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第1110話



 唐突に閉じた意識は、また唐突に覚まされた。


 眠りについたというよりは、突然視界が切り替わったという感じだった。

 要するに、繋がることは出来たらしい。




 「にしてもここは………………書庫か?」




 目の前にあったボロい訓練場は、巨大な書庫に変わっていた。

 攻略本と全く同じ本が、延々と並んでいる。


 それこそ延々と。




 「おんなじ本ばっかで気味悪ィな………………」




 だだっ広い空間と、それを埋め尽くす本棚。

 どこを見ても景色は変わらない。


 そりゃあ気味が悪いだろう。



 だが、今のところ俺に異常は見当たらない。

 デメリットはなかった、と断ずるには早いが、恐らくこのまま何もしなければ、害を被ることはないだろう。



 まぁ、そんなことはあり得ないのだが。



 そう思いつつ、早速適当に一冊手にとってみる。


 手触りも重さも同じ。

 分厚い攻略本だ。



 だが、




 「軽いな………」




 中身だけ、決定的に違っていた。


 これ以外も手に取ったが、やはり軽い。

 そして本ごとに重さが違う。




 「内容が物理的な重さに反映されてるって感じか?」




 そう思いつつ、少し高い位置の本に手を伸ばした。

 すると、





 「っっ………………ぅ、お………!?」




 ずしり、と。

 手首に凄まじい負担がかかり、驚いて思わず手を離してしまった。


 が、




 「おぉ!?」




 地面に落ちた音はまさしく本が落ちた様な軽い音。


 しかし、あの衝撃が未だに腕に、手に残っている。

 これは紙とは思えない程に、圧倒的に重い。





 「チッ………………こいつは後回しだ。まずは軽い方に手を出しとくか」





 数冊手に取って、最も軽い本を開くことにした。

 これは逆にだいぶ軽い。


 大きさに見合わない軽さだ。



 まずは小手調だ。

 これでダメなら、そこに落ちているあの重い本なんて開けやしない。


 俺は意気込みそのままに、躊躇うことなく本を開い










——————





   


   クエスト   


               剣士


           山賊


                      奪取


                  遺書     


      配達


            サラマンダー


                     墓


  武器           


                   






 ———









 「——————お、ぁ………」





 見える。


 情景が見える。


 というより、思い出している——————………いや、否だ。

 そういうわけではない。


 だが、そう錯覚しそうなほどの、鮮明な記憶だ。

 場面だけではない。


 その時考えていたことや、心の持ち方まで、全てが頭に入ってくる。




 「これ、は………………ミッション………か?」




 そう。

 この記憶は、誰かがミッションを行った時の記憶だ。



 おそらく、ミッションクリアのための模範となる動きをここに載せているのだろう。

 まるで他人の人生を追体験している様な気分になる。




 「なるほど…………コウヤがおかしくなるわけだ」




 ここにある記憶は、たった数日のもの。

 それに、ミッションに関係ない記憶等は省かれている。


 それでも、これが自分だと錯覚しそうになるほどのものだ。




 これをひと一人分そのまま頭に入ってくれば、まぁ混乱するだろう。

 今の自分はどっちなんだ、と。



 しかし、




 「けど………うん。やっぱそうだ。全然なんともない」




 やはり、俺は膨大な情報に強いらしい。

 一瞬混乱しても、すぐにまとめられる。


 それこそ、ひと一人分まとめて入ってこられようが、この感覚を理解した以上、どうにでもなる。




 こうなればもうこっちのものだ。

 早速次の本に移るために、俺は本を閉じた——————





 「よし………………ぁ、あ、れ………………?」





 その瞬間、頭の中に入ってきたミッションの記憶が、そのまま消えてしまった。

 まさかと思い、本を開いてみる。


 すると、




 「ん………………あるよな」




 記憶が戻った。

 しかし、本を閉じると、




 「………………やっぱ消えてる………ってことは」




 もしかせずとも、答えは決まっている。

 この本の情報は、本を開いている間でしか頭に残らない。




 「そうか、保持できないか………………いや、その方が都合がいいか?」




 消せるときに消せるようになれば、膨大な情報が負担になった時も対処できる。

 これはメリットと捉えていいだろう。




 「………………さて」




 視線を落とし、地面に落ちている重い本に向ける。


 びくともしないほど重いわけではない。

 だが、入っている情報は確実に相当大きいものだ。

 一応、中を覗くだけ除いてみることにしよう、





 「んじゃ早速………………」




 と、思っていたが、俺は伸ばした手を一度引っ込めた。



 開いたとして………どうすればいい?



 そもそも俺は、本の内部をいじくってコウヤが安全に能力を使える様にするためにやってきたのだ。

 しかし、このまま適当に書き込んでコウヤで実験をするわけにはいかない。



 が、ここに丁度いいモルモットが1匹いる。




 「うぉ、重………………っと………ものはっ………試しだ」




 どうにかこうにか本を抱え、表紙に手を置く。

 そして、ゆっくりと、その本を開いていった——————


















 頭の中に、誰かが入り込む。


 だが、()()()問題ない。



 俺はヒジリケン。

 今見えているこいつは、この本が見せている人物。


 ただそれだけだ。




 本の中身は、とある人物の人生であった。

 おそらく、本の種類としては、コウヤが使ったグラディエーターについて書かれたものと同じだ。



 登場するのは、名もなき魔法使い。

 修行に明け暮れ、血も滲む様な努力と山となった犠牲の果てに王となった男の話だ。



 ………恐らく、これはレッドカーペットの元のなるストーリーだ。



 そもそもレッドカーペットとは、俺たちプレイヤーが王になるために作られた道筋だ。

 この一生を追体験し、物語に登場するような試練を乗り越えれば、この本に描かれたように王になれるのだろう。



 それはいい。

 それについては理解した。


 しかし、俺の意識は全く別のところにあった。





 さぁ、ここが問題だ。




 その魔法使いの辿った道筋は、本を開いている今の俺の頭の中にある。

 当然、日常のついても描かれており、鏡を見れば自分がどんな顔なのかはわかる。



 正直、何故なのかはわからない。

 だが、恐らく何か意味がある。



 鏡に映った魔法使いは、髪を黒に染めたコウヤだった。

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