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第1151話





 ミレアの目は使えなくなったが、俺は別だ。

 木の上にある異物をしっかりと捉えている。


 しかし、問題はあの木だ。



 ダンジョン由来のものは、設計上破壊が不可能。

 やろうと思えば壊せるが、神威を使った裏技なので、一瞬で倒れてしまう上に、出来て枝を数本と言ったところだ。


 なので、どうにかして全ての攻撃を交わしつつそこへ向かう必要がある。




 「どうしたんですか、ケン君」


 「いやさ、あの木の上に気になるモンがあるんだよ。確かめるためにも今から登って来る」


 「それでしたら、私が行きましょうか? 取ったところで経験値にもならないでしょうから、私がやったところであまり関係ないでしょう?」




 確かに、ルージュリアの強さなら枝に当たったとしてもゴリ押す事が出来るだろう。

 しかし、それはなんと言うか、男として情け無い気がする。





 「やだね。ンなこと頼むなんざ、情けなくて出来ねーよ。取り行って来る」


 「ですが、今のあなたのステータスでは一撃でも喰らえばひとたまりもありませんよ?」


 「じゃあ当たんなけりゃいいだけだ」




 じっと、木の動きを再度観察する。



 縦横無尽に動く木の枝。

 枝一本一本がまるで意思を持つかのように動き回り、それだけでなく長さも自在に変化する。


 かなりの速度で動き続け、その動きは5秒を一周とした規則的な動きになっている。


 そしてそれをさらに観察すると、所々に人が入る空洞が生まれているのがわかる。




 その空洞を潜り抜けて行けばいい。




 「………よし」




 一歩目、地面を強く蹴り、前へ飛ぶ。

 大きく飛んで着地した瞬間、右から枝が飛んでくるが、こいつは距離的にはギリギリ届かないかそのまま突っ切る。


 すると、




 「!」




 耳の横を枝が通り、風を切る音が焦燥感を煽る。


 が、動じる必要はない。

 俺は、それが当たらないことを知っている。




 「今度は上………」




 先程の枝の後ろから続けて飛んでくる太め枝にタイミングを合わせて飛び乗る。

 足場になるのは一瞬、その間にそれを蹴って、左斜め上空へ。


 すると、先程の無視した枝にがしなって足元に飛んでくるので、それに合わせて足を振り上げ、躱しながら身体の上下を逆転させる。





 「おーし、このまま——————」


 


 ピシッ、と。


 右上から高い音が聞こえる。

 目をやると、頭の中のイメージではあるはずのない位置に枝があった。



 動きが変わった?


 ………いや違う。

 速度が急激に上がったのだ。





 「ぁ………気をつけて下さい!!」




 緊迫感のある声が聞こえる。

 どうやらルージュリアも気が付いたらしい。



 しかし、問題ない。





 「………いける」




 シミュレートしていた動きを書き換える。

 経路もわずかに変え、俺はそのまま上を目指した。




 「っ………これは………!?」



 驚いた声が聞こえるが、流石に返事をする余裕はない。


 だが、確実に、この急激な木の動きの変化に、俺は対応していた。

 空中で身体を捻り、枝を利用して動きをつけ、足場のない空で自在に動き回る。



 なんとなく理解した。



 やはりこの木は、誰かにこれをさせるために設計されたものなのだろう。

 ならば、きっとこの上にあるものにも意味がある。





 期待を胸に、そのまま回避と移動を繰り返し、いよいよ幹のてっぺんに手を伸ばす。



 「!」





 そして、何かに手を触れた——————




















——————————————————————————————

















 「あ?」






 突然、視界が切り替わった。

 森にいたはずの俺だが、何故か平凡よく見る村にいる。


 慌てて手足や顔を確認したが、一応特に変なところはない。




 「………ぅ」


 「?」




 何か、聞こえる。

 そう思って振り返るとそこには——————













——————————————————————————————















 「!!………森?」





 気がつくと、鬱蒼とした木々の中で、何かを握りしめたままぼーっと突っ立っていた。


 辺りを見渡すも、村はもうない。

 それに、みんなの声が聞こえる。


 どうやら、元いた場所に帰ってきていたらしい。




 「………………」





 意識が飛ばされている時、最後に何かが見えそうだったが、結局分からず仕舞いだった。


 なんの音………いや、声だったのだろうか。

 あの時、確かに小さな気配は感じた。





 「あ………」




 また木に触れれば分かると思ったが、木はいつの間にか消えている。

 設置されたものだと言う推理が当たっていたとして、それが消えたのならば、俺は試練にクリアしたということだろうか。



 「大丈夫ですか? ケン君」


 「ん、ああ」




 声をかけて来るルージュリアと、その奥から走ってきてる3人を見るに、意識が飛んでいる間の時間の経過はほぼなかったらしい。




 「あら、何か手に入れたのですか?」




 そう言われれて、手に握っているものの事を思い出した。

 そっと手を開くと、そこには丸い透明な殻に包まれた、小さな石が入っていた。


 そして見た瞬間、ハッと気がついた。

 俺はこれに似たものを、何度も見たことがある。





 「これ………攻略印だ」


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