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第113話


 「よし、この辺でいいか」


 フェルナンキア郊外にいつも使っている草原がある。

 時間があるときはここに来て訓練をしているのだ。


 「お、弾痕がある。あいつらもやってんな」


 どうやらリンフィア達もここで魔法や戦闘の訓練をしているらしい。

 地面にある小さな穴とその周辺の削れた場所は銃を撃った跡だろう。


 「戦闘系の新魔法使うのいつぶりだっけな。大体魔法の習得は半年で終えてたし………いや、そのあともちょいちょい覚えてたっけ? 何にせよ今回は使いようによっては今までのとは比較にならねーからな。とりあえず被害は出ねーようにしねーと」


 大規模な魔法を使う前に軽く魔力を流す。

 準備運動のようなものだ。


 「おーし、これでバッチリ。まずは、防壁だ」


 俺は土二級魔法【グランドランパート】を発動。自分の周囲に10層以上あるの土の防壁を作り出した。


 「壁はこんなもんかな。じゃあ、いよいよだ」


 トモから貰った巻物にあった、二重複合魔法。

 まずは、五級から。


 「複合:炎五級魔法【ファイアボール・ダブル】………!」


 右手に発動させた炎球。

 その中に小さなもう一つの炎球が入っていた。


 「ッ………ラァッ!」


 それを前の壁に向かって投げた。

 ボールは勢いよく壁に向かっていく。


 「さぁ、こいこい」


 ここまでは普通のファイアボールだ。

 すると、


 「お」


 壁に当たると同時に球が割れ、炎が溢れ出た。

 そして、中に入ってあったもう一球の炎球が弾け、


 轟ッ!と言う音が鳴る。

 燃え上がるもう一つの炎。

 その炎は覆いかぶさるようにしてさらに大きな炎になった。


 「すっげーな。ちょっと弱めの三級魔法くらいの威力はあるぞ」


 とりあえず水魔法で鎮火する。


 魔力の消費は多くなるが、アホみたいなMPを持つ俺はそれを気にしなくていい。


 「こんなとこで一級混ぜたら大事だな。しゃあない。派手なのは控えておこう」


 ファイアボールであの威力。

 一級魔法、例えば炎一級魔法【紅蓮ノ海】を使えば一体どれほどの威力が生まれるのか。


 「でもこれだけは試しておきたいンだよなぁ」


 一つ、絶対に試したい魔法があった。

 俺が最も愛用する魔法。

 修行の時も散々使ったあの魔法。


 「クインテットブーストだけは外せねーよ」


 俺は魔力を一気に集中させ、本気で使ってみた。


 「行くぜ………!」





 ——————複合:強化一級魔法【クインテットブースト・ダブル】












———————————————————————————











 「ケンのやつ一体何処で油を売っているのだ?」


 ニールはリビングで武器の手入れをしていた。

 リンフィアから貰ったこの双剣を毎日欠かさず手入れしている。

 ちなみに大剣の方は魔力を軽く流せば手入れはいらないので、時間はかけていない。


 「ただいま」


 リンフィアは部屋に戻ってきた。

 

 「あれ? ケンくんは?」


 「リンフィア様がお出かけになられた後、外に行きました。ですが、まだ帰ってこないのです」


 「また散歩でしょうか? ケンくんも好きだなぁ」


 ケンは夜になるとブラブラっと外に出る癖がある。

 向こうにいた時もそうだったのでたまに補導されそうになったが、大体撒いたらしい。

 リンフィアはその補導の意味は良くわかってないが。


 「うー、ししょうまだか? ワタシおなかが………」


 「あ、何か食べる? だったら私が………」


 「あ! そういえばおかしをもらってたんだった!」


 ラビは急いで逃げた。

 賢明な判断である。


 「そっかぁ」


 ちなみにリンフィアは何故ラビが逃げたのか気がついてない。


 「最近忙しそうですね、ケンくん」


 「大丈夫だと思います。どうせ今頃何処かで修練でも——————」





 ビリリッッ!





 「「!」」


 リンフィアとニールは一斉に同じ方角を向いた。

 その時ラビも同じ方角に顔を向けていた。

 いや、この3人だけでは無い。


 この街のすべての人、子供から年寄り、ひいては赤ん坊までもがその異常なまでに高まった魔力の発生源の方を向いていたのだ。



 「なんッ………という………!」


 「これまさか、ケンくん!?」


 リンフィアとニールは戦慄していた。

 ここまでの魔力を出せる人間がいるのかと。

 何故ならこの魔力の大きさは、


 「父さまと同等、いや、それよりも更に………!」


 「はは………とんだ怪物と知り合ってしまったのだな」


 その魔力は、魔力に長けた魔族達の頂点に立った先代魔王をも凌ぐ凄まじさだった。











———————————————————————————









 そして、当然この街に忍び込んだ魔族達もその魔力を感じ取った。


 「なんだ………この馬鹿げた魔力はッ!!! 誰かいるか!」


 セレスは怒鳴るような声で手下を呼びつけた。


 「如何なさいましたか?」


 「この魔力の発生源を何としても突きとめなさい。こんな魔力を発している奴が敵に回れば作戦は………くっ! 事態は一刻を争う。急ぎなさい!」


 「御意」


 手下の魔族は急いで俺がいる場所に向かった。

 

 「まさかこんな化け物が………でも失敗は許されないわ。我が愛しの君のため、なんとしても成功させなければ」


 セレスは作戦の次の手を打とうと行動を起こした。











———————————————————————————











 「やっべーな、魔力漏れちまったじゃねーか。これだから新魔法は………うん、これはしゃーないな。この辺もボロボロになっちまったし、さっさと逃げるか」


 俺は穴の空いた防壁から街へと走って逃げた。

 するとその瞬間、雲の隙間から月明かりが差し、あたりを照らす。

 光はだんだん広がっていき、俺が元いた場所も明るく照らされていった。


 そして、そこにあったのは、弾け飛んで原型を無くした防壁と、地面に開いた深い穴だった。




 「ハァ、力があり過ぎるってのも困りもんだな」

 


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