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第1109話



 「結局………………使うことになんのか………」




 やれやれと頭を抱えるコウヤ。

 平気そうにしているが、内心穏やかではないだろう。


 何せこれはコウヤにとって大きなトラウマだ。

 本当に死ぬ一歩手前まで来なければ、使いたくない代物であろう。




 「強制はしない。お前に無理をさせてまでやる事でもないからな」




 なんて白々しい事を口にしているのだろう。


 自己嫌悪に陥ってしまいそうだ。

 胸のど真ん中にモヤが溜まっている。



 だが、出来れば許して欲しい。


 言い訳じみているが、これはコウヤのトラウマ解消のためでもある。




 ただ、そこは敢えて言わない。

 責任感を利用して、選択肢を塞ぐような真似はしたくない。



 ………しかし、奴の性格上、おそらく答えはもう………





 「!………っと」




 本を投げ渡される。

 ムスッとした顔をしつつも、コウヤはどこか受け入れた様子であった。





 「………いいのか?」


 「わざわざ呼びつけたんだ。何か安全に使うための考えはあるんだろ?」


 「だからこその実験だ。気休めかもしれねーけど、まずは軽く、ゆっくりやっていく。この前みたいな事には絶対にさせねーつもりだ。そんで、ルージュリア」




 蚊帳の外とでも思ったのか、不意に呼びつけるとルージュリアは驚いた様な顔を見せた。





 「え? 私………ですか?」


 「お前、ホントはめちゃくちゃ強いだろ? 相手してくれると助かるんだけど」


 「ああ、そういう事………………ええ、構いませんわ。最近ろくに身体を動かしていないので、少し楽しみです」





 以前ピクシル………ピクシー族長と対峙した時にほんの一瞬見せた力は、確実に俺たち以上であった。

 おそらく、【ノーム】にも勝るとも劣らない実力者であろう。




 「けど、まずは俺の方が成功しなきゃなんだよな………」




 実物に触れて “視て” 初めてわかる。

 そこにはあまりにも膨大な情報が詰まっている。


 流石に、この変異した妖精界のあらゆる情報が入っているというだけはある。




 「どうするつもりなんだよ、金髪。“神の知恵” で使える様にするっつってたけど、お前のその力って知識を増やして頭を良くするみたいな力だろ?」


 「第一段階はな。知識は本来ある能力の前準備に過ぎない。本来の能力は、そんなもんじゃない」






 ——————この世界にやって来た時、俺が初めに得たのは、神の知恵によって得られる知識だ。

 それは本来の能力の基盤であり、知恵の神の特異点としての能力の第一段階と言える。



 その次の段階が、ロゼルカ邸で得た “知る力” だ。

 視認したモノの情報を見抜く力がある。



 この二つは、揃ってこそ真価を発揮する。

 情報を持っているだけでは先に進めないし、見えただけではそれがなんなのかわからない。




 “見た上でそれを理解する”




 二つが揃った事で、俺は今この段階に立つ事が出来た。




 そして、最後。

 神の知恵の最終段階であり、この力の本来の使い方。


 



 そもそも【神の知恵】とは何か。

 神の持つ莫大な知識? 人を超越した圧倒的な思考力?



 否。



 そんなものではない。

 それは、文字通り神としての力を行使するための知恵。

 大袈裟な意味でなく、創造主たる神を思わせるような、絶対的な能力。



 初めに全てを知り、次いで全てを見て理解する。


 そして最後に、全てを創り、また創り変える。




 そう。

 神の知恵とは、この世界に干渉し、そして意のままに操る能力のこと。


 神の如き知恵ではない。

 神となるための知恵なのだ。





 「ま、不完全だけどな」




 最終段階はまだ完全には扱えない。

 先代命の神との戦いで、切り札として使ったが、あれは暴走状態もいいところだ。

 世界に干渉し、ルールを変える能力はまだ俺には御しきれなかった。


 ただ、それは裏を返せば一応使うだけなら可能という事。

 そして、今の俺は神の知恵の使用時間を縮めることで、能力を濃縮させる事が出来る。


 満更望みはゼロではない。





 「でも、元の性質が似ているこの本なら、今の俺でも扱える気がする」


 「気をつけろよ。たった一回普通に使っただけは俺は気が狂いかけたんだ。無理矢理違う使い方をしようとすればどんな目に遭うか………………」





 コウヤはこう言っているが、リスクは承知の上だ。

 この本も、俺の力も、人の領域をとっくに外れている。


 ああ、嫌な汗だ。

 今になって少し怖気付き出した。

 首筋をそっと伝う雫がこそばゆい。

 緊張で、全身の感覚が鋭敏になっている。




 しかし、それは俺への危害を恐れているわけではない。

 万が一、コウヤに何か起きたら——————





 「!」


 「お前がビビってどうする」





 覚悟はできている。

 言わずとも、背中に添えられた拳から、それが伝わってくる。


 応えねば。

 覚悟には、覚悟を以って。





 「………よし!!」




 枷が外れた様に、手足が軽くなるのがわかる。

 澱みなく神威は全身を巡り、準備は整った。



 今日はもう残り少ない神の知恵の発動時間。

 そのありったけを、今ここに。





 「いくぞ——————」





 かつての感覚を頼りに、俺は手にある本に神威を流し込み、能力を行使した。


 さぁ、鬼が出るか蛇が出るか。








 そう考えたところで、俺の意識は途切れていた。

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