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第1118話



 「………」




 やはり無口なサバス。


 だが、どうやら口が利けないわけではないと、先程の反応でコウヤも理解していた。

 だから、他の連中同様に、レイターの嘘でおかしくなっているという懸念は持ちつつ、ダメ元で少し会話を試みていた。




 「アンタ、なんで仲間を裏切った?」



 どう来るか、と少し身構えていたコウヤだったが、返事は案外簡単に帰ってきた。




 「仲間ではないのでね」



 と。




 「なんだ、アンタ意識あんの」


 「………あの催眠じみた能力にかかっていなかったのかという意味なら、当たらずとも遠からず、といったところだ。今は………というか、今朝方少しだけ解けたのだよ。だから会話出来ている。もっとも、普段もあまり話す方ではないがね」


 「久々の会話にはしゃいでるってこと?」


 「そういうことにしておこう」




 少し解けた、ということは、完全に解除されたわけではないらしい。

 心なしか、不機嫌そうにも見える。




 「うーん、他の連中の意識が戻ったから、連鎖的にアンタの意識も戻ったのかな」


 「! 戻せるのか?」


 「多分ね。向こうにいる金ロールちゃんに頼めば………………何で嫌そうな顔してんだよ」




 戻せる、と分かった上で嫌そうな顔を見せるサバス。

 すると、こんな事を言い出した。




 「まだするな。それは勿体ない。というのも、私は戦いが大好きでね。操られてでもいないと、お前はろくに戦ってくれないだろう? 姿を変えたお前には、少し興味が湧いているんだよ」


 「そういう感じね………いいさ。俺も丁度腕試ししたかったし、望んで戦うってんなら心置きなく叩き潰せる」





 奇妙な利害の一致。


 お互いに妙だとは思いつつも、素直に心は踊っていた。

 戦う理由も、丁度いい相手もいる。


 両者共に、今にでも飛び出さんばかりにはを剥き出しにして笑みを浮かべていた。





 「そうそう気をつけろよ。今の私は奴に不利な事は言えないし、奴の望んだ通りに動かなければならない」


 「んじゃつまり?」




 ダンッ、と踏み込んだその刹那、













 「容赦は無しだ」



 「——————!!!」





 刹那、巨体がコウヤの視界を覆った。

 相変わらず、重いものを持っているとは思えない速度、そして威圧感。

 押し潰されそうな圧迫感と共に接近したサバスは、雄叫び越声と共に、ハンマを振り下ろした——————




 「ッッ!!」




 キィィィィィィイン………と、甲高い音が響く。


 サバスは、咄嗟にハンマーを持ち替え、先端ではなくグリップを後ろに向けて突き出し、いつの間にか回り込んでいたコウヤの短剣をギリギリで止めていた。




 「あれま」




 キョトン顔のコウヤ。

 それとは対照的に、サバスはこれまで見せなかった驚きの表情を見せていた。




 「お前、随分と戦い方が変わったな………」



 コウヤはそのまま短剣を押し出して、一旦距離をとった。

 すると、



 「ポイントの割り振りが下手なのか、それともそういう反則じみた何かがあるのか………」



 サバスは、探るようにコウヤのことをじっと見つめた。

 しかし、そんなことをしても仕方がない。

 外見的には何も異常はないのだから。




 「いくら見てもわかんないと思うよ。ま、そういうもんだって受け入れなよ。金髪曰く、クソゲーにはチートが付き物、らしいぜ?」


 「………意味はわからんが、お前が普通ではないことは理解したよ」


 「そうか。じゃあ、もっと凄いところ見せてやるよ」




 「っ——————」





 背後から、凄まじい殺気が襲う。

 ゾワっ、と身体をビクつかせ、サバスは慌ててふりかえった。


 しかし、




 「は………」





 そこには誰もいなかった。

 そう思って今度は元の方向を向くと、案の定コウヤの姿はなかった。


 


 「っ………なるほど、そうなる、っ!?」




 当たる寸前、ギリギリのところで気配を感じ取ったサバスは、半身になって、何とか攻撃を回避した。


 顔の前を通る大きな影。

 見下ろすとそこには、消えたコウヤの姿があった。





 「………やはり普通ではないな、お前。実に興味深い」


 「へへん、凄ぇだろ。けどまだまだこんなもんじゃないぜ」




 コウヤは距離を取ると、サバスの周りを旋回し始めた。


 狙うは常に死角。

 そして、各関節部分。



 ルール上、致命傷を与えて殺してしまえばアウトだ。

 故に、機動力を奪う必要がある。


 殺さず倒すのに最も適したのが殺し屋の能力とは飛んだ皮肉だ。



 しかし、それでアサシンの味が消えるわけではない。




 狙うは一撃のみでいい。

 そして外れれば間合いを取り、スキルや歩法で撹乱し、再び攻撃に転じるヒットアンド戦法で、コウヤはサバスを攻めることにしていた。





 「後どんだけ保つかな?」





 距離を取るコウヤ。

 サバスの視界から外れるべく、周囲を縦横無尽に飛び回る。


 アサシン特有のリズムの外れた歩き方と、視覚誘導。

 そうやって意識を攪乱し、綻びが生じるのを待つ。




 そして、時はやって来る。





 「ッィッ!!」





 視界から完全に外れた。

 数度周囲を飛び跳ね、音を殺して着地。


 魔力を残してデコイを作りつつ、石を落として音を誤魔化す。




 今度は視覚だけではなく、聴覚や魔力反応からも、完全にコウヤの居場所を外させた。


 その瞬間、






 「——————!」






 殺気、複数出現。


 散らばったコウヤの影に合わせて現れたそれぞれの殺気は、まるでそこに誰かがいるような錯覚を起こす。



 あるはずの無い殺気。

 これこそ、アサシンの持つ特殊技能の一つ。



 『虚の刃』だ。





 (よし、取った——————!)

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