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第1145話




 ガイアナ。


 それは、ノーム達が暮らす山岳地帯の都市であり、得意の鍛治を始めとした様々な職人たちの住む街だ。

 周りにはダンジョンやモンスターの発生しやすい魔力溜まりが多く存在し、中級冒険者にとても人気のある拠点の一つである。





 「攻略本にはそう載ってるな」



 コウヤは串焼きを頬張りながらそう言った。


 ここは脇道にある休憩所で休憩がてら昼食をとっていた。

 近くに屯所と都市があり、別れ道にもなっているので、通行客をターゲットとした店なのだろう。


 サービスエリアみたいなものだ。


 


 「普通ならもっと強くなって向かうような場所だから、行き道も危ないかも。ほら」


 「うわぁ………どんどん厳しくなりますね。まだガイアナまでは三分の一も行っていないのに。私ももっと頑張らないと」




 コウヤはそう言って、この範囲に分布するモンスターの一覧を浮かべて見せていた。

 あの博士ばりに詳しいリンフィアが苦い顔をしているので、かなり厄介なのだろう。




 「銀髪ちゃん、グローブ使って頑張ってたからな。この先を考えると温存させつつがベストだろうけど………どうだ? つか、いける?」




 コウヤの言う通り、ここまでの道でモンスターを追い払っていたリンフィアの体力を考えると、この先は分担した方が良さそうだ。




 「温存は賛成。それにまだ問題ねーよ………陸地なら」


 「いや声ちっさ」




 あの揺れまくる馬車にさえ乗っていなければ大丈夫。

 しかし、学院にいた頃作った酔わないバイクが恋しい頃だ。



 「気を張るのも大事ですが、しっかり休憩は取ってくださいね。特にリンフィア、貴女は来るまでに使った魔力と体力をしっかり回復させてください」


 「それもそうですね。ところでミレアちゃん、ケーキの大食いは美容に良くないらしいですよ。甘いものと美容のどちらを取るべきかというこのジレンマ、全くとんでもないですね」


 「とんでもないのは貴女です」





 食い意地を張るリンフィアと、拒否をしつつ結局何口かくれてやるミレア。


 いつもの光景だ。

 が、流石にケーキ4つ目は食い過ぎだ。




 「やれやれ………太るぞリフィ」


 「太るって言う方が太るんです」


 「何言ってんだお前は」




 エネルギー補給ということで多目に見るが、間違いなく後で後悔する。

 俺はよく知っているんだ。




 「皆さん騒ぎすぎですよ。他のお客さんもいるんですから。申し訳ありません、おじ様」




 本人は気付きながらも無視している、猫かぶってるなぁという白い視線。


 最近だんだんとこいつの化けの皮が剥げてきたので、そういうことがみんなわかり始めていた。




 「構わん構わん。多少賑やかな方がこういう店は人が寄り付く。この辺りは魔物が多いせいか、いつも閑古鳥が鳴いておるんでのお」




 確かに、老人の言う通り、店を構えるには少し危険なのかもしれない。


 と、思ったものの、案外近くに馬車は止まっている様子だ。

 妙なことにモンスターの気配もこの辺りはあまりない。


 この違和感に、ついつい色々と勘繰ってしまう。




 「余計なお世話だよ、爺さん。元々半分趣味みたいな店なんだよ。それに今はモンスターも減って儲かってるんだ。こちとら万々歳さ」


 「しかし、最近ガイアナに向かう冒険者も減ったのは痛手じゃろう?」


 「まぁ確かにな。一番の狙いだったガイアナ行きの客が来ないんじゃなぁ………いやまぁ趣味なんだけどね」





 聞き耳を立ててみたが、やはりガイアナには何かあるらしい。

 何か知っているだろうかと思い話しかけようとすると、





 「あの、ガイアナで何かあったのでしょうか。私達、これからガイアナに向かおうと思っているんですけれど」




 と、良いタイミングでルージュリアが尋ねてくれた。


 だが、その途端に話をしていたはずの老人たちの口がピタリと止まった。

 妙な緊張感が場に走る。


 すると、老人も店主も、血相を変えてルージュリアの方へ駆け寄った。





 「お、お嬢ちゃん。悪いことは言わんからやめておきなさい」


 「あ………アンタ、今あの街がどうなってるのか知らないのか? 知らないんだったらこの爺さんの言う通り、やめておいたほうがいい」





 尋常ではない反応。

 どことなく、危険な香りがする。


 しかし、それならば帰って好都合というもの。

 この国における危険は、大抵俺たちの経験値になり得る。




 「あの、ご忠告は大変ありがたいのですが、私たちも用があるので………よろしければ、ガイアナで今何が起きているのかだけでも教えていただけませんか?」




 俺たちの注目は、一斉にその会話の方へ向いた。


 


 ——————その時。












 「「「!!」」」








 方角は北西、ガイアナのある場所。


 そこから、異常なほどに高濃度、かつ莫大な量の魔力が発生していた。

 圧倒的な存在感に、思わず皆会話を忘れて、大元である何処かをただ見つめていた。




 「またか………」


 「お嬢ちゃん、わしらが止めた理由はあれじゃよ。あれが原因で、今ガイアナは前代未聞の異常事態に晒されておる」


 「モンスターバブル………ですか?」





 モンスターバブル。


 それは、一箇所に一定以上の魔力が集まり、かつその濃度がさらに一定値を超えた場合に発生する、モンスターの大量発生のことだ。


 消滅させるには、魔力を霧散させるか、モンスターの発生によって魔力が消費されるのを待つ他ない。


 が、




 「いや、違う」


 「違う?」




 老人も店主も、黙って頷いた。

 そして、老人はこう言った。




 「言ったであろう。前代未聞なんじゃよ。既存の現象ではない、謎の現象が今ガイアナを襲っておる。そして、その現象というのは………ダンジョンの暴走じゃ」

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