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第1149話




 この国に初めてきた時にも似たような光景を見た。


 しかし、そこはまだある程度区切りがあった。

 平原は平原、山は山と、エリアがきっちりと分けられていた。



 だが、これはどうだ?


 雪原の中に突然砂漠が混ざり込んでいたり、山の中に遺跡が所々散らばっていたり、全く一貫性がない。


 酷く現実離れした光景だ。




 「複数のダンジョンが混ざり合った結果なんだろうな。とんでもない光景だ」


 「それにしても広いですね。向こうの崖がすごく遠い………」




 目を細めてじっと先を眺めるリンフィア。

 確かに、微かだが端が見える。


 そのままよく見ると、向こう側にも、同じように森があって道のようなものがあった。

 森でなくとも、崖上の色々なところに、それらしい道が見える。


 だんだん読めて来た。




 「ルージュリア、地図あるか?」


 「地図ですか? ええ、こちらに」




 ルージュリアに地図を借り、2時間前………つまり最後に景色が変わった別れ道のところに目を当てた。


 そこに、思っていた通りのものがあった。





 「やっぱり………この道、ゲートだったのかもな」


 「ダンジョンゲートですか?」


 「ああ。多分、暴走に巻き込まれた周囲のダンジョンのゲートが、そのままここへ繋がるゲートに変わったんだろ。周りの崖上を見てみろ。それっぽい道が何個かある」





 岩山だったり、砂場だったりするのは、おそらく元のダンジョンがあった周辺の環境がそのまま出て来ているのだろう。


 まだ仮設だが、これは多分ほとんど当たりだ。





 「でも妙ですね。もうかれこれ1週間は馬車を走らせていますが、まだガイアナまでは2〜3日はかかるはず………それなのにゲートが繋がっているなんて………」





 ルージュリアの言おうとしていることはよくわかる。


 確かに異常だ。

 範囲が広すぎる。


 暴走が起きているのはガイアナ近郊程度と思ってたが、想像以上に広い範囲に影響が出ているらしい。





 「身体強化された馬車で2〜3日、だもんな。相当な範囲でダンジョンが表層化してそうだ」




 幸い、といっていいのか、探索のしがいはありそうだ。


 となると、気になるのはクリア報酬だが、そもそもゴールがあるのか分からない。

 それに、ミッションを受けていた他のプレイヤーや、関わったかもしれない現地民のことも気になる。


 これは、早速行って見てもいい………が、





 「確実に休憩できる場所は多分ここを最後にしばらく見つからなさそうだけど………」





 チラッと振り向くと、全員休みたそうにしていた。


 まぁ確かに、元々休憩所で休む予定だったのだ。

 今無理をする必要は特別ないだろう。




 「じゃあ、今日はここで野営するか」










——————————————————————————————












 「んー、まだ足りねーな」




 食事も済ませ、数人が寝静まった頃、誰もいない馬車の二台の上でウインドウを開いていた。

 まだ遠い目標を改めて目の当たりにし、思わずため息が出る。




 「例の『能力』ってやつか?」





 すると、夜更かしをしていたコウヤが下から話しかけて来た。

 夕食に食べた野菜スープの匂いが微かにする。




 「夜食か」


 「おう。お前の飯、美味いからな」


 「そりゃどーも」



 やっぱり、このメンツになるとろくに料理ができるのが俺かミレアくらいになってくるので、当番的に俺は毎回晩飯を作らされる羽目になっている。




 「制限付きで、本体から能力を引っ張ってくるだけでとんでもない量の経験値持ってかれるんだろ? 辛いねぇ」




 まるで他人事のようにコウヤは言った。


 まぁ、大抵のやつにとっては、これは他人事なのだろう。

 そこまでするのは余程強い固有スキルを持ったやつや特異点くらいだ。


 だが、




 「それだけ持ってくる価値があるんだよ。普通に経験値で得られる能力って、精々“剣術” みたいな戦闘アビリティと魔法くらいだろ? 神の知恵があれば、そんくらいならどれだけでも持って来れる」


 「うわー、出た出た。反則くさいんだよなぁ、金髪のその能力」


 「へっ、お前には理解できねーとこで俺も苦労を——————」




 ムッとなって顔を覗こうと身を乗り出した。


 そこで、少し難しい顔をしたコウヤの顔を見てしまった。

 軽口を飲み込み、荷台の上に戻って、そっと寝転んだ。



 今更だが、声色にも少し覇気がない。

 心配事でも………と思ったが、この間からこいつが危惧していることは、ひとつ確実にあった。



 隠しているつもりなのだろう。






 おそらく、コウヤと管理者には何か接点がある。


 ここ最近コウヤが忙しくしていたのは、ラビの関係者が訪問して、気を急かされたせいだと見た。




 馬鹿野郎め。

 俺が気づかないわけがないというのに。


 



 「おい」


 「ん?」


 「悩むのはお前の勝手だけどよ、お前ももう俺の仲間なんだから、そこは忘れんなよ」




 「!…………ま、精々覚えときますよ」




 本当にわかってるのだろうか。




 「そんなことよかさ、金ロールちゃんの心配はいいわけ? どっちかというと、あの子の方がやばめっしょ」


 「………ま、心配は心配だけど、あいつのはじっくり見てやらないといけねーからな。焦るだけ無駄だ」





 コウヤもやはり、ミレアの心配をしているらしい。

 お守りを渡してはいるが、心配は心配だ。


 それに、妙な胸騒ぎもする。




 「………まぁ」




 何事も………というわけにもいかないのは、なんとなくわかった。




 「気は張らねーとな………」


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