。
「つか、全然コツも掴めないのか?」
「ああ、さっぱりだ。そもそも、この神威ってのが良くわかんないんだよな」
そう言いつつ、手のひらで神威を出し入れして見せている。
操作性は問題なさそうだ。
「なんか無いのか?」
急にざっくりと聞かれた。
「なんかとは」
「いや、共通のコツとか」
「逆にそこまで自在に操作できて留められない意味がわかんねーんだよな………本に載ってたりしてな」
「いやいや、俺の攻略本そういう使い方じゃないから」
そう言いつつ本を手に取っているあたり、結構焦っているようだ。
まだ始めて精々1時間。
かかるやつは何日もかかるという説明はしておいたのだが。
「まぁ、ゆっくりやろうぜ」
「………ゆっくりは、出来ない」
突然、締まった声でコウヤはそう言った。
少し、空気が変わる。
焦りだけじゃない。
ほんの少しだけ、コウヤは怒っていた。
多分、俺に。
「金髪。俺もな、あいつらほどじゃ無いけど、お前がぶっ倒れた時は狼狽えたんだぞ。それこそ、イーボがやられた時みたいにだ」
「………」
言い訳のしようもない。
ああしなきゃ生き残れなかった、というのは俺のわがままだ。
俺がもっと強ければ、心配をかける状況すら——————
「ほらその顔だ」
「!」
「言ったろ。背負い込むなって。お前はどうせ、俺が強ければとか思ってるんだろ? 俺はそこが好かん」
図星を突かれて、少しバツが悪い。
なんとなく居心地が悪いような、それでもなんとなく理解されている事が嬉しいような。
少し複雑だ。
「いいか金髪。俺はちょっと頭にキてる。だから、この心配をお前にも味合わせないと気が済まないんだよ」
「?………て言うと?」
「お前、もっと効率のいい修行方を隠してるだろ。多分、結構無茶なやつ」
「!」
——————正直、これには感服した。
素直に驚きが表に出てきた。
自然と隠していたつもりだったのだが、まさかバレるとは。
そう、コウヤの言う通りだ。
方法はある。
「その反応、正解かな?」
「………ちょいちょいお前にはガチで感心させられるんだけど」
「おぉ、しとけしとけ。俺はスゲー奴なんだぞ。んで、なんで隠してた?」
ここは正直に言った方がいいだろう。
「この方法、精神的に不安定な奴は出来ない。かなり負荷がかかるからな。だから、間違ってもミレアにだけは使わせるわけにはいかなかった」
「………あー、金ロールちゃんか。確かに、ここ最近様子がおかしいよな。なんというか………力に固執してるというかっむぐ………!?」
普通の声のトーンで話出したので、俺は慌ててコウヤの口を塞いだ。
幸い、向こうで修行しているので聞かれてはいない。
「いいか、絶対知られるな。まだリフィならいいけど………いや、あんま使わせたく無いからやっぱダメだ。特にミレアには絶対バレるなよ」
「………」
黙ってゆっくりと頷いたので、とりあえず解放した。
さて、問題はここからだ。
「で、俺がその方法を使ってもいいの?」
「う………」
正直なところ、かなりの負担がかかるので、俺としては勧めたくない。
しかし、
「ハァ………………ダメっつっても、諦めねーだろ」
「おうよ。いいって言うまで嫌がらせしまくる」
「ははっ………終わってんな」
なんとなく、こいつは大丈夫な気がする。
うん、信じよう。
あれだけ言ったのだ。
こいつはこいつで、強くなりたいと思っているのだろう。
だが、それは決して固執では無い。
執念ではなく、信念だ。
俺はその余裕と本気に、かけてみる事にした。
「やるか。本当の裏ワザを」




