第1153話
「こいつは………厄介な事になったな」
望んでいたミッションだが、厄介な条件がついてしまった。
このミッションにおいて、現地民の力を借りず、完全に独力でクリアする事を義務付けられたわけだ。
正直、少し気が重い。
いざと言うときのためにルージュリアがいるという圧倒的に大きな保険があるからこそ、俺も前傾姿勢で狩りに没頭できたのだが、こうなっては慎重にならざるをえない。
が、ミッションの事を思うと、正直プラスに軍配が上がる。
多少危険でも、乗る価値はある。
「って事だからさ、ルージュリアは絶対に戦うな。“お告げ” が来てンだろ?」
「はい………原住民は、このダンジョンの攻略すること、その補助をする事が禁じられました」
「原住民は………か」
やけに制限をする範囲が広い。
少し、気に留めておこう。
今はそれよりも、近づいてきているモンスターに注意しなければ。
「おい金髪、近づいてきてんのに全然見えないんだけど!?」
「分かってる! 魔力を追え!」
「いや追うっつってもさ………」
ああ、わかっている。
魔力を追ってみるが、大きな魔力の塊が、前の方からゆっくりと迫ってきているだけで、影も形も見当たらない。
ここは戦地、そして現れる敵はおそらく軒並み格上。
目に見えないというだけでも、十分気が急いてしまうだろう。
だから、この中では索敵能力が最も高い俺がどうにか探らねば。
「地面の中でもなさそうです!」
この中で一番耳がいいリンフィアが言っているのだから、それに関しては間違いないだろう。
しかし、上空でも地下でもなければ、一体どうやって?
「………? なんか、急に寒く………………いや待て」
冷気が、俺たちのところに集まっている。
微かに、魔力を感じる。
恐らく、こいつがモンスターだ。
「集まり方が的確だな………音………は違う。魔力? いや、この辺の魔力濃度を考えるとそれも………………っ!!」
思い立った頃には、神の知恵を発動させ、魔法の用意を済ませていた。
右手の炎を作り出し、温度を体温程度まで下げる。
そして、俺の少し前にその低温の炎を残し、左手を使って全身を冷気で覆い、少し離れてみた。
すると、
「!………離れてく………それに、やっぱ集まってんな」
間違いない、どうやら熱源感知をしていたようだ。
となれば話は早い。
「ミレア、集まってくる冷気の塊がモンスターだ! 熱源を隠すためにコウヤとリフィの周りを氷魔法で覆ってくれ!」
「ああ、なるほど………やけに寒いと思ったら………」
魔法が使える俺とミレアで仲間の身を隠し、炎を使って冷気を一点に集中させた。
どうやら、うまく騙せたらしい。
「さて………何が出てくる?」
足元だけに漂っていた冷気が徐々に雪の塊となっていき、次第に膨らみ始めた。
さて、どう戦うべきか。
「炎魔法でかき消しますか?」
「それは修行になんねーだろ。どうせならでかいやつを………やつを………」
ミレアの方を振り返っていると、突然視界を影が覆った。
やけに大きな影が、どんどん伸びていく。
恐る恐る振り返ると、そこにはすでに6mを超えようとする巨大な雪だるまがこちらを見下ろしていた。
「で………でっか………つか………え? まじで? 金髪、これやばくね?」
止まらない。
10mを超えてなお、止まる気配はない。
15、20、25.........
「30m………くらいか」
「で、でも、ずっと前にこれよりも大きなゴーレムを破壊しましたし、それならきっと………」
と、リンフィアは言っているが、恐らく本人もわかっている筈だ。
あの時とは状況が違う。
あのゴーレムは、わかりやすい核と、破壊しやすい内装のおかげで破壊できた上、そもそも外で本体に勝ったわけではない。
今回は冷気になって分散できる、核のない敵が相手。
つまり、勝てない。
これは完全に俺の落ち度だ。
ミレアのいう通りにするべきだった。
「俺としたことが判断をミスったな………悪ィミレア」
「だったら、今はどうにかして逃げましょう。生き残れば、間違いなんてなかったも同然です」
「おぉ………お前も言うようになったな」
だったら今度はその汚名を返上せねば………と、意気込んでいると、
「おいおい、何勝手に話進めてんだ」
得意そうな顔で、わざとらしく攻略本を叩きながら、コウヤはそう言った。
「お前ら俺が誰なのか忘れちゃったのか?」
数秒前とは打って変わって、コウヤは意気揚々とそう言った。
そうだ。
そもそもこれはミッション。
ならば、攻略はコウヤの本分だ。




