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第1103話



 「あいつ………やりやがった………………!!」




 爆発後の煙の向こう側に、まだ魔力反応はある。

 かなり視界が悪く、地面も抉れておりそこの隠れて影も見えないが、たしかに生きている。


 ただ、かなり決定的なダメージを与えた。




 「フン………」




 剣を抜き、冷たい目でレイターのいた場所を睨むと、くるり踵を返した。


 圧倒的過ぎる。

 あまりにも、一瞬で終わってしまった。

 これまでの苦戦が嘘だったかの様だ。



 何故これ程までの能力を今まで封じていたのだろうか。




 「………いや」




 そんな事は言うまでもなく、何かデメリットがあるからだろう。


 今のところ、それがなんなのかはわからない。

 あれだけ怯えていたのだ。

 大きなものに違いない。



 だが、今はとりあえず、それを無駄にしないためにもレイターを捕縛してサバスを退けなければならない。



 と、思っていると、





 「………」


 「?」





 サバスはニヤリと意味深な笑みを浮かべた。

 すると、




 「あ!?」




 直後、脱兎の如く逃走し始めた。


 戦う気は全く無くしていなかったので、つい不意をつかれた。

 が、大したロスでもない。

 当然、追いかける。




 「コウヤ!!」


 「………?」




 フイっとこちらを向くコウヤ。

 少し様子はおかしいが、どうやら暴走状態とかそう言った類では無いらしい。




 「おお、一応反応は………………っ、じゃなくて、すぐにサバスを………………………反応? ………!?」





 だが、“おかしい” のだ。

 反応なんてするわけがない。


 何故ならコウヤは、先程自ら鼓膜を破ったのだから。




 「………まさか、さっきの変化で傷も治った………のか?」



 「なら、ば………好都合………………っ、だ!!」



 「「!!」」


 




 声。


 これは、レイターの声だ。

 この状況はマズい。

 コウヤの耳は治り、サイレントの魔法も解除されている。




 つまり、声が届く。




 「くそっ!!」


 「『ボクは、喰らって……………ない!!』」




 そう言って、人影が爆発後の煙から姿を見せた。

 そこには、無傷に戻っていたレイターの姿があった。



 「フゥ………………流石に今度ばかりは観念したよ。本当にツイてる」


 「チッ………クソッ、油断した………!!」




 やはり、非現実を現実に変える能力だ。


 攻撃を喰らったと言うIFを実際起こったことにすり替えたのだ。

 そして恐く、ある一定範囲内の者全員がそれを聞く必要があると見た。


 好都合とはそういう事だろう。

 恐らくサバスは逃げたのではなく、その範囲外まで逃れたのだ。




 「さて………………ここまでコケにされたんだ。すぐにでも清算させてもらう」


 「………………」





 お互い、第二ラウンドを始めるために身構える。


 が、


 


 「………と言いたいところだけど、今日のところは退散させてもらうよ。君の方にも隠し玉があったら、流石に不味いからね」




 わざとらしく手を上げながらレイターはそう言った。

 確かに、このまま戦っても泥試合になるのは目に見えている。

 立ち去るのが賢明だろう。






 ()()()()、だが。






 「だから、『ボクはここにいなかった』って事で」


 「!!」




 また、視界から消えていった。

 音もなく、消えたと言う感覚すら消していく様な消え方はやはり不気味に思えた。





 「ふぅ………………」





 とりあえずは一安心だ。


 結局、サバスの能力はわからなかったが、色々と向こうの手の内が探れただけ良しとしよう。



 ただ、気が抜けたのか一気に疲れが押し寄せてくる。

 重石を乗せられるこの感覚は、正直嫌いじゃない。


 それだけ平和な状況って事だ。




 「終わったな、コウヤ。さっさと帰ろうぜ」


 「………………?」





 返事がない。

 振り返りはしたが、そのままただジッと俺を見据えるだけであった。





 「なんだよ。俺の顔に何かついてんのか?」




 そういえば、変身してからはまともに話していない。

 この変身のリスクもよくわかっていないだけに少し心配だ。

 だが、敵意があるわけではない。


 ただジッと、不思議そうな目でこちらを見ている。





 「………ぁ」




 お、と。

 思わず声がでた。


 どうやらようやく口を開くつもりらしい。




 「ったく………無口はイーボのお株だった」





 「だ、れ………だ。おまえ」





 「——————は」






 一瞬、頭が真っ白になった。

 頭の中に何もない。

 意識も思考も何もかもが抜け出ていった。



 そして、それら全ては前触れもなく突然動き始める。

 回り出した思考は、未だ呆然としている俺の横っ面を叩く様な事実を、目の前に提示した。




 目の前にいる男の、記憶がない、と。


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