第1097話
「あーあ、取り逃しちまった。全く、あいつらはしっかりやってるってのにこれじゃカッコつかねーな」
「仕方ありませんよ。あれは確実に他の候補と比べて別格ですもの」
あの観察眼に加え、身体能力と奇妙な能力まで備えている。
こいつはなかなか厄介だ。
特にあの能力は、気を付けておくべきだろう。
あれは単なる瞬間移動系の能力ではない。
居なくなったというより、居なかった、というふうに感じた。
「神威じゃないってことはスキル………いや、」
「レッドカーペットかもしれませんね」
ルージュリアと同じことを考えていた。
奴は元夫候補である以前に、羽のカケラを持つ王候補だ。
その可能性は十分にある。
「だとしたら一体なんの役なのか。コウヤに聞こうにも今のところは絞りきれねーな」
「あ………噂をすれば、ですよ」
遠くから手を振りながら走る人影を発見。
もちろんコウヤだ
「とりあえず、一旦合流するか」
「そうですね」
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「おー、大漁だな」
敵方10人を、登山用ロープでこれでもかというほど巻き付けていた。
普通ならこんなロープは簡単に解けるだろうが、抵抗した瞬間ボッコボコにされるのがわかってるのか異様に大人しくしていた。
というか、すでに数人実演済みの様であった。
「よォ、どうだった俺の自慢の仲間たちは。強かったろ?」
「………………」
よっぽど応えたのか、反抗的な態度はあまり取ってこない。
これが演技か否か。
レイターの例もあるので、油断ならない。
ただ、当分警戒すべきはこいつらよりもレイターと残りの一人だ。
敵は12人と言っていたので、ここにいる10人とレイターを入れてまだ11人しかいない。
敵の得体が知れない以上、そいつもレイター同様要警戒だ。
しかし、それはこいつらの警戒を緩める理由にはならない………と、普通は思うが、
「ミレア、ちょっとこいつら “視て” くれ」
「? はい」
そう。
俺たちには、超性格な嘘発見器が味方にいるのだ。
これで、確実に探ることが出来る。
「さて、お前らに質問だ。この中に、レイターの仲間はいるか?」
ミレアに目配せをしてみる。
しかし、ぶるぶると首を横に振っていた。
どうやら、思わしい反応は見られない様だ。
「ダメか………」
「あの、これは何を調べているんですか?」
流石に説明不足だったからか、ミレアがそう尋ねてきた。
「ん? ああ、これはさっき俺が戦った王候補の守護者を炙り出そうとしてんだ。この中にいると思ったんだけど、それっぽい奴は居なかったんだろ?」
「居ませんでしたけど………………守護者?」
すると、そう言いながらミレアは徐に歩き出した。
捕縛されている男の前に立ち、じっと見下ろしている。
じっと睨み合い、
「俺は、ここに——————」
無表情を貫いていた男の顔が一変し、何かを口ずさみ始めた。
間違いない。
こいつが守護者だ。
恐らく、勘づかれたことに勘づいたのだ。
だとすれば、こいつもレッドカーペットを持っている可能性が高い。
つまり、逃げれる。
先程の様に、消えられる可能性がある。
何か止める方法は——————
「………!!」
ある。
確証はないが、もしも、それが俺の思っている様な能力であれば、
「【裁定】しろッ!!!」
「!!」
そして、次の瞬間、男は勝ち誇った顔で叫んだ。
「“初めから居なかった”——————!!」
「………………は?」
蒼白になった男の顔が、ミレアの出す光に照らされていた。
まさに、間一髪。
ミレアの【裁定】が間に合った。
無効化に成功したのだ。
「危ねェ………………よく間に合わせたな、ミレア」
「何かあった時のために、“眼” と “裁定” は備えていましたから」
お陰で、敵の能力も見えて来た。
「お前ら、一体何を………」
「嘘を現実にする。もしくは現実をなんらかの形で侵食する、ってところか」
「!!」
虚をつく形でそういってみると、崩れかかっていたポーカーフェイスが、とうとう崩れた。
恐らく、それで正解だ。
去り際にレイターが言っていた、『もう逃げている』も、この男が言っていた『初めからいなかった』も、同じ能力の宣言といったところだろう。
口に出した非現実を現実へ変える。
もしくはそう見せかける。
厄介だ。
後者だとしても、先程のレイターの様子を見る限り真偽をに抜くのは極めて困難だ。
前者に至っては反則に近い。
ミレアがいなければ、だが。
「お前ェッ——————」
「はい、お休み」
神の知恵——————からの、雷魔法連続使用。
男は、口から煙を吐きながら、白目を剥いていた。
さて、とりあえず厄介な奴は封じた。
後3日。
ルージュリアをしっかり守り切るための段取りを決めなければ。




