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第1100話



 視覚聴覚と、魔力探知を封じた上での攻撃。


 一撃、決定的なダメージさえ与えられたら、そのまま一気に崩す自信があった。

 殺すのは無しなので、狙いは首ではなく、足の腱。


 一点に狙いを定め、上空から一気に下降する。





 確実に、そして深く、治癒できないほどに大きな傷を——————





 「………あ?」




 視界の端に、何かが映る。

 反射的に意識はそちらを向き、俺の眼はその物体を見定めた。



 そして、異常を認知した。





 「なっ………………」





 吹き飛んでいるのはコウヤ。

 そして、それを追うようにもう一つの塊が側を飛んでいた。


 そう、サバスだ。


 俺たちよりも、一段上の速度で、コウヤに迫っていた。





 「クソッ!?」





 風魔法で一気に方向転換。

 地面に向かい一気に加速し、即座に着地する。

 その勢いのまま、地面を蹴り、コウヤの元へと駆け出した。





 「ぅ………が、ぁ………」





 マズい。


 (知る力)を使っているからわかるが、呼吸が出来ていない。

 折れた肋が肺に刺さっている。


 しかし、本当に異常事態だと気づいたのは、その後であった。




 「………?」




 サバスを見ていると、妙な胸騒ぎを覚える。

 こちらから僅かに覗ける横顔。


 コウヤを吹き飛ばしたハンマーを振りかぶり、頬を吊り上げ、舌舐めずりしている奴のその眼は——————人殺しのそれであった。




 「——————!!」




 あの眼は間違いない。

 奴の目には、コウヤが獲物として映っている。


 冗談じゃない。

 ルール無用だ。


 殺しはしないんじゃなかったのか?



 ………と。

 思っているその横で、ふと新たな考えが頭を過ぎる。




 そうだ。

 殺しは無し。

 しかし、この場合殺すのはレイターではない。



 まさか、まさかとは思うが、あまりにも無理矢理で策というには奇策を通り越してもはや愚策と言えるものだが、サバスはレイターの付き人ではない………のか?



 後ろから、笑い声が聞こえた気がした。





 音は魔法で聞こえない。


 だが、後ろを見てみるとやはり笑みを浮かべている。

 何かに気づいた俺を、勝ち誇った様子で嘲っていた。

 そして、聞こえなくても口の動きで何を言っているのかは理解した。





 せ い か い だ






 と。





 「………………………!!」





 最悪だ。

 どんな手を使ったのかは今は考えないが、奴が殺してもレイターにデメリットはない。


 今、この状況は完全にレイターの思い描く通りになっていた——————








 なんて、悔しがると思ったか?





 「!?」




 そう、今度は俺がレイターに向かってそう言った。

 どうやら、読唇術は奴も得意技のようだ。


 俺を見た途端、怪訝そうな顔をした。




 ああ、念のため音を消したままでよかった。

 遠くから聞こえる風の音に、奴らはまだ気づいていない。



 だから俺は、少しでもそれを有効に使うために、瀕死のコウヤに指向性のある音魔法で指示を送った。





 『神威も使って防御しろ』


 「!!」




 痛みを押し殺し、足掻くように声にならない雄叫びを上げながら、武器を握りしめる。

 迫り来る巨大な大槌。


 剣を前に構え、そして神威を解放し、遠慮のない一撃がそこに叩き込まれた。




 「ッッッ〜〜〜〜〜〜!!!!!!」




 全身に走る激痛。

 顔色が一変し、滝のような汗が流れる。

 しかし、肺へのダメージが悲鳴すらあげることを許さない。


 それでも、コウヤは耐えた。


 コウヤは眼をかっ開き、血反吐を吐き散らしながら、なんとかサバスの初撃を受け止めたのだ。



 が、それはまだ一撃。

 再度吹き飛ばされたコウヤを、サバスはやはり狙っていた。


 不気味な笑みを浮かべ、当然追撃しようとするサバス。

 その両者の間に、




 「………?」




 フッ、と奇妙な風が吹いた。


 首を傾げる………………暇もなく、そよ風は暴風へ一転した。





 「っ!?」




 急ブレーキをかけ、咄嗟に後退するサバス。

 その目の前には、一本の鉄の槍が、竜巻を纏いながら地面に深々と刺さっていた。



 これは、G・Rの槍だ。




 「じ、ゆう……………じ………………」




 これ以上神の知恵を発動しっぱなしにするとマズいので、俺は音魔法も解除しつつ、そのまま吹き飛ばされたコウヤの元に向かった。




 「おい、しっかりしろ!!」


 「ひゅ………………………ひゅー………………」




 再び一瞬、神の知恵を発動。

 残り魔力の2割を使い、最低限の回復魔法を施し、肺と骨を修復。


 ギリギリで死なせずに済んだ。



 「ふーっ………危なかった…………」


 「お前、一体どうやって…………」




 簡単な話だ。

 あの短時間では、G・Rも然程遠くにマーキングは出来ない。


 だから、それならいっそこちらを援護してもらおうと思ったのだ。

 合流してマーキングに向かったG・Rが、ろくに時間が経っていないうちに戻ってきて帰巣が使えたのはそのためだ。


 


 色々手伝って貰うの“色々” というのは要はこの援護と近場へのマーキングのことだった。

 まぁ、1人で戦うつもりだったので、まさかコウヤの援護に使ってもらうことになるとは思わなかった。



 G・Rも、タイミングと場所をよく考えて投げてくれたと思う。

 お陰で、まだ戦えそうだ。



 ただ、





 「………とはいえ、状況は振り出し………………いや、」




 確実に、ジリ貧であった。


 敵はまだダメージをろくに食らっていない。

 だが、こちらはコウヤがボロボロな上に、俺ももう神の知恵の制限時間が半分ほど。

 魔力に至っては半分以下だ。


 ここから何とか打開しなければ、俺たちは負ける。




 それどころか、最悪の結果命を落とすことになる。

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