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第1089話



 広大な湖の上に浮かぶ宮殿と、それを取り囲む小島。

 プルーを基調に建造物は形成され、至るとこに施された彫刻は、絶妙に水と調和していた。



 移動手段は徒歩と船。


 “水上” を意識させつつ、しかし船特有の移動の面倒臭さは、水流を魔法で操る事でうまく解消し、馬車等の乗り物のように歩くよりもよっぽど快適に早く移動ができる。


 カイトとはまた違う自然の利用の仕方に、思わず感嘆の声が漏れた。


 

 水上都市アクアレア。



 ここは、その名に相応しい美しい里であった。




 「スゲェな………」


 「ここが噂のアクアレアか。金髪、お前のおかげで気づけたぜ。ウンディーネは俺好みのグラマー美女の多い種族………ぺたぺたスカスカのエルフとはわけが違う!」


 「「………」」




 コウヤはもうウッキウキになっている。

 すごい目でG・Rとミレアが睨んでいるが俺のせいではない。


 まぁ、目下目的があるわけでもないので、2人から処刑された後、数日なら浮かれてもいいだろう。

 さっさと検問を通って宿を探そう。




 「ケンくん、今回は散歩しないんですか?」




 リンフィアのいう散歩は、カイトに来たばかりの俺が宿やら何やらを決めずに真っ先に散策に出た事を言っているのだろう。


 新しく来た場所を散歩する趣味はあるが、今回は真っ先にする必要はないのだ。




 「ああ。カイトに来たばっかの時に散歩したのは、ゲームとしてのフラグを見つけるのが目的だったからな。真っ先にやったのも、他のプレイヤーを出し抜くためだ。ある程度道筋が決まってる今は急ぐ必要はねーよ」


 「そうなんですか」




 今回は泊まる場所をちゃんと決めて行動するつもりだ。





 「はい、スレンダーと100万回唱えてねー」


 「ぎ、ギブ………………」


 「ギブじゃなくてスレンダーだよー」





 腕をすごい方に曲げられている。

 何が怖いって、無言で曲げるミレアが一番怖い。


 許せコウヤ。


 俺には助けられん。










——————————————————————————————













 「ダメ………?」


 「はい。現在、アクアレアでは次期ウンディーネ族長を決める重要な祭儀が行われており、一時封鎖するよう仰せつかっております」




 と、いう事で、思いがけない足止めを喰らう事になった。

 そんな事はルージュリアからは聞いていないが、まぁ、あるのなら仕方ない。




 「参考までにどんくらいかかる?」


 「一月ほどはかかると思われるので、観光や資材調達であれば隣のウェーブルに行かれることをおすすめします」


 「なるほど。ちょっと待って」



 俺は一度後ろで待機している4人のところまで戻った。


 とりあえず、現状はどうしようも無い。

 というわけで、一つ提案することにした。




 「なぁ、こいつらど突いて入り込んで、後でルージュリアにどうにかしてもらおうぜ」


 「アホかお前!! 捕まるわ!!」




 コウヤに真っ先に却下された。

 解せぬ。




 「えー。減るもんじゃねーしいいだろ。痛みを感じないように完璧にオネンネさせれば誰も傷つかない。おぉ完璧だ」


 「傷ならつくぜ。俺たちの経歴にな」


 「いいじゃねーか。ついてダメになる程大した経歴持ってねーだろ、お前」


 「なんて事言うんだオメー。そしてさりげなくお前とかヤメロ。俺だけ大したことないみたいになるだろうが」





 しかし、このまま時間を無駄にするのももったいない。

 となると、次はどうやって侵入するかと言う話になるが、そんな事を考えていると、後ろから声をかけられた。




 「少年、今 “ルージュリア” と言ったか?」




 俺たち5人は一斉にハッとした。

 どうやら聞かれてしまったらしい。




 「うおっ、聞いてやがった! やるしかねーぞ、お前ら!!」


 「やるな不良が!!」


 「もしや………………君がヒジリケンか?」




 そして早くも指名手配に………………というわけではなさそうだ。


 


 「ああ、そうだけど………」













——————————————————————————————











 「何だ、アンタら俺たちの事聞いてたのか」




 どうやら、俺たちが来たら通すようにルージュリアに言われていたらしい。




 「大変失礼しました。なにぶん、簡単な説明しか受けておりませんでしたので」




 置き手紙をおいて先に行くくらいだ。

 確かに急いではいただろう。




 「いや、そりゃ世話かけたな。ちなみに、なんて聞いてたんだ?」


 「人数は5人。目つき、口、ガラの悪い金髪の人間が来たら間違いない、と」



 「お前じゃん」




 さらっと認めるコウヤ。

 間違ってはいないが、やはり釈然としない。




 「まぁ、ともかく穏便に入れただけよかった。よかったんだけど………」




 やたら豪華な船に揺られ、見た感じ一本道になっている水路を進んでいる。


 目的地は、恐らく目の前にある宮殿。




 「なんであっちに?」


 「ルージュリア様からのご命令です。あてもないだろうからと通すように仰せつかっております」




 あいつ、色々と説明を省いてるな、と思いつつも、宿代が浮いたと内心よろこんでいた。


 まぁ、知り合いの実家なら色々と都合もいいだろう。


 ましてやあいつは族長の娘だ。

 帰ってよかったのかもしれない。








 と、この時ばかりは思っていた。

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