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第1146話



 「ダンジョンの………暴走?」





 誰かがそう呟くと、皆一斉に俺の顔を見つめ出した。

 何知ってるのか、と言わんばかりだ。


 が、俺は首を横に振った。




 すると、すぐさま老人は返事をした。





 「ああ、すまんのう。旅の者ならそりゃあ聞いたことないじゃろうて。なにせ周りが勝手に呼んでおるだけじゃからな。もうかれこれ一月、呼び方がないと不便だったんじゃろう」


 「!」




 エルフの老人、長寿種の老体ということはさぞ長生きなのだろう。


 だが、それでも知らない現象ということは、恐らくはこのフェアリア独自の現象なのかもしれない。




 「じゃが、あながち的を得ていると思うがのう。本来うちにある筈のダンジョンが、外に放出されてしまっておるんじゃから」


 「外に!?」




 と、真っ先に食いついたのはコウヤであった。




 「じいちゃん、それってまさか、ダンジョンが地上に表層化してるってことか?」


 「ん………? おお、なんじゃお前さん、知っておったのか?」




 難しい顔をして、コウヤは口を閉ざしてしまった。

 どことなく落ち着きのない様子だ。

 この反応、あまりいい話ではないらしい。




 「説明頼めるか、コウヤ」


 「説明か………ちょっと長くなるから追い追いするつもりだけど………とりあえず、行こうとしてたガイアナのミッションが終わってる可能性があるってことだけ言っとく」


 「! 例の大型ミッションってやつか。その多分ってのは?」


 「前提として、ダンジョンの表層化に関わる内容のミッションがあるんだけど、本当ならプレイヤーのミッション成否に関わらずダンジョンの表層化は失敗するんだよ。なのに今ダンジョンは表層化してる。だからはっきりと終わってるかどうかわかんないんだよ」





 状況はやや混乱している。


 しかし、この様子だと恐らくミッションは白紙になっただろう。

 これが受けられなくなったのはかなり痛い。

 これから経験値が必要だというのに、まったく間の悪い話だ。



 それはそうと、今の話で気になるところがあった。

 そしてどうやら、コウヤもそれについて違和感をおぼえていたらしい。




 「なぁコウヤ」


 「ああ、早すぎる。少なくとも、一月前の段階でガイアナにいるのは異常なペースだ」




 一月前といえば、まだプレイヤーがこの世界に入ってすぐだ。

 いくらレッドカーペットで俺たちと差があるにしても、手強いモンスターがわんさかいるガイアナに1ヶ月も前にいるのは明らかに異常だ。




 「なんなんだ………? 原住民がお告げを破ってやらかしたか?」


 「! それあるかもだわ。お告げはただの脅迫ってだけで、動かす力はないしな」




 そう。

 お告げを破るとネームレスになるというデメリットはあるが、裏を返せばそのデメリットを気にしなければお告げを破れるということ。


 つまり、誰かがミッションを破綻させたせいで、ダンジョンが表層化した可能性がある。




 「けど、どのみちミッションはパーになったな。みんなどうする?」



 と言いながら、コウヤの視線もミレア達の視線もこちらに集まって来ていた。




 「そりゃお前………行くっきゃないだろ。どの道ちょっと無茶な経験値稼ぎしねーと、今度の大会で負けちまうからな。あ、異論ある奴は言ってくれ」




 聞いてみるが、特にない。

 強くなりたいのは、特別俺だけではないのだ。




 「じゃあ、休憩も十分取れたことですし、早速向かいましょう。私ももう十分動けます!」




 リンフィアはそう言って、軽く魔力を動かして見せた。

 まだフルパワーとはいえないが、それでもサポートには十分だろう。




 「助かったぜじいさん。アンタの分も払っとくよ」


 「おお、ありがたいありがたい………………ってお前さんら、本当に行くつもりか!? おい! 待たぬか!!」 




 代金を置いてさっさと出て行くと、店の中が少しざわついた。

 どうやらここら辺では既にガイアナの件は知れ渡っているらしい。


 この空気の重さが、それだけ危険な状況なのか、なんとなく教えてくれる。


 だが、制止しようとする老爺には悪いが、こちらも事情がある。

 今は無茶をする時なのだ。












——————————————————————————————













 「行ってしもうた………」




 呆気に取られながら、老爺はポツリとそう呟いた。


 間違いなくガイアナの方角に向かう馬車を見るその目には、諦めと小さな後悔が残っていた。




 「そう気を落とすなよじいさん。死に急ぐ奴はどこにでもいるもんさ。それに、あのナリからしてありゃ冒険者だ。慎重に進めばダンジョンくらい生き残れるよ」




 しっかり代金は受け取りながら、老爺を慰める店主。

 しかし、老爺は俯かせた顔を上げる様子はない。




 「そうではない。お前さんもこの辺りに住んでおるのなら知っているじゃろう。今ガイアナには、“組織” の者どもが巣食っておるんじゃぞ」


 「!………連中、まだあそこにいるってのかい」


 「ああとも。()()()が消えてからというもの、ここいらで活動している組織の動きは目に余る。見つかればきっと………死人も出るぞ」





 あの重く濃い魔力は、未だガイアナに残っている。


 その異常事態の背景の存在する、“組織” ——————管理者の命令で、ミッションや世界のバランスを保つために犯罪行為を許された裏の組織。


 奴らの牙がもうそこまできている事を、ケン達はまだ知らない。





 そして、ガイアナを離れる時、1人パーティから消える事も、今の彼らは知る由もない。


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