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第1142話




 「弱くなってる? 俺が?」



 そう尋ねると、ミレアは申し訳なさそうに頷いた。

 チラッとリンフィアの顔も見てみたが、どうやら同じ感想を持っているらしい。




 「ケン君がどう経験値を使っているのかは知りませんが、ある程度私たちと同じくらい成長しているのであれば、さっきわざわざ隙が大きい居合を使わなくてもよかったんじゃないですか?」


 「おお、お前よく見てんな」




 そう。

 居合は直後の隙が大きくなりやすい。


 だから、向こうが大技を使う時や、サポートがいる時以外は、あまり使うべきではないのだが、今回はそうしなければ威力負けする恐れがあった。


 弱くなっているという感想もわからないわけではない。

 ただ、これはそう単純な話ではないのだ。




 「結論だけ言うと、弱くなってはない」


 「そうなんですか?」




 だが、この話は続きがある。




 「でも、成長もしてない。領主との戦いの少し前から経験値を貯めてるからな」


 「「!?」」



 そう。

 それ故に、差がついてしまったのだ。

 俺が弱くなったのではなく、ミレア達が力をつけたのだ。



 「いやー、技術だけでやりくりするってのも中々厳しいよな」


 「どうしてそんな事………何か考えがあるんですか?」


 「まぁな。ちょっと理由があって経験値を貯めてる。知ってるか? 経験値は技能や魔法の割り振り以外にも、元々自分が持っていた能力を一部引っ張って来ることも出来ンだよ」




 なるほど、と相槌を打つミレアたち。

 だが、これにも色々と不都合がある。

 どうやらミレアは、それにすぐ気づいたらしい。




 「………一部? 全部は無理なんですか?」


 「ああ。厄介なことにな。数値化出来るやつはその出力の20%で、そうでないやつも制限がかかる。丁度、俺の神の知恵みたいな感じだ」




 誰だって使い慣れた能力の方が戦いやすいだろう。

 中にはここ世界で普通には入手できない能力もある。


 それ故に制限がかけられる。

 しかも、デメリットはそこだけではない。




 「でも、その間全然強くなれないのはキツくないですか?」



 まさにそこだ。

 今リンフィアが言った通り、そこがネックになる。

 こう言った特殊技法は、必要経験値数が莫大で、そのせいで俺も経験値をかなり貯めなければならない羽目になっているのだ。



 だが、俺の欲している()()には、それだけの価値がある。





 「ああ、かなりキツイ。けど、俺ならギリギリ耐えられる。むしろ俺だから可能だ。この世界に来る前………元の世界にいた頃の経験は、白紙にされてないからな。しかも、いざという時は切り札もあるんだ。もうしばらくはついてけるさ。こればかりは、制限付きでも絶対に欲しい………もう、誰も死なないように」


 「っ………………」





 と、いかんいかん。

 思わず眉間に皺が寄っていた。



 間合いの話と同じだ。

 強くあるためには余裕が必要。

 特に今の俺の強みは、頭くらいのもの。


 だったら一層、冷静でいなければならない。




 「ま、そういうことだから、お前らにはもっと頑張ってもらうぜ」


 「「………はい!!」」










——————————————————————————————











 「うーん、やっぱ資料はないか」


 「司書にも尋ねましたが、その生物迷宮という存在の資料は全く残っていませんでした」




 ルージュリアとコウヤは、宮殿内の図書館で生物迷宮に関する資料を漁っていた。

 といっても、ルージュリアはあくまでもコウヤの付きそい。


 言い出したのは、コウヤであった。




 「どうなさいますか?」


 「や、もういいよ。金髪も資料は残ってないって言ってたし、昔()()()()()もそう言ってたしね」


 「“お婆様” ですか?」




 しまった、と思ったのか、コウヤは誤魔化すように声を出した。

 側から見ても都合の悪そうな顔をしている、が、




 「………まぁ、お嬢様ならいいか」




 そう言って、コウヤはポツリと語り始めた。




 「ばあちゃんってのは、俺の育ての親だよ。そんで、この世界に唯一生き残った生物迷宮。いや、金髪の仲間も生き残りだって言ってたから唯一じゃないか。とにかくそんだけ数が少なった種族なんだ」


 「少なくとも絶滅はしてない………それなのに全く資料がないんですか?」


 「よくは知らないけど、身を隠して生活をしていたらしい。何百年も一族同士で集まって隠れてたんだと。だから、世間からは完全に忘れられた種族ってわけ」


 「なるほど………でもどうして急に資料を集めようと? 少なくとも、カイトにいた頃は仕事ばかりだったでしょう?」





 そう尋ねられ、一瞬固まるコウヤ。

 キョロキョロと辺りを見回し、見るからに挙動不審になっていた。




 「………金髪達には、絶対に言うなよ」


 「?………はい」




 明らかに緊張が見て取れる。

 ルージュリアも、少しばかり真剣な面持ちになっていった。




 「………多分、資料はない。あったとしても、白紙化した今では、確実に残ってないと思う。管理者としても、自分の情報は少しでも消し去りたいだろうからな」


 「!! では、その生物迷宮というのは管理者と関わりがあると?」


 「あるどころか、白紙化もお告げも、生物迷宮の王の力を奪うことで得たものなんだよ。そして、その王ってのが金髪の仲間………確かラビってやつの母親だ。だから、そのラビって奴はめちゃくちゃ管理者を恨んでる。()()()、俺はこの件を隠さなくちゃいけないんだ」





 いまいち要領を得ない話だ。

 だが、どうやらルージュリアは、何か思うところがあったらしい。




 「………コウヤ君、貴方………………管理者と繋がりが?」


 「………………多分、ある」




 グッと拳を握り込み、そして、覚悟を決めたようにコウヤはこう言った。




 「管理者は多分、俺が探している生き別れの弟だ」

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