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第1129話




 「………」




 巨大な水のドーム。

 あの膨大な量の水を一点に集め、俺たちを水の中に閉じ込めたようだ。


 やってくる波の勢いは凄まじかったが、なんとか気は失わずに済んだらしい。

 我ながら中々しぶとい。



 が、流石にここは奴のテリトリー。

 水をうまく使い、俺にダメージを与えて来た。

 正直かなりきついところだ。


 それにしてもこの水、厄介なことに俺たちが中心に流れるように水の流れを制御されている。


 そこそこの速度で中心のある人影の方に向かっていた。

 誰がいるかは、当然決まっている。




 「や」




 そう、レイターだ。




 「どういう仕掛けを使ったかは知らないけれど、お仲間はここから逃したらしいね」


 「おごぽ………ぼぼ」




 いやもう全然喋れない。

 向こうは水の流れを制御して音を伝えられるが、こちらはそうもいかない。

 音魔法を使ってもいいが、わざわざ魔力を浪費する必要もないだろう。


 今の俺は、最低限の呼吸のために風魔法で空気を運びながら、水圧にやられないよう、重力魔法を操作するくらいで手一杯だ。



 それもおそらく、長くは保たない。




 「健気な抵抗だね。でも、君のリミットは近いんじゃないのかな。魔力にしても、能力にしても」


 「………」




 やはり、察しがいい。

 このままだと魔力だけではなく、俺は神の知恵の制限時間を迎える。


 そして、今の俺にこいつへの有効な攻撃手段はほぼない。



 剣を振るにも速度が足りず、そもそも動こうとすれば水に縛られる。

 この規模の水を操作しているので、超スピードで動くことが出来れば、レイターの支配から逃れられるだろうが、それができるほど俺のステータスは高くない。




 「気づいたかい? ここにいない他の2人ならばともかく、今水の中にいる君はどう足掻こうと詰んでいる」


 「!! ぅ、っ………………ごぼッッ………!?」




 息苦しさから、思わず思い切り空気を吐くと同時に、首にくっきりと締め付けられるような跡が浮かぶ。


 これは水だ。

 水を操作し、俺の首を絞めている。


 酸素が一気に減っていく。


 思考が、頭の中から散り始めた。





 「“水牢縛” ………かつて、冒険者だったボクが得意としていた、対犯罪者様の捕縛術。羽のお陰で、ボクの中で唯一現役の頃よりも強力な技となったよ」




 水によって抵抗すらさせず、確実に気を失わせて捕縛も行う。

 悪人であろうと傷つけまいとするところが見えてくる技だ。


 しかし、食らった方はたまったものではない。

 魔法による空気補給以前に、俺を潰してしまうつもりだ。





 「抵抗しても無駄さ。だったら楽になれるよう身に任せたほうがいい。大丈夫。ボクは、君は殺さないよ」


 「.........」





 気が変わった。

 使うまいと思っていたが、多少なら、余裕はある。





 『俺は、か』


 「!」




 音魔法を使い、俺の声を飛ばす。

 少しだけ、話すことにした。




 「..................うん、そうさ」


 『ミレアは、どうする気だ?』


 「..................」





 しばらく、返事はなかった。


 だが、それはただ引き伸ばしているだけ。

 口に出すのを躊躇っているだけ。


 レイターの中で、答えはとうに決まっていた。




 「殺すよ。これは、そういうゲームだ。ボクにはもう、これしか道はない。だからボクは君の手を跳ね除けたんだ」


 『………そうか。まぁ、責めは出来ないな。殺し合いに、どっちが善だ悪だは語るだけ野暮だ』





 こいつの目にはもう、俺達との道は映っていないようだ。
















 ——————そんなこと、知ったことか。





 『じゃあ、今から全力で抵抗させてもらう』


 「!? 無駄だよ。今の君はどうにもならない。ここはボクのテリトリーだ」


 『関係ない。お前はお前の望む道が進むのと同じだ。俺も俺がやりたいようにする。俺はミレアを殺させないし、お前は絶対に仲間にする。お前の意地なんざ、俺たちがぶっ壊してやるよ』


 「!!」




 すると、レイターは明後日の方角に目を向けた。

 どうやら、準備が整ったらしい。



 そう、俺はどうにもならない。

 それでいい。

 俺はどうにもしない。


 レイターは俺ばかりを警戒していたが、それは大失敗だ。

 俺はもう、役目を終えている。


 目にもの見せてやれ。コウヤ




 「っ………………馬鹿な………セイレーン!?」




 水中を、凄まじい速度で進む巨大な塊。

 それは、本の能力でセイレーンに変身したコウヤであった。



 「ちくしょおおおおおお! セルビアさあああああああんんんんん!!!」



 上手くいったらしい。

 トラウマを掘り返してしまってはいるが。


 セイレーン.........つまりは人魚。

 水中にて最速を誇る種族。



 ウンディーネにとっての水がモノであるなら、セイレーンにとっての水は環境。

 慣れ親しんだ“世界”なのだ。





 「くっ」




 遠目でも、コウヤを縛るべく、ぶるりと水が動くのがわかる。


 だが無駄だ。

 今のコウヤは水の異常を察知できる。

 そして、その異常が訪れることには、すでにあいつは先にいる。


 水中を進むコウヤの速度に、レイターの能力はついていけない。




 『ぶちかませ、コウヤ』





 奥の手は、今こそ使う。

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