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第109話


 「忠誠心の弱いやつで助かったぜ。お陰で情報を聞き出せた」


 俺は手に付けていた魔法を解除して、手についた砂粒を叩いた。


 ホロー曰く、薬を売っていたのは、そういう状況下に置かせて利用可能な人間を増やすためだと言う。

 中には元は病人ではなかったが、魔族の手で病人にさせられた人もいるらしい。


 利用可能、つまり子供冒険者のようにヨルデに雇わせて、魔石回収をさせると言うものだ。

 この街に住んでおり、ある程度の強さを持った人間でプレートを持っていなかったら大体は訳あって冒険者では無い人間だ。

 そう言う人間にはうってつけだろう。


 病人がいると言うポイントは重要だ。

 そうすれば更に金が必要と言うことで必死に辞めずに働き続ける。

 


 「何もかんも関係してるな………胸糞悪りィ」


 残った病人はギルドに対処してもらう事にした。

 普段手をつけない貧民街でも今回の件が関わってるとなるとギルドも手伝ってくれるはずだ。

 一度見た事で簡単な治し方も分かった。

 それをすればわざわざ複合魔法を使わずとも治せる。


 「またギルドに戻ンのかー。だりィなー」


 今日だけでものすごい移動してる気がする。


 「あ、ケンさん帰るンですか?」


 「おう。一応そのつもりだ。ガキどもによろしくな。土産も渡してっから期待しとけ」


 「はぁ」


 この後ガキどもに渡した金貨を見て驚くのは想像に難くない。


 「またな、ブル」


 「はい、また」


 俺はギルドに行って、この事をダグラスに伝えた。










———————————————————————————









 「………お、動いたね」


 トモは何もない空間でフワフワ浮かんでいた。

 魔法ではないのでどう言う原理で浮いてるか知らない。

 自由なやつだ。


 「召喚からもうどれくらい経ったかなぁどちらにせよ、これで計画の内2つは第2段階へ入ったということかな。向こうはちょっとフライング気味っぽいけど」


 空中でくるくる回ってケンたちの様子を眺めるトモ。

 やはりイマイチ真意を掴めない。


 「よう、トモ」


 「お、どうしたんだい? 言っとくけど力比べはしないよ。空間に亀裂ができたらまた大嵐や津波が来ちゃうからね」


 「わぁーってるよ。俺もめったやたらにそんなことはせん」


 以前、こちらの世界で起きた災害のいくつかの原因はこいつらのケンカが元で起きている。


 「そっか。なら良いや。君はどう思う?」


 「どれどれ………」


 力の神はケンたちの様子をざっと見た。


 「んあー、奴ら早まっとるなァ。お前ンとこの秘蔵っ子、完全に首突っ込ンでるじゃあないか」

 

 「面白いだろう?」


 「出たよ………お前さんも趣味が悪い」


 トモの発言に頭を抱える力の神。


 「このままではいずれ向こうの“特異点”とぶつかる事になるだろうな。勝てるのか?」


 「さーね。それは彼ら次第だよ。でも、簡単には負けないよ。だって彼は“面白い”からね」


 「やれやれ………」










———————————————————————————










 「ただいまー」


 ギルドへの報告も終わり、ようやく家に着いた。

 HPはマックスだが、何となく疲れた。


 「お帰りなさい、ケンくん。思ったより早かったですね」


 「ああ、俺もそう思った。もうちょいかかるンじゃないかと予想してたけど外れたな」


 俺はパパッと部屋着に着替えリビングの椅子に座った。


 「リフィ」


 「はい?」


 「全員呼んできてくれ。話がある——————」








 「何だ、改まって。何かやらかしのか?」


 「ししょうなんかしたのか?」


 こいつらは………

 今はそんな場合ではないのでとりあえず突っ込まなかった。


 「今からする話はお前ら2人には結構関係する話だ。ラビは全然わかんねーだろうが」


 俺はリンフィアとニールを正面に据えてこう言った。


 「今日、俺は“ヴェルデウスの娘”と接触した」


 「!」


 一気に空気が張り詰めた様になった。


 「何でそれを………」


 何故それを俺が知っているのか理解できていなかった。

 混乱して頭が回ってないのだ。


 「エヴィリアル帝国で最悪の反逆者ヴェルデウス。王弟や市民を虐殺した大罪人」


 「それは………」


 「しかし、真実は何者かの手によって操られ、濡れ衣を着せられた哀れな騎士」


 「おい、何故お前がそこまで知っているんだ、ケン。本当にヴェルデウスの娘と接触したと言うのか?」


 「ああ。お前らもよく知る人物だ」


 「え?」


 「マイとメイだよ」


 「——————!」


 2人は同時にガタガタっと音を鳴らして椅子から立ち上がった。


 「本当、ですか?」


 「ああ」


 そして、俺は今日有った事の話をみんなに伝えた。

 リンフィアにとってはきつい話だろう。

 でも、これはいずれ知ってしまうこと。

 だったら早いうちに知っておいた方がいい。



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