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第1135話



 戦いは終わったが、このゲームそのものが終わったわけではない。

 この一日、ルージュリアを奪われずに過ごせたら俺たちの勝ちとなる。



 が、正直もう疲れた。

 長々とゲームを続けるのではなく、俺は手っ取り早く試合を終わらせることにした。







 「残る候補はアンタらだけ。身柄は拘束済み。そして、1番の戦力であるレイターとサバスはもういない」




 手に持っているのは拷問器具。

 目の前には、残る夫候補数名。


 気を失っている連中の意識を無理矢理覚させ、全身をガチガチに拘束した。




 「俺は正直、もうこのゲームが面倒になった。でも、ここまで来て負けるつもりもない。だから、アンタらに降参してもらう事にした」




 ガタガタと震えながら、候補達は俺の手の中をじっと見つめていた。


 だが、多分まだ足りない。

 目を見ればわかる。

 半信半疑とまではいかないものの、まだ僅かに希望が見える。


 ならば、




 「ヒトってどれだけの痛みに耐えられるか知ってるか?」


 「「………っっ!?」」




 俺は腕にナイフを突き立て、わかりやすく、ゆっくりと、見せびらかすように肉を裂いた。

 眉一つ動かさず、あくまでも無表情、無感情に。




 「少なくとも、これは限界じゃない。そして俺は、その限界を知っている」











——————————————————————————————












 「ヒジリケン様を除く全候補者の棄権を確認しました。此度の勝利、お祝い申し上げます」



 それから少し、どうでも良いことを言った後、執事らしき男は何処かへと去っていった。

 長く感じたゲームだったが、終わる時は案外あっさり終わるものだ。




 「不戦勝とは、考えましたね。それに拷問とは………」




 怖い怖いと軽口をいうルージュリア。

 だが、一つ間違っている。




 「してねーよ」


 「え?」


 「拷問は趣味じゃない。俺はただ、想像力を掻き立ててやっただけ。今目の前にいるやつがどれくらい本気で、どれくらい悍ましいことが出来るやつなのかって事を、自分自身に想像させた。あとは勝手に向こうが棄権してくれた」




 レイターのように、強い勝利への固執があれば話は違ったが、杞憂に済んてよかった。

 張り合いのない連中だったからこそ、俺もわざわざ手を汚さずに済んだ。


 ある意味では感謝だ。




 「そうですか………お疲れ様でした。ケン君」


 「んだよ藪から棒に」


 「そうでもないでしょう。全て終わったのですから。それに………」




 へぇ、と思わず感嘆の声が漏れる。


 自己中心的な奴だと思ったが、こういう気遣いが持っているようだ。

 そういえば、あのレイターの守護者の胸糞悪い話を聞いた時、怒りの表情を見せていたとリンフィアも言っていた。


 こいつはこいつで、結構いい奴なのかもしれない。



 しかし、気遣いは不要。

 俺はもう、俯いてはいない。




 「疲れようがどうしようが、止まる気はない。俺は前に進む。例え、あれがあいつの夢の副産物だったとしても、それがあいつの願いだった事は確かだ。俺はミレアを立派な王にして、レイターの願ったような世の中にしていくさ」


 「………そうですか」




 俺があいつに出来る手向けは、そんなものだ。

 せめて、あいつの思いは忘れずに進もう。




 「つーわけで、この煩わしいゲームもこれで終わりだ。他の候補者ももう居ない。後は景品貰ってさっさと次に行くだけだな」


 「あら、私との結婚はどうなさるつもりで?」


 「しねーよ。そういうのは好き合った奴同士でやりゃいい。伝統だろうが、人の人生勝手に決めるなんざクソだ」


 「へぇ、意外とロマンチストだったんですね」


 「うるせぇよ」





 と、今はその結婚について、俺は軽く見ていた。


 だが、相手は妖精。

 こう言った儀式や伝統に、口うるさい種族だ。


 この “結婚しないで宝だけもらう” なんていう主張が、簡単に通るわけもなく——————














——————————————————————————————















 「ダメ?」


 「はい………」




 その晩、それとなく婚約の破棄と装飾品の引き渡しについて族長に尋ねたルージュリアだったが、どうも族長サイドはただでこちらにそれを引き渡すつもりはないらしい。




 「えー、私の再就職、また長引くの? 早くこんなロクでもない街からは出たいのに」




 流石G・R。

 その町のトップの娘の前でこの発言。

 ネジが吹き飛んでいる。



 「我慢しろ自由人。俺だってまだ見ぬガールフレンドを探し求めたいのに足止めを食らうんだから」


 「コウヤくんのはここでも出来るでしょー」


 「そう、その通り。ザマァみろ。ばか」




 部屋で鬼ごっこが開始されたが、とりあえず無視して話を進める。




 「そうか。まぁそいつは仕方ねぇな」


 「それで、明日にでもお父様のところへ出向いていただきたいのですが………」


 「うわ面倒くせー………」




 ウンディーネの族長、絶対に面倒な性格だ。


 何より、娘の婿を決める戦いをゲームなどと言いはなっている辺り、性格がいいとは思えない。

 多分、俺の嫌いなタイプの奴だ。




 「でも結婚前提っつールールを破っちまってるから下手に文句もいえねぇしな………」


 「でも、どの道行かないといけないんですよね?」




 と、リンフィア。


 確かに、こいつのいう通りそれ以外の選択肢はない。

 王の選別を確実に勝ち抜くためには、完全解放させた “裁定” の能力で、元の肉体を取り戻すという条件が必須だ。

 なんとしても、言いくるめて水精のペンダントを手に入れなければならない。




 「………だな」





 となれば、話は決まりだ。





 「明日、会ってみるか」


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