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第1140話



 「………」




 いくつものウインドウが開かれた薄暗い空間。


 あらゆる情報と、あらゆる妖精たちの状況が映し出されたその画面に向き合い、黙々と作業をしているのはこの王の選別を始めた管理者、カラサワ・エイトであった。




 「やっぱりこのプレイヤー………何かがおかしい………」




 管理者の視線の先にあるのは、大樹のような絵。

 その樹にはメモリのようなものが付いており、進行度に応じて、徐々にメモリが上がっていく。


 つまりこれは、プレイヤーがどれだけ玉座に近いかを示すものだ。


 だが、




 「誰よりも早くこの世界の真実に気がついたというのに、なんで進まないんだ………?」




 その情報は、プレイヤーの全てがわかるわけではない。

 そもそも管理者は、()()プレイヤーについてはその全てを把握出来ているわけではない。


 優位ではあるが、そこには穴がある。

 それ故のレッドカーペットなのだが、今見ているその“大樹”は、まだ残っている全てのプレイヤーの中で唯一、レッドカーペットを持っていないのだ。




 「まぁいいか。カイトで領主を倒したということは、まず間違いなくアクアレアを通過してディアブレイズに向かうはず。レッドカーペットも持っていないのであれば、そこのミッションに巻き込んで仕舞えばいい。けど、報告通りであればちょっと心許ない………か?」




 報告………というのも、彼には外で活動している部下がいる。

 それは、ケン達と度々遭遇している緑髪の少年である。


 直近では、レイターがケンと完全に敵対し、羽の欠片を飲み込む原因を作った。

 その目的は、様々なプレイヤーの監視。


 特に最近は、イレギュラーであるケン達の監視を行なっていた。




 「羽化した『詐欺師』のレッドカーペット………しかも、そのウンディーネを水辺を相手取り、たった3人で撃破? ハッ、おかしいにも程がある………というか、何故レッドカーペットを持ってない? ペナルティから逃れるためか? それでこの強さは………いや、デバッガーに消されていないということは、正規。僕にとって最高の素材だ。でも、なんらかの不正があるのであれば、実力が図れず正しい素材が………………っ」





 目を回していてた管理者は、突然俯き、肩を震わせた。

 すると、




 「ぁああああああああああああああああ!!!」




 頭を掻きむしりながら、大声を上げ始めた。

 わかりやすくいえば癇癪。


 しかしこれは、彼にとても一種の発散行為。

 苛立ち吐き出し、冷静を呼び込む。


 

 

 『ご主人様。貴方がこの国で僕が全能でいられるのは、“王を育成する” という縛りが前提のもの。いくら考えても、()()()()()プレイヤーに危害を加えることは出来ません。故に、」


 「………うるさい。お前は僕が作ったシステムだ。お前に分かって僕にわからないわけがないだろう。危害どころか、原住民を介して監視することすらできない。『制約』は、綻びさえ許さないんだ」





 そう。

 これが、誰も知らないこの世界のカラクリ。


 この莫大な力は、とある手段で自らに制約を課すことで得られた反則のような力。



 一見全能に見えるこの力には、そういう穴があった。

 だが、それではどう考えても詰みだ。


 プレイヤーを襲ったところで、制約によって阻害され、返り討ちにあってしまう。


 故に、制約をわずかに緩めることにした。

 が………




 「だから、レッドカーペットと玉座を用意してるんだ。あれは僕にとっての安全装置。座ったものを『疫病』状態に強制的に移行させる、僕の切り札………」


 『その切り札の条件として失った機能があまりにも大きいという話です。どこかへ消えたその力のせいで、プレイヤーの管理ができなくなってしまわれた』


 「だから分かってるって。そのグレードダウンのせいで僕はプレイヤーの監視ができなくなった。だから僕も焦ってるんだ。まぁ、あいつのおかげでちょっとはそのプレイヤーの素性はわかるけどね」





 強さどころか、その姿も知らない。

 わかるのは断片的な情報、外見と名前のみ。




 「………………まぁ、いいさ。いつか必ずボロが出る。いや、出ずとも消える。何せ彼らは、レッドカーペットを持たないんだから」




 そう言って、管理者は作業へと戻った。












 しかし、彼は知らない。


 そのプレイヤー………ミレア・ロゼルカが、かつて封じた力を得ている事。


 緑髪の少年が、とある情報を管理者に伝えていないという事を。


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