第115話
「では、今日から特別訓練を始めるぞ。いいかお前ら」
「「はいっ」」
祭りまで残り5日。
だが、毎日訓練してたら身がもたない。
なので、今日1日で終わらせる。
「訓練は今日1日だけだ。あとは当日までぶらぶらする事」
「え!? 1日だけですか!?」
驚くのも無理はない。
俺が言ったのは当日までにBランク相当まで上げると言う事だったのだ。
ちなみに、Bランク平均ステータスは、
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HP:5000
MP:4000
攻撃力:4500
守備力:4500
機動力:3700
運:10
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大体こんな感じ。
Dランク平均の大体3倍以上。
上げ幅は今までの比ではない。
しかし、ある方法を使えばBランク近くにはなれるはずだ。
それより上はじっくりやらないとダメなのプラス、裏技は俺以外多分使えないので、多分これが最後のレベル上げチート。
まあ、今までのも大概チートだ。
こいつらの初期ステータスからここまで持ってくるのに、普通は10年以上かかるところを、数ヶ月で済ませている。
こいつらの潜在能力が高いというのもあるが。
「ああ。けど超しんどいぞ。ラビ、この前やらせたアレよりきついかもだ」
ラビはアレを思い出していた。
すると、ブワッと汗が出ていた。
「あ、アレよりもか………」
「アレって、何ですか!?」
リンフィアは知らないんだったな。
まぁいいや。
「よしやろー」
「アレって何なんですかー!!」
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「おー、ミスリルだ。しかもけっこうじゅんどがたかい」
ガキのセリフじゃないな。
「えっと………これは?」
俺はリンフィアとラビに、普通のミスリルで作ったある魔法具を渡した。
「ニールに作ったパームカフがあるだろ? アレの回復魔法のみのモンだと思ってくれ。ほら、今まさに付けてるあれだ。そう言えば、おまえ結構それ付けてるよな」
「ふん、私の勝手だろう」
「ああ、ニールそのアクセサリーかなり気に入ってますよ。結構どころかずっとつけてますよ」
マジか。
まあ、作った本人としては嬉しい限りだがな。
「りりり、リンフィア様っ!」
顔が真っ赤だな。
「い、いいだろ別に! その顔でこっちをみるな!」
「そんなに気に入ってくれてたか………俺ァ嬉しいぜ」
これ以上は噛み付いて来そうなのでやめておいた。
「それで何でこれをつけるんですか?」
「手っ取り早く回復するためだ。魔力が尽きない限り無詠唱で回復出来る」
「つまり、私たちは今から何かと戦うって事ですか?」
やっぱりわかってるな。
「そういう事だ」
俺は地面に大きく円を2つ書いた。
右がリンフィア用。
左がラビ用。
「それじゃあ、その円の中に入ってくれ」
「はぁ」
リンフィアとラビは円の中に入った。
「!」
「気がついたか」
俺は空中に魔法で字を書いた。
“どうだ?”
リンフィアは口をパクパクしている。
一応読唇術が出来るので、何と言っているのかわかる。
“何も聞こえないです。それに風も感じない。これは一体なんですか?”
“集中できるように、外の情報を出来るだけ遮断してる。一旦出てこい”
リンフィアとラビは円から外に出た。
「ししょう、めちゃくちゃしずかだった。いまからたたかうんじゃないのか?」
「ああ、戦うさ。だがあくまでも意識だけ、だ」
「意識だけ?」
今からやるのは、複合魔法で作った特殊空間に意識を転送し、そこに現れるある人物と戦ってもらう事だ。
複合:光闇一級魔法【現≪幻≫実世界】
向こうで起こったことはこちらに反映される。
例えば、向こうで傷を負えば、同じ場所に傷ができる。
火傷したとしても火無しで跡が出るのだ。
なので、装備したものも向こうでは使えるが、今回銃は持たせず杖を持たせ、ダガーも普通のダガーを使わせる。
武器訓練は後半に行うつもりだ。
「こんな感じだ」
「またすごい魔法作りましたね。複合魔法。話には聞いていましたが、とんでもないですね」
呆れ顔でそう言われた。
「まだまだあるけどな」
「はぁ………それじゃあ、ケンくん。早速始めましょ」
「そだな。ラビも、もういいか?」
「だいじょーぶ」
腕をぐるぐる回している。
やる気がすごいな。
「お前ら」
俺は2人の頭の上にポンっと手を置いた。
「今回は多分かなりきついだろう。気張れよ。そうすりゃお前らは絶対強くなれる。俺が保証してやる」
「はいっ!」
俺は手を退けて準備に入った。
円に入ったのを確認し、魔法を発動させる。
そして、2人の意識を転送した。
これなら心配ないな。
さあ頑張れよ。
お前らの敵は——————
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リンフィアとラビは別々の空間にいた。
別々にしないと、魔法中心のリンフィアはのびのびと戦えないのだ。
リンフィアは何もない空間でゆっくりと目を開けた。
「ここは………」
何もない空間。
例のごとく、真っ白だ。
すると、
「!」
背後から人の気配がした。
リンフィアは即座に振り返り、態勢を整える。
「なっ………!」
そう、今回の敵は——————あいつら自身だ。
そこにいた黒いリンフィアは、本物のリンフィアの方を向いて静かに構えた。
 




