第1139話
「つーわけで、負ければ俺は確実にこいつと結婚させられる羽目になった」
と、部屋に戻った後、待機していたみんなにあらかたの説明をした。
ミレア以外なんとも言い難そうな顔で、おぉ………とだけ口にしている。
「なんか、あまり変わってないような………」
「そこは言うなリフィ。けどポジティブに考えようぜ。要するに、普通にしてりゃいい」
そうさ。
元々の目的と対して違いはない。
別に交渉失敗ではないのだ。
「そ、そうなったら二人とも、本当に、け、け、結こ、ここ」
「落ち着け金ロールちゃん。戻ってこい」
こういうのを見てると思わず気が抜けるが、正直まったりしている暇はないだろう。
「ちょっといいか、コウヤ」
「ん?」
今回の大会、実は普通の大会ではない。
後でウンディルに聞いた話では、その大会は魔法禁止の殴り合いだという。
己の肉体と武器だけで戦いを挑み、残ったものが勝者となるトーナメント戦。
そして試合は、2人1組でのペア同士で行われる。
俺は、相方にはこいつが適任であると判断した。
「今回の大会は2人1組での出場が条件になってる。そんで魔法禁止だ。お前にパートナーを頼みたい」
「へぇ、面白いじゃん。いいぜ」
「うっし、決まりだな」
正直かなり頼もしい。
こいつの能力は、こういう縛りのある戦いでは大いに輝くだろう。
「優勝したらなんか貰えるかな〜」
「張り切ンのはまだ早いぜ。族長が言うには、大会まではしばらく時間があるんだとよ」
「ってことは、訓練して経験値を稼がないとですね。私も頑張ろう!」
妙に息巻いているリンフィア。
そういえば、『最近私影薄くないですか?』 と気にしているのを思い出した。
でもまぁ、いざと言うときに一番頼れるのは何気にリンフィアなのかもしれない。
“進化の神” 由来の神威の能力による変身は、モンスターの数が数なだけに応用が効きやすい。
何より、魔法に経験値を多く振らずに済むのが大きい。
その内大活躍してもらうだろう。
「修行かぁ。ネームレスになる前は訓練しっぱなしだったんだけど、こうなってからは全然してないなぁ」
G・Rはしみじみとそんな事を口にした。
ネームレス、名を奪われた者は、ステータスの制限を受けるのみならず、名を奪われて以降一切の経験値を奪われ、それ以上の成長ができなくなってしまう。
重い話だ………………が、本人は気にしていないらしい。
楽観的なのか、何も考えてないのか。
まぁ後者だろう。
「はっ………失礼の波動をかんじる」
「気のせいだろ」
「うーん………そうだね」
見よ。
勘の良さを帳消しにするこの能天気さ。
素晴らしく都合がいい。
と、馬鹿にするのもほどほどに、話を逸らすことにしよう。
「そういえば、お前もそろそろ就職先見つけたいだろうから、その辺も考えないとな」
「うーん」
G・Rはいつまでもこのパーティにいるわけではない。
つまり、帰巣のスキルによる逃走に頼れなくなるということ。
そういう意味でも、強くなる必要がある。
「あ、ストルムに行くなら、おすすめの寄り道スポットがあるよ。ガイアナなら修行も出来るし、いい感じの職場がありそうだし」
「へぇ、そこは期待できる場所があンのか?」
「ご飯が美味しい」
「もうちょい言動に一貫性を持たせろ」
「そういえば朝ごはん食べてなかったから食べてくるね」
ああどこへ行く。
会話の内容の本人もどこかへ行ってしまった。
けど、寄り道はありだ。
修行できるというのなら尚のこと。
「………ガイアナっつってな、あの自由人」
「聞いたことあンのか、コウヤ」
「ああ。っていうか、俺も特に希望がなければそこに行ってもらおうと思ってたんだよ。確かに修行には最適だ………けど」
けど?
妙に歯切れの悪い反応。
何か問題でもあるのだろうか。
「昨日の晩、まだ見ぬ美女を探しにキッチンに向かったんだけどさ」
「元気出せよ、次があるって」
「おい、時間が飛んでるぞ。………まぁナンパは失敗したけどさ」
そんな事はどうでもいいんだよ と、どの口が言っているのかわからないような事を言って、コウヤは苦虫を噛み潰したような顔で語り始めた。
「この前、前触れもなくモンスターが大量発生したせいで街が潰れたって聞いた」
「!!」
それは、なかなかに穏やかではない。
街の壊滅………前触れもないってのは気になる。
気本的に、モンスターが大量発生する場合は前兆として魔力濃度が以上に上昇するのだが、魔力に敏感な妖精がそれに気づかなかったとは考えづらい。
だとすると、
「管理者絡みか………?」
「かもしれない。ガイアナには一応大型のミッションもあるしね」
「なんにせよキナ臭ェな………けど、かえってチャンスかもな」
管理者が関わっているということは、王の選別に関係した何かが起きている可能性がある。
街一つ潰れるようなものなら、大規模なミッションの受けるチャンスもあるだろう。
「じゃあ、行ってみるか。ガイアナ」




