第1098話
作戦を考えるべく、一度部屋に戻ることにした。
が、その前に処理しておくべき問題がある。
それは、
「あとはこの人達をどうにかしなきゃですね」
そう、リンフィアの言う通り、捉えた敵勢力の処遇という問題が残っていた。
殺しはなしだし、そもそも悪人ではないので極端に手荒な真似をするわけにもいかない。
中々難しい問題だ。
なので、
「埋めとくか」
「そうしましょう」
「野蛮が過ぎる!!」
と、俺とルージュリアで穴を掘ろうとすると、すかさずコウヤに止められた。
流石に半分冗談だ。
「ったく。お前らに任せるとろくなことにならないから、みんなで決める………………あれ?」
くるりと振り返ったコウヤは、何かに気がつくとキョロキョロと辺りを見回し始めた。
なんとなく、何が気になっているのかはわかる。
「えー………G・Rちゃんどこいった?」
「おぉ、あいつは合流してすぐちょっと色々頼み事を任せたから今はいないぞ」
「頼み?」
中々重要な頼み事だ。
用意しておくに越したことはない。
正直、今回の敵は中々厄介そうだ。
「まぁいいや。えーっとそうだな………要は動けない状況を作ればいいんだし。とりあえず全員服を剥いで、そこそこ人が通る場所に置き去りにするってのはどう?」
「おい、なんでさっき俺たちを非難した」
結局、丁度いい案はそう決まりそうもない。
楽勝な3日間と思ったが、意外と前途多難だ。
心なしか、ため息の回数も増えて来た。
「あ、いたいた」
声が聞こえたので横を見ると、G・Rがおつかいから帰って来ていた。
「終わったよ。いつでも使える」
「おう、サンキューな」
………まぁ、ここ妖精界に来て間怠っこしいのは増えて慣れて来た部分もある。
見慣れた曇り模様に、今更一喜一憂する程余裕がないわけではない。
とりあえず、一つの準備が整ったことをよしとしておこう——————
と、折角前を向いたのに。
「やぁやぁ、君たち」
レイターは向こうからやって来た。
「………あれは」
レイター………と、仲間と思われる人物が、無造作に近づいてきた。
その仲間も、だいぶ危険な雰囲気を纏っている。
あれはおそらく、敵方の最後の1人………12人目だ。
「おいおい、再登場が早すぎやしねーか?」
「善は急げっていうだろう? ボク、思い立ったら動くタイプなのさ」
急がば回って欲しかったが、そうも言ってられない。
これは、完全に一触即発だ。
「潰すなら、最大の敵の手の内を知っていて、尚且つこちらの手がバレていない今だと思ってね。せめて数人はここで叩き潰しておこうかと思っているんだよ」
「奇遇だな。俺も余計な知恵を回される前に潰しときたいと思ってたところだ」
なんて、ハッタリだ。
戦うとしてもそれは今じゃない。
少なくとも、レイターではない方の敵の情報が少し欲しかった。
しかし、不幸中の幸いか、この状況は想定内であった。
最後の1人も、このタイミングを狙ってやってくるのも、読めない展開ではなかった。
だからこその準備である。
「………お前ら、全員集まれ」
指示を出すと、ミレア達は直ぐに周りに集まった。
5対2。
これだけ見れば圧倒的有利。
しかし、数の不利がわかっておいてわざわざ出向いたのだから、レイター達は何か案があるはずだ。
だから、
「G・R。早速頼む」
「………うん。わかった」
G・Rは、ミレアとリンフィアの腕をグッと強く掴んだ。
「え!?」
「あっ………G・Rちゃん!?」
予定通り動くなら、この2人は無理矢理掴んでおかなければ、多分残ると言い始める。
いや、リンフィアはまだ大丈夫かもしれないが、ミレアは特に不安だ。
敵の能力に対して最も有効な相手が自分だと自覚しているだけに、人任せにする事にはかなり反発するだろう。
しかし、ここで時間をとっている暇はないのだ。
言葉一つで能力を発動しかねない以上、行動は迅速に行うべきだ。
その点、既にちゃっかりG・Rの袖を掴んでいるルージュリアは察しがいい。
逃げる気満々なのはどうかと思うが。
「それじゃあ、頑張って下さい。あ・な・た」
「ゾワっとした。今すげぇゾワっとした………………コウヤも引っ張ってけ。すぐ合流する」
「承りました」
首を傾げているレイター。
何をしようとしているのか、検討もつかないだろう。
なので、これからいいものを見せてやる事にしよう。
「一体何をしているんだ?」
「戦いの準備さ。俺とテメェらの、な」
そう言うと、予想通りミレアの抵抗が一気に増した。
「っ、だったら私が、私の力で………!!」
「お前の出番はまだ先だ。3日間、ルージュリアの側を離れんなよ」
これ以上の聞く耳はお互いに持たない。
俺は背を向け、ミレアは腕を振り回していた。
しかし、掴んでいるのはG・R。
単純な力では、本気のルージュリアを除いて最強であるこいつの腕を振り払えるわけがなかった。
「頼む」
「ケンく——————」
ブツっ、と声が途切れる。
G・Rの持つ特殊スキル【帰巣】
指示していた通り、別の場所にマーキングしてくれたらしい。
ありがたい。
そしてありがたいついでに、目を丸くしたレイターの顔も見ることが出来て、俺は満足だ。
「消えた………………ハッ、まさかそんな隠し玉があるとはね」
一切の感情を見せないポーカーフェイス。
俺の知る力でも、他人の感情を見ることは出来ない。
だが、少しは嫌がってくれているのなら、嬉しい限りだ。
「ワープ出来るのはお前だけじゃねーって事だ」
「まぁいいさ。丁度これで2対2。いい勝負になるかもしれないな」
「そうそう、2対………………………2?」
トントン、と肩を叩かれる。
俺は恐る恐る振り返ってみた。
すると、
「おっす」
「………………………は?」
涼しげな顔をしたコウヤが、俺の後ろに立っていた。




