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第1070話



 眉間に皺を寄せ、躊躇いがちな表情のまま魔力弾を向けるリンフィア。



 ミレアからすれば、あまりにも絶望的な状況だ。


 交わす時間も余裕もない。

 杖では防御も出来ないし、既に放出しているリンフィアの攻撃に合わせて魔法を放つ時間もない。



 ここでようやく、決定打が出る。

 戦いが、一歩先に進む——————かと思われた。






 「………リンフィア。覚えていますか?」


 「?」




 何のことかさっぱりな様子のリンフィア。


 どうやら、()()に気づいていないらしい。


 無理もない話だ。

 ミレアはそれを今までほとんど戦闘で扱っていない。

 だから、効果を忘れても何もおかしくはない。





 「この杖も、貴女のグローブと同じ方に貰った筈ですが?」


 「!!」





 気づいた時にはもう遅い。

 放出済みの魔法弾は、杖に吸われていった。



 少し躊躇って、攻撃のタイミングを間違えたリンフィアの失敗であった。



 リンフィアは歯を喰いしばり、そのまま拳を放った。

 しかし、ミレアはその一歩先にいた。




 「我慢比べといきましょうか」


 「っ………」




 間に合わない。


 そう直感したリンフィアは、魔力を一気に高め、防御体勢に移った。


 杖に取り込まれた魔力が、一気に肥大化する。

 その瞬間、杖は辺りを飲み込むほど強く輝き、2人を巻き込みながら凄まじい爆発を起こした。












——————————————————————————————
















 「なっ………!! あいつら………!?」




 小屋から戦いの様子を伺っていたコウヤは、爆発の様子を見て、飛び出そうとしていた。


 すると、




 「待ちなさい。2人の魔力はまだ消えていません」




 ルージュリアは、腕を掴んでコウヤを止めた。

 コウヤは向きになって振り払おうとするが、凄まじい力で掴まれており、外れる気配がなかった。



 「クソッ………」


 「行ったところで邪魔になるだけです。大人しくしていて下さい」




 驚くほど冷静で、無感情な口調でそういうルージュリア。


 コウヤはそれを見て、わかりやすく青筋を浮かべていた。

 そして、薄情だと言わんばかりに叫び散らそうとする、が。




 「お前………」


 「怒るのはお門違いですよ」





 僅かに怒気を含んだ声でそう呟き、コウヤを一瞥する。

 睨まれた方は思わずたじろぎ、言葉を飲み込んでいた。



 ルージュリアも、2人が無事かどうかに関心がないわけではない。

 しかし、ここを出るわけにはいかなかった。




 「あなたも見たでしょう、あの自爆を。ミレアさんはあのタイミングで自爆する必要はなかった。しかし、条件に従ってちゃんと死にかけるために、あの様なことを事をされたのです。それだけ本気になっているのに、今向かえば試練から意識が散ってしまいまうんですよ? 台無しにしたくはないでしょう?」


 「それは………!………………確かに」




 でも、と。

 コウヤはまたも言葉を飲み込む。



 こればかりは短慮だと反省しつつ、それでも心配は続いていた。

 ただし、2人の無事を、というよりは別の心配であった。



 ルージュリアのいう通り、ミレアは本気だ。

 しかし、あまりにも本気すぎる気がしていたのだ。



 百歩譲ってリンフィアに容赦なく戦えるのはありだとして、あそこまで躊躇なしに自爆を選んだのは、少しばかり異常に感じた。


 まるで、何かに取り憑かれている様な、強迫観念に駆られている様な危うさを、コウヤは感じていた。


 そしてそれは、戦う前から薄々感じていたのだ。




 だから、戦う前にそれをリンフィアに伝えようとしていたが、リンフィアは気がついている様子だった。





 「銀髪ちゃん………お前一体どうする気だ………!?」


















——————————————————————————————






















 「ぅ………ぁ………………っ」




 自ら仕掛けた攻撃だったが、思わず呻き声をあげていた。


 ただ、自分でやっただけにあらかじめ防壁は張れていたので、ある程度の軽減は出来た。


 それでも、動くたびに全身に激痛が走る。


 装備ももうボロボロ。

 杖だけは余程いい杖なのか、ほぼダメージはない様子であった。



 魔力こそ残っているが、満身創痍に近い。

 ただ、目標は達せた。





 「おい………込めた………でしょう………………か」




 この戦い、少なくともミレア自身はダメージを負って死にかけるまで追い込まれる必要があった。


 そのための自爆である。

 しかし、他意がない訳でもない様であった。




 「………証明、出来たでしょうか」




 これは決闘式の戦闘ではあるが、目的はあくまでもミレアは力を得るためのもの。

 競い合いではない。


 だがそれでも、戦う以上ミレアは負けたくは無かった。

 解放されていないが、力自体は受け取って、既に強化されている。


 そんな状態で負けることが、堪らなく怖かった。





 ——————だから、黒煙の中ゆらめく影を見て、言葉を失った。








 「自爆………………ですか」


 「………え?」




 ミレアの目の前に漂う煙から、手が生えてきた。


 そして、それを掻き分けるようにして現れたのは、息一つ切らしていないリンフィアであった。




 「肌を竜に進化させて、ダメージを減らしました。流石は竜の鱗ですね。あの距離でもどうにか無事に済みました」


 「………………」





 なぜ無事だったのか説明するリンフィア。

 しかし、声はミレアの耳をすり抜け、どこかに消えていた。









 ——————殴られた様な衝撃を受けた。


 これまで、クラスや学院では、常にトップに立っていた。

 皆を引っ張る立場として、魔法を学び、訓練をし、誰にも誇れる者であろうとした。



 でも、今は違う。


 仲間内では多分、私が一番弱い。

 それは、ここ妖精界に来ても同じ。


 だから強くなろうとした。

 貰い物でも、力に縋った。

 そして、少しはマシになった………と思っていた。



 その結果がこれだ。

 正直、戦うと聞いて少し喜んでいる自分がいた。

 それはとても醜く愚かな理由で喜んでいたから、表には出せなかった。


 言えるわけがない。

 ここでリンフィアを倒せば、少しは強さを示せるかもしれない、なんて。



 大事な仲間に対してこんな事を思うなんて最低だ。


 でも、止められなかった。

 それほどまでに、私は焦っていたのだ。



 そして、今も——————







 呆然とリンフィアを見上げるミレア。


 抱えきれないコンプレックスに埋もれ、悶えながら、何かに、亀裂が入る音を聞いた。

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