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第1112話



 「………………んん………………………っ!!」




 ゾッとしながら急に起き上がる。

 散らかった頭の中から見つけた、少し前の大きな寝坊の記憶で、凄まじい焦りを覚えた。


 体の感覚的に然程時間は立っていない。



 少し無茶な力の使い方をしたが、領主との戦いの時のように、数日眠っていたという事はないらしい。





 「あー焦った………いつの間にか3日経ってましたじゃ洒落になんねー………ん?」




 影に戻らず出っ放しのエルが、布団の上で寝ていた。




 「こいつ………やけに重いと思ったら」




 人間体で思い切り腹の上に乗っかっている。

 せめて一番軽い鯨形態で寝てほしいものだ。




 「おら、起きやがれ。つか寝るなら影の中で寝ろ。あと布団被れ。風邪ひく………………あれ? バハムートって風邪ひくのか?」




 外見は人間になれるが、体の構造はモンスターに近い。

 風邪はひかないのかも知れない。


 が、時間も時間なのでだから大丈夫とはならない。




 「んんんん………………ねむ………」


 「うおっ、動きだした。そんなに眠いなら影に………」




 俺の上をゆっくりと這うエル。

 その姿をぼーっと追っていると、それは視界に入った。


 灯台下暗しとはこの事だろう。

 エルを追って横を向くまで全く気が付かなかった。



 しれっと隣で寝そべっているルージュリアの姿に。





 「何してんだテメェ」


 「同衾です。昨夜はお楽しみでしたね」


 「うるせぇよ。あと嘘つくんじゃねぇよ。お前が居るとこのシーツも布団もほぼシワがねぇじゃねーか。今来たばっかだろ」




 やれやれつまらない方ですねと寝起きの俺に毒づきながら渋々な様子でルージュリアは立ち上がった。




 「ご安心ください。急いで起こそう思ってこの部屋に参りましたが、ほとんど時間は経っていません。何故かは存じ上げませんが、突然飛び起きていらしたので」


 「んんん………色々あんだよ。んで、どうした?」




 急いで起こそうとしたと言うことは、何か用があったはずだ。

 そして予想通り、ルージュリアは急に顔色を変えてこう言った。




 「緊急事態です。どうかご支度を」
















——————————————————————————————

















 「なるほど、血文字か」




 捕らえていた敵の内、レイターの守護者のみ脱走をしていた。

 恐らくは能力の行使によるもの。

 声だけではなく、文字に書いた嘘も現実に変えられる様だ。


 ミレアに頼んで何人かの鼓膜を潰して貰っていたのだが、無駄になってしまったようだ。




 「で、こいつらは置いてかれたわけだ」




 哀れな連中だ。


 特にここに居るヴァレンジアとやらは、サバスが誰かを殺せば失格になる。

 飛んだとばっちりだ。




 「ごめんなさい、ケン君。見張りまでしていたのにみすみす逃してしまいました」


 「いいさ。正直想定内だ。それに、昨日お前が夜話してたのを聞いて、気になったことがあったんだよ」




 使い魔の記憶は、断片的に主人の元へ還元される。

 昨日、エルが聞いていた “本” の話を聞いて、少し気になる事があった。


 その鍵を握っているのは、これまた見事なチャップリンひげを持ったウンディーネの男であった。


 


 「よォ。ヴァレンジアだな」


 「私か? 私の名が聞きたいのか? いいだろう。教えてやろう。私の名はヴァレンジアだ」


 「朝からこってりしてんな」




 こういうやつは話せば話す程変な方向に行くので、単刀直入に聞いてしまおう。




 「ヴァレンジア。サバスはアンタの仲間か?」



 「如何にも。幼少期からの長い付き合いだ」



 「裏切られた時どう思った?」



 「当然悔しいとも。理由もなく裏切られたのだぞ」



 「他の連中も同じ気持ちか?」



 「何を馬鹿なことを………当たり前だろう。我々は皆幼い頃から共にいたのだぞ」





 と、仲間の意思をヴァレンジア代弁したところで、ミレアは首を傾げていた。

 何を聞いているんだ、と言った顔だ。



 ここまで聞けばそうなるだろうが、問題ない。

 次が核心だ。


 


 「そうか。それだけ大事な友人だったんだな。ところで、何かコウヤにまつわるエピソードでもあるか? 友人として、記憶に残っているものは」


 「当然だとも。当然………………とう、ぜん………………ぁ、当然………?」




 うわごとを吐き出すと共に、次第に目の焦点が合わなくなっていく。

 意識の崩壊と共に思考は崩れ、ヴァレンジアはゆっくりと壊れ始めた。


 来た。

 ビンゴだ。



 しかし、このまま壊すわけにもいかない。

 すぐに治療だ。




 「ミレア。“裁定” を頼む」


 「え、あっ………はい!」




 突然もがき始めたヴァレンジア。

 そこに、ミレアが裁定の光を浴びせた。


 すると、




 「………………………ぁ、わ………私………は」




 突然、壊れたヴァレンジアの自我が元に戻った。

 異常が正常に戻ったのだ。


 これで、真実がわかる。



 「目覚めはどうだヴァレンジア。もう一回聞くぞ」




 そして俺は、先程の質問をもう一度行った。




 「サバスは、アンタの仲間か?」


 「………………………サバス………?」




 とぼけ顔だ。

 何も知らないと言った風の顔だ。


 だがこれは、先程の衝撃でこうなっているのではないという確信を持っていた。

 知らない風ではない。


 この男は——————




 「なんの………話だ?」

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