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第1141話




 「本当に2対1でいいんですか?」


 「私たち、結構強くなっていると思いますが、大丈夫ですか?」




 グローブをはめ、腕を伸ばしながらリンフィアはそう尋ねてきた。

 その隣には、杖を持って魔力を練っているミレアが立っている。



 アクアレアの訓練場で暇潰しがてら訓練をしていると、成り行きで模擬戦をしようという話になった。


 暇というのも、ガイアナは本来なら超遠回りで、フェアリアの土地を俯瞰で見たら、ほぼ真反対に位置している。

 順当に行けば向かうはずだったディアブレイズの何倍もかかる故、準備にも時間がかかるわけだが、これはその時間の合間というわけだ。




 「ガチ試合ってよりは実力の確認だ。だから、一度に全てをかけろ。いいか、“一撃じゃなくて一度” 。そこに全力を注げ」


 「とどめまでを一息でやれって事ですよね」


 「流石リフィ。わかってんな」




 そう。

 長々戦うのではなく、どうせなら今ある力を結集させた本気が見たい。

 その方が、俺としては実力を測りやすい。




 「んじゃ、思いっきり来い」




 領主の一見、ここまでの行き道で出会ったモンスターとの戦い、これによって経験値を多く得ている。


 確実に、2人とも強くなっている筈だ。




 「よーし」




 神の知恵を発動させ、武器を構える。

 持っているのはいつもの剣ではなく、模擬戦用のひたすら硬いほぼ棒みたいな細身の剣。


 レイピアというほどではないが、剣というより刀に近い。

 殺傷能力は下がるが、とにかく丈夫だ。


 逃げ一択、当て止めならうってつけの剣だろう。





 「来い」


 「「………」」





 2人は顔を見合わせて頷くと、それぞれリンフィアは前へ、ミレアは後ろへポジションを取った。





 「………ふーっ………」





 早速魔法を構えるミレア。


 そちらに注意を傾けつつ、向かってくるリンフィアに剣を向けた。

 変身はまだない。


 だが、なかなかの速度。

 まっすぐ、魔力を練りながら一気に駆け抜けてくる。



 こちらはまず、様子見だ。

 グローブを使用した魔力弾の牽制は………ない。




 「突っ込んでくるか………?」




 ひとまずはお手並み拝見。


 呼吸を落ち着け、脱力。 

 無駄を削ぎ、受け流すタイミングを待つ。




 すると、リンフィアは初手から高く飛び上がり、早速仕掛けてきた。



 ——————来た、神威。



 変貌するリンフィアの足。

 あれは、




 「サンダースケルトン………………っ!?」





 変身の刹那、魔法が放たれる。


 方角はこちらだ。

 なかなかの威力………だが…………やや、上向き………?





 「なっ!?」





 着弾点は、ミレアの足。

 サンダースケルトンの帯電体質を利用した、一種の強化だ。


 これは、下手にさわれない——————








 「っ!?」




 ゾッ、と全身に僅かな緊張が走る。

 これは、本能が発した危険信号。




 ——————来る。








 「!?」





 チリッ



 と。

 骨が纏っている電撃が、鼻先を掠める。


 変化部分の自切………そして、投擲。

 足を振り上げ、ブーメランのように飛ばしてきた。



 これは見事…………いや、





 「追撃か!?」





 背後を見ると、骨から雷の刃が伸び、こちらに向かっていた。

 サンダースケルトンは元々雷を纏っている。

 追加の魔法は、はなから第二撃目のための準備だったのだ。


 しかし、それでは終わらない。




 「んなっ!?」




 背後からは魔力弾、そして、




 「先手必勝、短期決着。無傷で勝ちます!!」




 マジな目をしたリンフィアが、頭上に。


 たった数秒で作られた包囲網。

 アイデア、瞬発力、連携共に成長している。


 だが、




 「やるな………でも詰めが甘い」


 「!?」



 その瞬間、魔力を外に放出した。


 すると、飛んでくる骨の操作が不安定になり、大きく軌道を逸れていった。




 「あっ」




 包囲網を抜け、僅かに距離を取り、居合の構えへ移る。


 攻撃が逸れたことによる一呼吸の間が、生まれる。

 溜めは重要だ。

 特に剣は、これによって威力も正確さも大きく変わる。



 「とった」




 リンフィアの着地と同時に、一歩前へ。


 完全に間合い。

 そしてルール的にも、逃げはない。


 覚悟を決めたリンフィアは、そのまま方向を変え、こちらに拳を向けてきた。


 これがまさに間のない攻撃。

 威力は落ち、ブレが生じる。

 加えて俺の手持ちは一撃必殺の居合術。



 利は、こちらにある。





 「「!!」」





 流石に、威力を殺すために合わせてきた。


 だが問題ない。

 そう思って、俺はこのまま押し切ろうとした。


 

 しかし、




 「………っ、これは………」





 一定の位置から、武器が全く動かない。


 威力は完全に拮抗している。

 予想以上にリンフィアの拳が強かったか?



 ………いや、おかしい。

 これは拮抗し過ぎている。


 


 それ以前に、()()()()()()()()()()()




 「………なるほど」




 武器を少し捻り、攻撃を弾いて距離をとる。

 流れが切れてしまったので、ここで試合終了だ。




 「あー、引き分けですね」




 口をへの字に曲げながら、もうちょいだったのになぁとボヤくリンフィア。


 確かに、俺も危なかった。

 試すような真似をして負けるのは最高にダサいので、心の底からホッとしている。


 それくらい、いい連携だった。




 「いや、なかなか良かった。大技を使うんじゃなくて、ミレアに合わせやすい技を組んだのは上手かった」


 「『一撃じゃなくて一度』 ですからね。でもミレアちゃんがいないと危なかったです」




 そうだ。


 最後のアレはおそらくミレア由来のもの。

 完全に初見だったのだが、アレは一体なんだったのだろうか。




 「ふぅ………お疲れ様です」



 「?」




 駆け寄ってきたミレアだが、妙に息を切らしている。

 そう動いてはいないようだったが。




 「やっぱり、慣れない力を使うと疲れますね」


 「あ、最後のやっぱお前だったか。ありゃなんだ? 羽を呑んで勇者の力が強化されたとかそんな感じか?」


 「ああいえ、勇者の力自体は強化されていません。この間ルージュリアからも聞いたのですが、封印解除でしか勇者の能力は強化されないらしいです。この力は、単に私が使いあぐねていた能力です」




 そう言って、ミレアはスッと右手を差し出した。

 すると、




 「おお? これは………天秤か?」




 手の上に、傾いた天秤が現れた。

 どうやら、これがミレアのもう一つの能力らしい。




 「裁定は、異常を強制的に平常へと戻す能力。それに対してこれは、不釣り合いな二つのものを強制的に釣り合わせる能力。『調和』です」




 ミレアがグッと拳を握ると、天秤はどこかへと消えていった。



 「ただ、対象の大きさや規模に関わらず体力をかなり消耗するみたいなので、一日五回程度が限度です。ただ、その代わりに、その回数内なら街を壊す規模の攻撃でも調和させられます」




 なるほど。

 さっきのは俺の攻撃とリンフィアの攻撃を強制的に釣り合わせたわけだ。



 裁定に調和。

 罰の神らしいといえばそうなのだろう。


 どちらも中々強力だ。




 「それはそうと、一ついいですか、ケン君」


 「おう。なんだ?」




 あー、と言って何か言いにくそうにしているミレア。

 一体何を言われるのだろうか。




 「その………勘違いだったら申し訳ないんですが、」 


 「うん」




 「弱くなって………ます?」


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